朝活で増える朝外食…喫茶店の「モーニング」の不足栄養素の補い方

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新型コロナ禍での健康生活をきっかけに「朝活」に目覚めた人も多いのではないか。早めに出勤して会社近くのジムで汗を流したり、喫茶店で必要な資料の読み込みや予定をチェックして頭がスッキリした状態で職場に向かう。おかげで作業効率が上がり精神的にも安定した、という人もいるだろう。そんな朝活の強い味方が「朝外食」。空腹は満たせるが、栄養的にはどうなのか? 管理栄養士で愛国学園短期大学の古谷彰子准教授に話を聞いた。

最近は、牛丼、そば、ハンバーガーなどのファストフードチェーンのモーニングサービスメニューも充実している。ホテルによっては朝食ビュッフェを宿泊者だけでなく、一般客にも開放しているケースもある。焼き肉やステーキなど、がっつり系の朝外食も登場している。

しかし、朝外食といえば、真っ先にイメージされるのが喫茶店の「モーニング」。定番はトーストとサラダにコーヒーなどの飲み物がセットになった軽食だ。

「一般的に、朝食は昼食や夕食と比べてボリュームが少なく、タンパク質の摂取が少なくなりがちです。なので、喫茶店のモーニングを朝外食にしている人は、ゆで卵をプラスしたり、できればドリンクを牛乳に変えるのもいいでしょう。同じトーストでも、ハムやチーズがのったものをプラスする手もあります。タンパク質は糖質と組み合わせることで、朝からしっかりと活動するための体内時計のスイッチを押す働きもあります」

同じような働きをするものとして注目したいのが魚に含まれる油(DHA、EPA)。いつも以上に朝にシャキッとしたいという人は、ツナサンドを選ぶか、その日は喫茶店のモーニングではなく、牛丼チェーンやファミレスの朝定食を選ぶのもいいかもしれない。

「朝にタンパク質を意識して食べると、昼食のドカ食いを防げるほか、夕食の血糖値上昇を抑える効果があることも私たちの実験で明らかになりました。とはいえ、タンパク質だけを食べるのではなく、バランスよく食べることが重要であるのは言うまでもありません」 タンパク質以外に朝食で不足しがちな栄養素が食物繊維だ。それを豊富に含んでいる食べ物が野菜で、日本人が常に不足している食べ物のひとつでもある。厚労省が定める1日当たりの野菜の摂取目標量は350グラムが推奨されている。ところが、現在の日本人は1日の野菜の摂取量は280グラムで、それが10年以上続いているといわれている。

当然、喫茶店のモーニングのサラダだけではどうしても野菜が不足してしまう。

「野菜ジュースでプラスしたり、昼食、夕食で補うのもいいですが、野菜は摂取する絶対量不足だけではなく、食べ方にも問題があることに注意しましょう」

野菜はサラダとして生で取ればいいと考えている人も多いが、ただ生で食べるだけではもったいない。野菜の栄養成分は細胞壁内にあるため、生で食べるときはよく噛んだり、細かく刻むなどして細胞壁を破壊し、細胞中の栄養分を出すようにしておかないと、効率良く吸収できない。

「2024年3月に発表された早大の研究では、野菜(キャベツ)を『咀嚼して食べるとき』と『咀嚼せず食べるとき』の食後における代謝に対する影響を調べたところ、噛むことで食後の血糖値を下げるホルモンであるインスリンがしっかり分泌され、インスリンの分泌を促すインクレチンが食後の初期段階で刺激されることがわかりました。インスリンは体内時計をリセットするホルモンのひとつでもあるので、野菜を生で食べるときは時間をかけて、よく噛んで食べることが大切です」

■手作りの味噌汁をストック

野菜にも食べ合わせの良い食材があることも知っておきたい。

「近年注目されているのが、ヨーグルトの製造過程で乳酸菌が産生する、ねばねば物質(EPS)です。昨年の論文によると、ヨーグルトと野菜を一緒に取ることでEPSの働きにより、栄養の吸収率がβカロテンは1.8倍、リコペンは6.5倍アップしたとの報告もあります」

モーニングはトーストとサラダが基本で、プラスしてヨーグルトか、ゆで卵を選べる喫茶店もある。野菜不足を感じているのなら、ヨーグルトを選ぶのも手だろう。

「朝活している人は、多忙で昼間はそばやうどんなどの麺類か、カレーや牛丼といった炭水化物中心の食事で、夕食は商談などで肉中心のがっつりした会食のパターンが多い。自分の健康のための食事ができにくい環境にあります。ならば、いりこ、昆布などで出汁を取った、野菜たっぷりの味噌汁をストックしておいて、毎朝それを飲み、朝外食に臨んではどうでしょう。味噌汁は、魚と野菜の成分が豊富で、飲むだけで必要な栄養素が効率的に吸収できます」

人は必要な栄養素が充足されていれば心も落ち着く。あなたも試してみれば?

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