台湾人観光客9割、肉製品の土産買い控え ポーク缶持ち込みOKなのに勘違い 安心して購入してもらうには

 沖縄の食文化を支える豚肉。台湾からの訪日観光客がお土産品を購入する際、実際には持ち込みが可能な豚肉関連製品もあるのに、約9割の人が「検疫を通過できない」と考えて購入を控えていることが分かった。調査を行ったのは台湾でマーケティング業などを行う「台灣琉球黃豆冰有限公司」(台北市)の平良育士代表。台湾では2018年にアジア各国でアフリカ豚熱が拡大したことで豚肉や関連製品の持ち込み規制が厳格化された経緯があり、警戒された格好だ。持ち込みが可能なポーク缶では約8割の人が「持ち込めない」と考えているなど、現状と認識のずれが大きい。同社は台湾の検疫基準に照らし合わせて持ち込み可能かを評価する「台湾入境適合標準」を立ち上げ、商品パッケージなどに活用してもらおうと動き出している。(ライター・長濱良起)

ポーク缶やレトルトパウチの肉製品は台湾に持ち込むことができる

土産は避ける「豚肉」65.4% 「あらゆる肉類」24.1%

 同調査はことし4月、インターネットによるアンケートで台湾在住の台湾人271人を対象に実施した。そのうち、54.2%の人が「2018年以降に日本を訪れた」と回答。さらに訪日経験者がお土産を選ぶ際に、65.4%が「豚肉を避けている」、24.1%が「あらゆる肉類を警戒して避けている」と回答しており、合計すると89.5%が「豚肉が含まれていると考えられる製品」を買わないようにしていることになる。

台灣琉球黃豆冰有限公司提供

 

お菓子やレトルト食品 持ち込みOK

 実際に台湾への持ち込みが可能であるものの、周知不足によって購買や持ち込みにつながらないケースは多くの品目に見られる。持ち込みができないと考えている人の割合は、品目ごとにポーク缶(81.5%)、レトルトてびち(74.2%)、レトルト中身汁(73.1%)、レトルトポークカレー(70.8%)、コンビーフ(59.4%)、ラードを含むちんすこう(41.3%)、レトルトタコライス(39.9%)となった。

ポーク缶やレトルト食品は台湾に持ち込めるが、検疫で引っかかると勘違いしている人が多い(台灣琉球黃豆冰有限公司提供)

 台湾ではポーク玉子おにぎりが「沖繩飯糰(沖縄おにぎり)」と表記され、多くの専門店がある。台湾人観光客が沖縄でポーク玉子おにぎりを買って食べる光景もよく見られ、ポーク缶は沖縄旅行のお土産品としてもポテンシャルが高いとも考えられる。だが、回答者の8割超が、台湾には持ち込めないと勘違いしている。

台灣琉球黃豆冰有限公司の平良育士代表=4月30日、那覇市内

 ちんすこうはラードが使われていることを知らない人が大半で、お土産品として敬遠される傾向にない。ただ、平良さんは「もしラードが含まれていることを知っていれば、罰則のリスクを避けるために購入を控える可能性がある」と警告する。加えて「ラードが含まれていると知ってもらった上で持ち込み可能なことを周知することが、正しい食品の情報提供のあり方ではないか」と提言する。

 台湾の基準で肉製品の持ち込みが可能なのは、①完全密封されている②加熱殺菌処理が施されている③常温での長期保存が可能④乾燥肉を含まないーの四つ。

 例えば、豚肉の加工品でもハムは常温での長期保存ができないため持ち込みができないが、缶詰やレトルト製品は持ち込みが可能だ。カップ麺については、乾燥肉の有無によって、持ち込みの可否が判断される。

 検疫基準に適合した商品にラベル

 同社が同じく4月に行った日本人対象の調査では、「台湾からの訪日客が帰国時に日本の豚肉食品をお土産として持ち帰ると思うか」の問いに、11.1%が「たくさん持ち帰る」、34.8%が「持ち帰る」と回答しており、台湾人訪日客の実態と乖離(かいり)していることが分かる。

肉製品の持ち込みについて注意喚起する画像(台湾農業部の検疫に関するサイトから)

 そんな中、台湾人訪日客に「台湾に持ち込み可能な豚肉製品」を安心して購入してもらおうと、台灣琉球黃豆冰有限公司は「台湾入境適合標準」を立ち上げる。台湾当局の検疫基準に基づいて、基準を満たした製品にはラベルの使用を認めるというものだ。ことし7月からの実施を目指しており、県内事業者を対象に事前申請の受け付けを開始している。

ラベルデザインの例

 ラベルには「完全密封」「加熱殺菌」「常温長期保存」「乾燥肉を含まない」「検疫通過実績あり」の文字が記載されている。公的な認証ではなく、法的拘束力は持たないものの、専門的知識を持つ第三者のチェックを求める声に応えた形だ。平良さんは「台湾からの観光客が持ち帰りのリスクを容易に判断できることで、沖縄滞在時の不安やストレスを一つつ取り除くことになる。沖縄のブランディング向上に寄与できると思います」と話している。

 台北駐日経済文化代表処那覇分処の王瑞豐処長は「私自身も、肉類を購入する際に迷いがあり、買わないようにしていました。このラベルを導入すれば、台湾の消費者が安心して持ち帰ることができ、双方にとって有益な関係が築けると考えています」と期待するコメントを寄せた。

 台湾入境適合標準についての問い合わせは平良さん(taira@dj-kinako.com)まで。

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