高校生が被爆体験を紙芝居に 活水高平和学習部 8月9日までに完成、動画で海外にも発信 長崎

紙芝居制作に向け、松尾さん(手前)の被爆体験に耳を傾ける生徒たち=長崎市、活水高

 長崎県長崎市宝栄町の活水高平和学習部(18人)が被爆者の松尾幸子さん(90)=長崎市本原町=を主人公にした紙芝居を作ることになった。8月9日の長崎原爆の日までに完成させ、英訳付きの動画も制作。海外の若者らに向けても発信する。手始めに15日、1、2年生9人が同校で松尾さんの被爆体験に耳を傾けた。
 来年の被爆80年に向けた長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)のプロジェクトの一環。生徒たちが台本やイラスト制作、英語ナレーションなどを担い、長崎被災協のユーチューブチャンネルで発信する予定。
 松尾さんは当時11歳。原爆で父や兄らを亡くした。1945年8月9日、父が岩屋山中腹(爆心地から約1.3キロ)に建てた小屋に祖母や母、きょうだいらと避難していたところ被爆。生徒の聞き取りに対し、数日前に空襲を示唆する米軍のビラを見た父が山に行くよう言ってくれたと説明した。
 その夜、カトリック信者だった祖母が、山から燃えさかる浦上教会(浦上天主堂)を見て泣いていたこと、父は高熱や下痢に苦しみ同28日に亡くなったこと、兄2人の骨は見つかっていないことなどを、身ぶり手ぶりで伝えた。
 生徒は台本やイラストの参考にしようと、当時の服装や小屋の外観、戦時中の食事、被爆直後に目にした光景などを次々に質問。熱心にメモを取るなどした。
 イラストをメインに担当する2年の島田朱莉さん(16)は聞き取りを終え「原爆投下前後の対比を丁寧に描きたい。子どもや外国の人にも伝わる紙芝居にしたい」と意気込んだ。松尾さんは「高齢の自分ができないことを高校生がしてくれてうれしい。私たち被爆者を二度と生まないよう、紙芝居が役立ってほしい」と期待した。

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