琴石のこいのぼり 来年も継続へ 断念から一転、集落に後継者…思い受け継ぐ 長崎・五島 

早くも来年の構想に花を咲かせる角さん(左)と近藤さん=五島市富江町琴石

 今年最後としていた長崎県五島市富江町琴石集落の風物詩「琴石のこいのぼり」の掲揚が、継続できることになった。運営を退く老人会長の近藤洋市さん(80)に代わり、同じ集落の角英喜さん(74)が引き継ぐことを決意。「集落に活気を」―。思いのバトンがつながり、過疎の集落に来年もこいのぼりが元気にたなびく。
 長年、掲揚の準備や運営を担ってきた近藤さんは、健康が優れず、今年限りで継続を断念。しかし最後のこいのぼりを見ようと、「これまでにないような人の数」(近藤さん)が訪れた光景を目の当たりにして、複雑な気持ちを抱えていたという。
 掲揚を引き継ぐことになった角さんは長く、集落から10キロほど離れた町の中心部に住んでいたが、今年1月から夫婦で生家に戻っていた。集落が活気づく様子に驚き「琴石からこいのぼりがなくなれば、住民の気持ちが沈んでしまう」と思いを巡らせていた。
 来場者が少し落ち着いたゴールデンウイーク明け、角さん夫妻がこいのぼりを話題に会話をしていると、妻の絢子さん(62)が「父ちゃん、やらんな」。そのひと言で吹っ切れた。「やるかあ」-。現場でこいのぼりの修理をしていた近藤さんに意思を伝えた。
 「英(ひで)の言葉を聞いて、涙がでるほどうれしかった」と近藤さん。「引き継ぎたい」という集落外から善意の申し出もあったが、風雨時はこいのぼりが傷まないよう降ろしたりする煩雑な作業も要る。「住人が継いでくれるのが一番いい」と安心し、来年も側面から支援するという。
 長年、土木作業に従事してきた角さんは、掲揚に必要な作業もお手の物。早速、近藤さんと来年の構想の話に花を咲かせながら、「多くの人に親しまれているこいのぼりを少しでも長く続けて、琴石を元気にする手伝いができれば」と話した。

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