身元特定で緊急照会の体制整備 長崎県警と県歯科医師会 1年目は特定11件、県警が感謝状

平井刑事部長(右)から感謝状を受け取る渋谷会長=長崎市茂里町、県歯科医師会館

 長崎県警と県歯科医師会(渋谷昌史会長、795人)は、孤独死や火災現場で見つかった遺体の身元をいち早く特定するため、県警側から緊急照会する体制を整えた。昨年6月の開始から今月14日までに41件を緊急照会し、11件の診療録(カルテ)から特定につながった。
 県警によると、犯罪性を明らかにしたり、遺族に早く遺体を返したりする場合には早急な身元特定が必要となる。メーリングリストに登録する同会員に、県警が遺体の氏名や住所、生年月日を一斉に知らせる仕組み。生前、歯科受診した際に作成されたカルテの有無を確認する。メーリングリストには同会の診療所の約9割が登録している。
 県警の吉田哲也検視官室長は「これまでは想定される歯科医院1軒1軒に電話をかけ、手作業で調べていた。緊急照会により業務の合理化や効率化にもつながっている」と話す。
 同会は、歯型や治療痕による身元確認で検視業務に長年協力。県警が昨年取り扱った遺体は1752体。腐敗などで身元を判別できない遺体185体のうち46体は歯牙で身元を特定した。例年これぐらいの件数で推移しているという。
 こうした功績をたたえ、県警は14日、同会に刑事部長感謝状を贈呈。平井隆史刑事部長は「善意の協力の下にある制度。各開業医の先生方にも感謝を伝えたい」、渋谷会長は「孤独死の増加といった社会情勢に応じた取り組み。患者のデータは患者のもので県警から依頼があれば提供するのが当然の務め」と話した。

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