「50代の給料」が減っている!“若手中心”賃上げの皺寄せで…減少幅大きい“まさかの業界”

コロナ禍が明け、国内線・国際線ともに需要回復したことが要因か(写真:maroke/PIXTA)

「物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させる」

岸田文雄首相(66)は、4月27日に行われた労働団体「連合」のメーデー中央大会でこう熱く語ったが……。

5月9日に厚生労働省が「毎月勤労統計調査」の3月分を公表。現金給与の総額は1人あたり平均で30万1,193円と前年同月比で0.6%増加した。その一方、物価の変動を反映した実質賃金は、前の年の同じ月に比べて2.5%減少し、24カ月連続でマイナスに。物価の上昇に賃金の伸びが追いついていない状況が続いている。

そんななか50代の賃金に大きな変化が現れているという。

「50代は、老後資金を蓄える最後のチャンスです。これまでは年齢や勤続年数で賃金が上がっていく年功序列の風潮が残っていて給料が大きく減ることはありませんでした。ところがここ数年、50代の給料が大きく減ってきているのです」

と語るのは老後問題解決コンサルタントの横手彰太さん。

「労働政策研究・研修機構調査」によると、20~24歳の月給を100とした場合、1995年には50~54歳は194.4だったが、2022年には166.9に。つまり約30年前には20代と50代では2倍近くの月給の差があったのに、近年では1.6倍に縮まっているのだ。

とはいえ、今年の春闘では定期昇給を含めて5%台の伸び率と歴史的な賃上げとなったが……。

「その賃上げした分が50代の月給に反映するわけではありません。経団連(日本経済団体連合会)が1月に公表した『人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果』では、ベースアップの具体的配分方法として『若年層(30歳程度まで)への重点配分』が30.2%でしたが『ベテラン層(45歳以上)』はわずか1.1%でした。

また初任給の水準を大幅に引き上げた企業も増えています。人手不足が深刻化するなか、会社は優秀な人材を確保するため、賃上げは新卒を含めた若手社員に振り分ける傾向が強くなっています。そのしわ寄せを受けるのが50代の給料なのです」(小泉さん)

そこで厚生労働省が毎年公表している、主要産業に雇用される労働者の賃金の実態を明らかにする「賃金構造基本統計調査」や総務省「地方公務員給与実態調査」、人事院の「国家公務員給与等実態調査」から、3年前と今の50代(男女計)の月給を比較してみた。

ちなみに調査年によりサンプル数(労働者数)が異なるためばらつきや差が大きくなるケースがある。

この3年で約13万円と50代の月給で大きくアップしたのが航空機客室乗務員(キャビンアテンダント)。コロナ禍だった2020年と比べて、国内線、国際線ともに需要回復したことが大きいようだ。

一方で、情報処理・通信技術者などいわゆるIT技術者は50代前半で2万8,800円、50代後半で4万7,400円のダウンに。

「若いIT技術者の間では、より高度な仕事をするためのスキルアップ転職が多くなっています。一方、終身雇用が当たり前だった時代に入社した50代のIT技術者のなかには、新しい技術を求めずに安定した職場だけに満足する人も少なくありません。

企業が求めるのはスピーディな時代に合った新しい技術を持つ若いIT技術者。管理するのみで自ら手を動かすことをしないベテランのIT技術者の給料を下げている企業も少なくありません」(転職コンサルタント)

■副業を始めたり資格を取ることも視野に

さらに大企業を中心に役職定年の導入が広がっているという。

「定年年齢が65歳まで延長されることにより増える人件費の抑制策として生まれた『役職定年』は、部長職や課長職が一定の年齢を超えると、役職から外されるという制度です。会社の新陳代謝のためとはいえ、やる仕事は変わらないのに、給与の削減幅は2~3割程度目減りします」

と語る横手さん。どんな対策を講じるべきなのだろうか。

「給料の減額幅に合わせて毎月の支出を減らすことも重要です。さらに豊富な経験を生かし、奨励されている副業を始めるのも一案。副業でもプロジェクト単位やスポット雇用などもあり、これまでと違う職種を試してみることもできます。さらに定年後も稼げる社会保険労務士や行政書士などの資格に挑戦するのもいいでしょう」

50代の給料減。攻めの姿勢で乗り切ろう!

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