能登半島地震から半年 防災に女性視点を 地域組織の隊長「ほぼ男性」 八王子市

自主防災組織や市で過去行った避難所設営訓練の様子=市提供

能登半島地震からもうすぐ半年。避難生活で女性が直面した不安の解消や犯罪抑止の観点などから、避難所の運営に女性の視点を反映させる取り組みが全国的に広がっている。一方で、八王子で大規模地震などが発生した際、避難所の運営などを行う「自主防災組織」(以下、自主防)の隊長のほとんどが男性であるのが現状だ。

「自分たちのまちは、自分たちで守る」を合言葉に、市が市民に呼びかけ、1982年に市内で初めて結成したのが自主防だ。町会や自治会がそのまま自主防を兼ねたり、下部組織として自主防を結成するケースが多く、市は運営の指針となる「自主防災組織ハンドブック」を発行。大規模地震などの災害時は、市と連携して自主防も避難所運営を行うよう明記されている。

能登半島地震や過去の震災時、生理用品や授乳スペースの確保のしづらさに加え、「仮設トイレ周辺の防犯面が心配」「下着を乾かす場所がない」など、女性のプライバシーに配慮した生活環境の確保を望む声が高まった。女性の視点を避難所運営に生かす必要性が叫ばれるなか、八王子市防災課によると、市内の自主防数は5月8日時点で452団体。書類申請時に隊長の性別は明記しないため実数は不明だが、「ほぼ男性で女性は比較的珍しい」という。

女性隊長が少ない理由について、同課担当者は「町会・自治会長が自主防の隊長を兼ねることが多いが、保守的な風土もあり、そもそも町会・自治会長に男性がなりやすいのでは」と話す。市内の男性町会長の1人は、「(当町会の)役員のうち、女性比率は1割。町会の役割を知ってもらうためにも、もっと女性が増えてほしい」と望む反面、「30〜40代の現役世代の町会離れが激しく、女性を増やすところまで話が進んでいない」と現状を吐露する。

数年前に西寺方町に転入してきた20代女性は、「町会が何をしている団体なのかを知るきっかけがなかった。子が未就学児で、町会活動や防災活動になかなか参加できない」と非入会の理由を説明する。

女性隊長の経験者は

2022年度まで5年間めじろ台一丁目町会長と、同自主防災隊の隊長を務めた上玲子さんは、よりよい避難所運営や女性・子どもを狙った犯罪抑止のためにも「女性視点をもっと運営に反映させるべき」とその重要性を説く。女性参加が進まない課題を浮き彫りにするのに、隊長全体の半数を女性にする「『クオータ制』を導入するのはどうか」と一石を投じる。

一方で同課担当者は「(女性隊長の比率向上はもとより)隊長でなくても女性の意見が反映されやすい環境づくりが大切」と話すなど、それぞれの立場から課題解決の糸口を探る。

また市内には、各町会・自治会から集まった女性たちで組織される「八王子女性防火協会」(中嶋幸子会長)がある。設立から50年以上の歴史があり、地域で防災訓練や応急救護講習会を行うなど活動している。

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