“懲罰二軍落ち”阪神・佐藤輝明に「藤浪化」の危険すぎる兆候…今が飛躍か凋落かの分水嶺

佐藤輝明(C)共同通信社

鳴尾浜で汗まみれになりながら、ノックを受けた。15日、一軍登録を抹消された阪神の佐藤輝明(25)である。

二軍が練習試合を行う昼すぎ、田中二軍内野守備走塁コーチとともに、隣接する鳴尾浜臨海野球場へ。報道陣やファンが見守る中、普段は高校球児らが使用するグラウンドでおよそ50分もの間、ノックで絞られた。

佐藤輝は14日の中日戦でチームの敗戦に直結する失策を犯し、岡田彰布監督(66)から二軍落ちを告げられた。1点リードで迎えた八回無死二塁。田中の犠打は捕手坂本の目の前に転がった。素早い送球で二塁走者の三進を防いだ…と思いきや、佐藤輝が坂本の送球を痛恨の落球。一、三塁とピンチが広がると、マウンドの村上は続くカリステに同点打を許すなどこの回、3失点。チームは逆転負けを喫した。

今季リーグワーストタイの6失策と、精彩を欠く佐藤輝に岡田監督は試合後、「あれで終わりよ。キャッチボールやからな」と呆れ顔。事実上の懲罰降格である。

その翌日に早速、特守を課されたわけだが、岡田監督と同じ1985年日本一戦士の福間納氏は、「首脳陣には見せしめの意図もあったのでしょう」と、こう続ける。

■「岡田監督は我慢した」

「これだけの凡ミスを重ねる以上、二軍落ちは妥当です。むしろ、岡田監督はよく我慢して使い続けたと思います。守りの野球を掲げるだけに、不用意なミスを最も嫌いますから。厳しい言い方になりますが、今季の佐藤輝は例年以上に走攻守において覇気がなく、緩慢なプレーが目立ちます。走塁ではスキを突かれて牽制で刺されるし、肝心の打撃も打率.209、3本塁打、17打点でリーグ最多の47三振。ボール球に手を出す悪癖は相変わらずです。4番の大山も今季は不振が続いていますが、しっかり振り切っての三振だから、まだ納得がいきます。このまま一軍に置いておけば、チームの士気に悪影響を及ぼしかねません」

そんな佐藤輝に危惧されるのが、同じく鳴り物入りで阪神に入団した藤浪晋太郎(30=現メッツ)の二の舞いだ。

何だかんだで佐藤輝は昨季、左打者としてはNPB史上初となる「入団1年目からの3年連続20本塁打以上」をマークした。

一方の藤浪も、高卒1年目から3年連続2ケタ勝利を挙げ、同い年のドジャースの大谷翔平と並び立つ存在と称されながら、4年目の16年以降は極度の制球難に悩まされ、阪神に在籍した22年までの7年間で、わずか22勝にとどまった。

「勘違い」の共通点

藤浪の若手時代を知る元首脳陣はこう言う。

「4年目のオフ、高卒選手は5年間の寮生活を送る決まりがあったにもかかわらず、球団は1年前倒しでの退寮を容認。首脳陣も練習や調整を一任するなど、特別扱いしたことで勘違いしたフシがある。首脳陣の指導には聞く耳を持たなかったし、練習の遅刻は日常茶飯事。20年にはコロナ禍に合コンに参加してウイルスに感染するなど、素行も問題視された。佐藤輝も藤浪と似たようなところがある。プライベートのことはともかく、起用に対してふてくされた態度を取ったり、チームの移動バスの集合時間に遅刻したりと、グラウンド外の行動も問題視されているのは確か。岡田監督が昨季6月に二軍降格を決断したのは、スタメン落ちを告げられた試合前のシートノックに参加しないなど、無反省な態度を危惧したから。そんな指揮官の荒療治も、いまの佐藤輝の様子を見ていると、どこ吹く風だったのでしょう。今回ばかりは心を入れ替えないことには、いよいよ選手として頭打ち、藤浪と同じ道をたどりかねません」

■井川慶は腐らず優勝に貢献

岡田監督はキャンプ中、「今年はこれから先の野球人生の中で大事な一年。カーンっていってしまうか、ずっと本塁打20本くらいで終わってしまうか」と、大きな期待を寄せていた。

「藤浪になるか、井川慶になるかでしょう」

とは、前出の福間氏。

「ファンも佐藤輝に30本塁打、40本塁打を期待するからこそ、ふがいないプレーに対して厳しい目を向ける。藤浪はそうした環境になじめなかったのかもしれませんが、一方で、00年代にエースとして活躍した井川は藤浪とは違った。開幕から精彩を欠いた05年、交流戦で8失点KOされた直後に岡田監督は『あまりに内容が悪すぎる。もう落とす』と、二軍落ちを決断した。それでも井川は腐ることなく二軍で立ち直り、その年、13勝を挙げてリーグ優勝に貢献。翌06年オフにメジャー移籍しました。当時の井川は、ポスティングの容認時期を巡って球団とうまくいっていなかったようですけど、あくまで結果は残した。佐藤輝にも奮起してもらいたいですね」

飛躍を遂げるか、このまましぼんでいくのか。佐藤輝が分水嶺に差しかかっているのは間違いない。

◇ ◇ ◇

今季が2年契約の最終年の岡田監督だが、実は契約延長説が浮上している。関連記事【もっと読む】…では、それらについて詳しく報じている。

© 株式会社日刊現代