晩ご飯はいつ食べる? 良質な睡眠につながる時間と腸内フローラとの関係【医学博士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

腸活というと「何を食べるか?」に目がいきがちですが、「いつ食べるか?」も重要です。そこで本稿では、長年腸内細菌を研究し続けている医学博士の内藤裕二氏による著書『70歳からの腸活』(エクスナレッジ)から一部抜粋して、腸活に効果的な食事や睡眠の実践方法について解説します。

晩ごはんは早めに食べよう

何を食べるかも大事ですが、いつ食べるかも重要です。都市型の生活をしている日本人は、晩ごはんが遅い人が多いのではないかと思います。

日の出とともに起床し、夜は早く寝る生活をしている京丹後の人たちとは真逆の生活ですね。

夜遅く晩ごはんを食べると、酪酸菌が減少して、腸内フローラが悪化することがわかっています。

この原因は腸の体内時計の乱れによるものです。1日の生活のリズム(概日リズム)をつくっている体内時計は脳と腸にあり、両者は同調しています。

夜遅く食べると、腸の体内時計が乱れて、腸管バリア機能の異常や慢性炎症などを引き起こすのです。

アメリカで行われたマウスの実験でもそのことは明らかにされています。肥満マウスをつくるため、動物性脂肪を中心にした高脂肪のエサをマウスに与えます。マウスは夜行性なので、規則正しい時間にエサを与えるため、夜間の活動期のみ制限して与えるのが1つのグループです。

もう1つのグループは、いつでもエサを食べられるようにしておきます。両者の総摂取カロリーは同じです。

すると3カ月後には、活動期のみエサを食べさせたグループのマウスは、いつでも食べられるようにしたマウスよりも体重の増加が大きく抑制されていました。

食事時間を規則正しく制限したマウスは、活動時間と休息時間がしっかりと分かれているため、体内時計の概日リズムが維持されているのだと考えられます。

それに対し、いつでも食べられるマウスは、体内時計が狂ってしまったため、腸内フローラが悪化していると考えられるのです。

こうした研究もあるので、晩ごはんは早めに食べたほうがよいのです。夜遅く食べて、しかも脂っこい食べものが多いと、消化に負担がかかります。とくに寝る直前にそうした食事を摂ると、寝ているときも胃腸が休まりません。そればかりか、睡眠の質も悪化します。

睡眠の質をよくするには?

自分が決めた寝る時間の3時間前に、食事やアルコールを制限しないと睡眠の質が悪くなります。

睡眠の質が悪いと翌日の仕事のパフォーマンスも悪くなります。逆に質のよい睡眠がとれれば、仕事のパフォーマンスは向上します。70歳というと、もう仕事をリタイアした人もいるかと思いますが、1日中ボーッとしているより、活動的に過ごしたほうが快適でしょう。とくにこのくらいの年齢になると、寝付きが悪かったり、朝早く目覚めるなど、睡眠の質が低下しがちなので、よい睡眠をとることが大事です。もちろんこれまで述べてきたように、睡眠の質が悪いと腸内フローラも悪化します。

私は自分の睡眠の質をモニタリングしています。今はスマホや腕時計型のデバイス(情報端末)を用いて、誰でも簡単に自分の睡眠の質を知ることができます。

それでわかったことは、自分が決めた寝る時間の3時間前から睡眠の準備に入るのがよいということ。ですから、晩ごはんはどんなに遅くても、寝る3時間前には終えていなければなりませんし、お酒を飲むのもやめたほうがよいのです。

筑波大学の柳沢正史先生(国際統合睡眠医科学研究機構機構長)は、睡眠に関する研究の世界的なトップランナーですが、この先生方の研究で、睡眠と老化、睡眠と寿命に密接な関係があることがわかってきています。睡眠の質が悪いと老化も進むし、寿命も短くなるわけです。

睡眠の質をよくするには、睡眠時間を十分とったほうがよいのですが、睡眠時間には個人差があります。日本人を含めて東アジアの人たちは、欧米の人に比べて1時間くらい睡眠時間が短くても大丈夫だというデータもあるようです。時間にすると約6時間睡眠ですもちろん、誰にでもあてはまるわけではないので、6時間で足りない人は7時間、あるいは8時間眠る必要があります。

そして体内時計を狂わせないためには、朝は6~7時くらいには起きて、夜はどんなに遅くても12時前には寝たほうがよいでしょう。

あと昼食後などに眠くなる人がいますが、長い昼寝をすると体内時計が狂って、夜寝られなくなってしまいます。眠くてしょうがないとき、ごく短い昼寝が疲労回復に有効だといわれていますが、その時間は15分くらいです。

私は朝6時20分に起きています。そして夜12時以降、仕事をするのをやめました。翌日の仕事のパフォーマンスに悪影響を起こしてまで、夜遅く仕事をするのは意味がありません。その効果は睡眠モニターでも立証されています。

アルコールで寝るのは麻痺しているだけ

お酒を飲むと眠れるという人がいますが、睡眠の質は悪くなります。お酒を飲むと眠くなって寝てしまう人がいますが、あれは寝ているのではなくて、脳神経が麻痺しているような状態です。だからアルコールが抜けると目が覚めたりします。

寝ているときの脈拍をモニターするとわかりますが、ヒトが体を休めて回復するためには、脈拍が下がっていく時間が必要です。

お酒を飲んで寝ると、脈拍が上がったままです。意識を失っているだけで、体は1つも休んでいないのです。

腸年齢計算の質問項目に「アルコールは週4日以上飲む」というのがあります。腸内フローラを悪くするほうの質問項目です。

毎日の飲酒はやはり腸内フローラを悪化させる要因の1つであることは否定できません。

ただお酒はリラックス効果があり、ストレス解消にも役立つので、飲んではいけないとはいいません。京丹後市の高齢者にもお酒を嗜たしなまれる方はいます。

お酒を飲まれるとしても、前述のように、睡眠の質を下げないため、寝る3時間前にはやめるようにしましょう。飲まないと寝られないという人がいますが、寝酒は睡眠の質を悪化させてしまいます。

また毎日飲んでいるという人は、最低でも週1~2日くらいの休肝日をつくったほうがよいでしょう。

内藤 裕二

京都府立医科大学大学院医学研究科

教授/医学博士

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