アングル:中国2社、AI用メモリーの生産開始 外国依存低下の取り組み前進

Fanny Potkin Eduardo Baptista

[シンガポール/北京 15日 ロイター] - 中国の半導体メーカー2社が、人工知能(AI)用チップセットで使用される「広帯域メモリー(HBM)」と呼ばれる次世代メモリーの生産の初期段階にあることが、消息筋への取材や関連資料で明らかになった。いずれも旧型だが、米国の対中輸出規制を背景に外国サプライヤーへの依存度引き下げを目指す中国の取り組みが大きく前進していることを示している。

3人の消息筋によると、記憶用メモリーのDRAMチップを手掛ける中国トップメーカー、長鑫存儲技術(CXMT)は、チップのパッケージングと試験を手がけるトンフー・マイクロエレクトロニクス(通富微電子)と共同でHBMのサンプルチップを開発した。消息筋のうちの2人によると、このサンプルチップは顧客に公開されている。

また武漢新芯集成電路製造(XMC)は12インチのHBMウエハーを月間3000枚生産できる工場を建設中だと、企業データベース企査査(Qichacha)の資料に示されている。

さらに消息筋2人によると、CXMTと他の複数の中国チップ企業はHBMの開発ツールを手に入れるために韓国や日本の半導体装置企業と定期的に協議しているという。

CXMTと通富微電子はコメント要請に応じなかった。XMCの親会社もコメントの要請に応えなかった。この親会社はNAND型フラッシュメモリーを手掛ける長江存儲科技(YMTC)の親会社でもある。YMTCはHBMの量産能力はないと回答した。

CXMTとXMCは民間企業で、技術力向上のため地方政府の資金援助を受けている。

また米国が国家安全保障上の脅威とみなして制裁を科している通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は、他の国内企業と提携して2026年までに第二世代の「HBM2」チップを生産することを目指していると、消息筋の1人とこの件に詳しい別の人物が明らかにした。

ハイテク系ニュースサイトのザ・インフォメーションは4月、ファーウェイ主導でHBMの製造を目指す企業グループには、同じく米国の制裁下にあるメモリー・チップ・メーカー、福建省晋華集成電路(JHICC)が含まれていると報じた。

ファーウェイはコメントを避けた。JHICCはコメント要請に応じなかった。

<厳しい前途>

HBMは2013年に初めて製造されたDRAM規格の一種。チップを垂直に積み重ねてスペースを節約し、消費電力を抑える仕組み。複雑なAIアプリケーションによって生成される大量のデータを処理するのに極めて適しており、AIブームの中で需要が急増している。

HBM市場は韓国のSKハイニックス、サムスン電子、そしてやや遅れて米マイクロン・テクノロジーの3社が握っている。3社とも最新規格の「HBM3」を製造しており、今年中に第5世代モデルの「HMB3E」の出荷を開始すべく開発に取り組んでいる。

別の消息筋によると、中国の取り組みは現在HBM2に集中している。

米国はHBMチップ自体の輸出には規制をかけていない。ただ、HBM3チップは、ファーウェイなど多くの中国企業がアクセスを禁じられている米国の技術を使って製造されている。

ホワイト・オーク・キャピタルの投資ディレクター、ノリ・チウ氏は、中国メーカーはHBMの分野で海外のライバルに10年遅れをとっていると見ている。「中国は現在、旧型メモリーの市場においてさえ競争力が韓国勢に劣っており、前途は多難だ」という。ただ、「そうであっても(CXMTと)通富微電子の協力は、中国がHBM市場においてメモリーと高度なパッケージング技術の両方で能力を向上させる重要な機会になる」と指摘した。

CXMT、通富微電子、ファーウェイが出願した特許によると、HBMの国内開発計画は少なくとも3年前にさかのぼる。米国が輸出規制の標的として、中国半導体産業への注目を強めていたころだ。

アナクアの特許データベース「アクレイムIP」によると、CXMTは米国、中国、台湾で、HBMチップの製造と機能に関連するさまざまな技術的問題について130件近くの特許を出願している。このうち2022年に14件、23年に46件、24年に69件が公開されている。

先月公開された中国での特許の1つは、CXMTがより高性能なHBM製品を作るためにハイブリッドボンディング(微細接合)のような高度なパッケージング技術を検討していることを示している。別の出願からはCXMTがHBM3の製造に必要な技術開発に投資していることも読み取れる。

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