今年は米が作れない…硫黄山の火山活動で水質悪化、川からの取水断念 えびのの農家77戸

岡元堰の約6キロ上流にあるえびの高原を流れる赤子川。硫黄山の堆積物流入により白濁化している=15日、えびの市末永

 宮崎県えびの市の川内川水系最上流部にある赤子川から農業用水を取水している岡元水利組合は、霧島連山・硫黄山(1317メートル)の火山活動の影響で取水口の岡元堰(ぜき)の水質悪化が続いているとして、15日までに今季の取水断念を決めた。これに伴い同農業用水を直接利用する農家77戸、25ヘクタールで稲作ができなくなる見通しだ。

 また同用水の排水をため池に落とし活用する82戸、41ヘクタールへの影響も避けられない。岡元堰より下流の取水口では取水基準を満たしており、稲作に支障はない。

 市や同組合によると、2月以降、水素イオン濃度(pH)が強い酸性を示すなど、取水基準を満たさない状況が続いている。大雨などで硫黄山周辺の堆積物が流入したためとみられる。

 岡元水利組合は13日、田植え時期を前に役員会を開き、今季の取水断念を正式決定。14日に市へ支援を求める要望書を提出した。

 同市では、2018年4月の硫黄山噴火直後から、赤子川と下流の長江川、川内川で水質が悪化し、取水する449ヘクタールで稲作を断念した。下流側から年々改善が進み、21年5月の岡元堰からの取水再開で、稲作断念地域は解消していた。

 同組合の川原澄広組合長(45)は「地区には畜産農家が多く、飼料高の中、飼料用稲も栽培できないとなるとダメージが大きい。今後は水質改善へより踏み込んだ対策を求めたい」と話した。

〈別カット〉岡元堰の約6キロ上流にあるえびの高原を流れる赤子川。硫黄山の堆積物流入により白濁化している=15日、えびの市末永

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