新電車特定区間設定で姫路・滋賀への新快速と関西空港が値下げへ! JR西日本運賃改定(2025年4月1日)

JR西日本は2024年5月15日、プレスリリースにて2024年4月1日に電車特定区間拡大に伴い運賃改定を行うと公表した。今回はこれについて見ていく。

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大阪から遠距離で値下げへ!

今回の2025年4月1日JR西日本運賃改定では、大阪近郊で運賃改定を図ることとなった。

今回の運賃改定に合わせて幹線運賃と比べ割安な電車特定区間を広げることとなった。大阪電車特定区間エリア図の変化は以下の通りで、色のついている線区すべてが新電車特定区間となる。

今回新たに電車特定区間となったのは以下の区間。

  • 琵琶湖線野洲~京都間
  • 湖西線堅田~京都間
  • JR嵯峨野線京都~亀岡間
  • JR奈良線京都~城陽間
  • JR学研都市線長尾~松井山手間
  • JR宝塚線尼崎~新三田間
  • JR神戸線西明石~網干間
  • 関西空港線日根野~関西空港間

この電車特定区間追加選定基準は複線で昼間毎時4本以上の運転を行っている区間(ただし近隣に車庫がある場合は車庫まで)としているようだ。

ただ昼間毎時4本運転でもJR学研都市線松井山手~同志社前間やJR奈良線城陽~奈良間のような区間はあるわけで、これらの区間は単線というJR西日本側の設備都合で新電車特定区間入りを逃したということになる。今回の電車特定区間野の拡大は京都・大阪・神戸から延びる各線のほかに関西空港線も入っていることからJR学研都市線やJR奈良線は全区間d念写特定区間に入れてもよいような気はするが。

大阪から遠距離で値下げへ!

運賃改定内容は以下の通り。なお大阪環状線内と電車特定区間には鉄道駅バリアフリー料金制10円を加算してある。

JR西日本運賃改定比較現行
大阪環状線内現行
電車特定区間現行
幹線2025/4/1改定
電車特定区間電車特定区間からの
値上げ率幹線区間からの
値上げ率1~31401401501507.14%0.00%4~61701701901805.88%-5.26%7~101901902002005.26%0.00%11~152102302402404.35%0.00%16~20―3203303200.00%-3.03%21~25―4104204100.00%-2.38%26~30―4805104902.08%-3.92%31~35―5705905801.75%-1.69%36~40―6606806600.00%-2.94%41~45―7407707501.35%-2.60%46~50―8208608402.44%-2.33%51~60―9509909601.05%-3.03%61~70―1,1101,1701,1200.90%-4.27%71~80―1,2801,3401,3001.56%-2.99%81~90―1,4501,5201,4600.69%-3.95%91~100―1,6201,6901,6401.23%-2.96%101~120―1,8801,9801,8800.00%-5.05%121~140―2,2102,3102,2100.00%-4.33%141~160―2,5402,6402,5400.00%-3.79%161~180―2,8703,0802,8700.00%-6.82%181~200―3,2003,4103,2000.00%-6.16%

単位:円

なお運賃計算の基準賃率(税抜)は10km超300kmまでにおいて大阪環状線および桜島線は13.25円/km、大阪電車特定区間内は15.30円/km、幹線運賃は16.20円/kmであったが、今回の運賃改定より300km以内で新電車特定区間15.50円/kmに合わせる。これにより100km以内において運賃を約1.3%値上げする。本来電車特定区間は国鉄時代は国電区間と呼ばれており東京も大阪も全く同じ運賃表を使用していたが、1987年4月1日の国鉄分割民営化でJR東日本とJR西日本で別れた後1997年4月1日運賃改定で10km以内で運賃表に差が生じるようになり、2014年4月1日運賃改定でJR東日本が1円単位のIC運賃導入で多くの距離帯で違いが出るようになり完全別表となったことから、もう東京と大阪で運賃表を必要がなくなったということなのだろう。ちなみに300km超600kmまでは旧電車特定期間が12.15円/kmだったところ、新運賃では12.30円/kmに引き上げる。

定期券は100kmまでしか運賃表に設定がないので100km超の区間でも運賃合算扱いのため値上げするが、普通運賃は100km超を利用の場合100円単位に端数整理する影響で従来通り15.30円/kmのときと賃率運賃据え置きとなる。このため電車特定区間内でも原則10円~20円しか値上げしていないし、旧幹線エリアから新電車特定区間に移ったエリアでは5.5%程度の値下げが期待できる。なお大阪環状線内10km超は210円から240円に40円も値上げしているが、大阪~天王寺間や京橋・鶴橋~ユニバーサルシティ・桜島間などに限られることから大阪市内に極めて限局的と言えよう。

ただ運賃改定で増収を図るとなると国土交通省宛てに今後3年間の赤字証明を示す必要があり極めて手間なので今回の運賃改定に伴う運賃部分の収入変化はない。では何が目的かというと、届出だけで済むので簡単に増収できる鉄道駅バリアフリー料金制度10円加算エリアを拡大することにより鉄道駅バリアフリー料金の増収を図るためのものである。実際JR西日本では今回の電車特定区間=鉄道駅バリアフリー料金制度エリア拡大により年間約19億円の増収を見込んでいる。このため電車特定区間エリア拡大で幹線エリアでは多くで値下げしているが、それは目的から考えれば棚から牡丹餅と言えよう。

実際運賃を見ていくと、大手私鉄と比べ法外に安く平均利用距離約10km程度に相当する15km以内では新電車特定区間の普通運賃は幹線運賃とほぼ変わらないし、15km超25km以内の区間では電車特定区間運賃のまま据え置きもそもそも幹線運賃と10円しか差額がないためあまり安くなっていない(それでも関s内大手私鉄の初乗りが160円~180円の中JR西日本の初乗りは150円なのはいまだに安いが)。そう考えると旧幹線エリアで日常利用で今回の運賃改定を普通運賃で受けるのは難しく、地域利用はあまり支出が変わらないと言っていいだろう。ただし定期券は短距離でも幹線運賃と比べると大きく安くなっているので持って来いといえよう。

なお割安な特定運賃区間は旧電車特定区間内では運賃据え置き(ただし電車特定区間運賃自体の値上げにより内方区間拡大により京都~神戸間の60km超70km以内と高槻~神戸間の45km超50km以内が新たに割安な特定運賃適用となった)、電車特定区間外の割安な特定運賃(JR宝塚線大阪・北新地~宝塚間およびJR奈良線京都~城陽間の一部)では10円値上げとなった。つまり今回の運賃改定では幹線区間であっても一部の区間で10円値上げを実施している。

姫路へ値下げで新快速がさらに安く!

今回の2025年4月1日JR西日本運賃改定に伴い、JR神戸線では大阪・神戸から明石・西明石へは値上げする一方で、加古川・姫路・網干へは値下げとなる。

大阪~明石・西明石間は950円から960円に値上げするのに対し、大阪~加古川間は1,340円から1,300円に、大阪~姫路間は1,520円から1,460円に、大阪~網干間は1,690円から1,640円にそれぞれ値下げする。

近距離は値上げ、遠距離は値下げという観点では2023年10月1日の京急電鉄運賃改定を彷彿させる

大阪梅田~山陽姫路間に阪神山陽直通特急を運行しており、1,320円と安く済ませることができる。が所要時間約1時間40分と長く、新快速が1時間07分で結ぶことを考えるとあまり乗っていないのが実情である。

一方神戸三宮・高速神戸~山陽姫路間は990円から2025年1月に1,000円ちょうどに値上げする。一方でJR三ノ宮・神戸~姫路間は990円から960円に30円も値下げする。これまでは運賃同額だったが、2025年4月1日以降はJR神戸線の方が40円安いし新快速があるので速いのである。つまり今回の運賃改定は山陽電車からの旅客拾い上げも狙っているのではないだろうか。

なお合わせて山陽新幹線京都・新大阪~姫路間も値下げとなる。

滋賀へ値下げへ!

今回の2025年4月1日JR西日本運賃改定に伴い、大阪府の隣でもない滋賀県に電車特定区間が進出する。

電車特定区間は大都市から隣県の主要都市までをエリアとする。このため大阪府と隣り合っていない滋賀県は電車特定区間に入れていなかったが、鉄道駅バリアフリー料金制度エリア拡大による増収を図るために滋賀県でも一部組み込むこととなった。建前上京阪石山坂本線・京津線と競合するからなのかもしれないが、速いし安いJR琵琶湖線や湖西線にすでに流れているので先述したように棚から牡丹餅で安くなったようなものだろう。

今回の運賃改定で京都~南草津間は330円から320円に、京都~草津・栗東間は420円から410円に、京都~守山・野洲間に至っては510円から490円に値下がりする。まるで2019年10月1日の消費税増税に伴い運賃改定前に戻ったかのようで消費税を還付でもされたんかと思わんばかりだ。

とはいえ滋賀県内の電車特定区間進出はJR琵琶湖線京都~野洲間と湖西線京都~堅田間の京都・大津の近い一部の地域にとどまっている。とはいえほかの滋賀県内各線も運賃は据え置きなのだから、悪いことではないだろう。

関西空港へ値下げへ!

今回の2025年4月1日JR西日本運賃改定に伴い関西空港線も電車特定区間内となることから、関西空港発着利用でも値下げとなる。

空港へのメインアクセスルートで鉄道駅バリアフリー料金制度が導入となるのは初となる(厳密には2024年3月16日から京成電鉄には導入しているが、京成成田空港線には導入していないため成田空港から京成本線利用時に限り10円加算料金を徴収している)。

もっとも難波~関西空港間は南海970円、JR西日本1,080円と南海電車に遠く及ばないし、立地もJRは難波の外れのため利便性が低い。

ただ、大阪(梅田)~関西空港間では大阪環状線新今宮乗換南海利用が1,160円から1,170円に値上げするのに対し、大阪駅から関空快速利用では1,210円から1,180円に30円値下げ、10円しか変わらなくなる。するとこれまでよりも関空快速利用が増えてJR西日本にとって増収となるのではないだろうか。

さらに和歌山~関西空港間は900円から880円に値下げとなる。南海和歌山市~関西空港間が920円かかることを踏まえるとJR西日本がさらに有利になりそうだ。

また京都~関西空港間は1,910円から1,860円に50円値下げ、神戸~関西空港間は1,740円から1,680円に60円も値下げとなる(なお両方とも特定運賃の関係で大阪駅で乗り換える際に一度改札を出て入った方が安い)。もっとも阪急・地下鉄堺筋線天下茶屋乗換南海利用や阪神なんば線快速急行難波乗換南海利用よりかは高いが、阪急や阪神とJRの沿線は必ずしも近いとは限らないのでJR沿線住民からしたら値下げは朗報だろう。

電車特定区間の拡大で青春18きっぷなどの終電特例はどうなる

今回の2025年4月1日JR西日本運賃改定に伴い電車特定区間が広がることになったわけだが、青春18きっぷなど電車特定区間に限り終電まで利用できる券の扱いはどうなるのだろうか。

まあ良識的に考えれば電車特定区間が広がると同時に適用拡大となるだろう。ただJR西日本どこまで4DAYSを新発売してまで青春18きっぷをつぶしたいことを考えると果たしてそうなるのだろうか。

なんだか電車特定区間の拡大に伴い2025年に青春18きっぷが廃止になってもおかしくないような気もするが果たして。

結び

今回の2025年4月1日JR西日本運賃改定では、増収できる鉄道駅バリアフリー料金制度拡大を図るために電車特定区間を拡大、15km以内で運賃を大手私鉄に近づけ競合を適正化するほか旧幹線エリアでは遠距離を中心に5%程度運賃を値下げ、姫路や滋賀県、関西空港発着利用で恩恵を受けることとなった。

今回の運賃改定を踏まえJR西日本でどのようなダイヤ改正を実施していくのか、見守ってゆきたい。

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