余命1週間の女子高生を演じた蒔田彩珠「自分の大切な人に感謝を伝えたくなるような映画」――映画「ハピネス」インタビュー

5月17日から公開される映画「ハピネス」。心臓の病気のため、医者から余命1週間と告げられた高校2年生の山岸由茉(蒔田彩珠)と、戸惑いながらも彼女との幸せな日々を一緒につくりあげることに協力する恋人・国木田雪夫(窪塚愛流)。逃れられない運命に対する絶望や動揺、怒り、悲しみなど、すべての感情を抱え込んだ上で、慎重に生きることよりも、残りの人生を笑顔で、幸せに過ごすことを選んだ2人の純度100%のラブストーリー。

今回は、窪塚さんとダブル主演を務めた蒔田さんにインタビュー! 役作りや撮影エピソードについてお伺いしました。

――まず、撮影を振り返っての感想を教えてください。

「この役を演じなかったら向き合うこともなかった題材で、『自分や大切な人があと1週間で亡くなってしまうとしたら』ということを考えるきっかけになって、今まで以上に自分や周りの人の人生を丁寧に見ることができるようになりました」

――台本を読んで由茉のセリフや行動にどんなことを思われましたか?

「セリフの言葉選びや言い回しが独特で少し難しかったですが、ロリータの衣装に助けられました」

――ロリータ服に身を包んでみて、どんな気分でしたか?

「普段はスカートもあまりはかないので、最初はそわそわしました。でも、撮影が始まると、由茉がロリータ服から勇気をもらえていたように、私も勇気をもらいながら撮影することができました」

――かわいらしいファッションを着ると気持ちもかわいらしくなったりするんでしょうか?

「そうですね。内面も衣装に助けられていました。ハピネスの撮影が終わってから、私服もちょっとかわいらしくなった気がします」

――着心地はいかがでしたか?

「スカートがすごくふんわりしていて、中にスカートを膨らませるための衣装を何枚も重ねているんです。ロリータ服を着ている皆さんがこういった努力をしていることを初めて知りました。いっぱい着込むし、コルセットみたいにぎゅっと締められるので、食後は少しつらくて、慣れていなかったので息がしづらくなる時はありました」

――お気に入りのロリータ服を教えてください!

「一番最初のシーンで着ているピンクのドレスです。『ロリータデビューしたんだ』と雪夫に最初に見せる服でもあるので、すごくお気に入りです」

――今回、余命7日間という難しい役でしたが、どんなことを大事にしながら演じられたのでしょうか。

「撮影に入る前から、愛流くんや監督と『見た人が暗い気持ちになるのではなくて、温かい気持ちになれる作品にしたいね』と話していたんです。完成した作品を見ましたが、実際に温かい作品になっていて良かったです」

――由茉をどう捉えていましたか。

「『あと1週間で死んじゃうの』というセリフから始まるので、少し弱くておとなしい女の子という印象だったのですが、演じるうちに、登場人物の誰よりも強くて、心が優しい女の子だと思うようになりました。両親とのシーンでは由茉の弱い部分が出てしまいそうになるんですけど、ぐっとこらえて、なるべく自分よりも周りの人を優先して明るく接することができる強い女の子にしようと思いながら演じていました」

――「自分の引き出しにはないことばかりで不安だった」とコメントされていましたが、撮影はいかがでしたか。

「まず、ラブストーリーをやるのが初めてだったんです。恋愛要素がある作品はありましたが、こんなにラブストーリーがメインの作品は初めてで、さらに男性の俳優さんとダブル主演も初めてだったので、初めてのことだらけでした。撮影はちょっと恥ずかしかったです。今までは年上の方とご一緒することが多かったので、同世代の方とこんなにラブシーンを演じたことがなくて…。緊張しながら、お互いに試行錯誤して作っていきました。でも、ただの純粋なラブストーリーだけではなかったので、初めて挑戦するにはいい作品でした」

――プライベートでラブストーリーをご覧になることはありますか?

「あります。キュンキュンしています!」

――これまでラブストーリーに挑戦したいという思いはありましたか?

「いつかは…。朝ドラ『おかえりモネ』(NHK総合ほか)の時に、永瀬廉くんと付き合う役で。その時に『こういう感じなんだ…』と思ったのですが、自信がなかったんです。でも、今回お話をいただいて、相手役が愛流くんだと聞いた時にぜひやりたいなと思いました」

――撮影の中でデートでいろいろな場所に行かれたと思いますが、思い出に残っているシーンはありますか。

「カレーを食べるシーンがいっぱいあって。いろんなお店に行ったんですけど、私も愛流くんも食べるのがすごく好きなので、撮影が終わってからも、ちゃんと完食して次の現場に行っていました。どのカレーも本当においしかったです」

――見たこともないような豪華なカレーも食べていましたよね。どんなカレーがお好きですか?

「バターチキンカレーです。ナンと合わせて食べるのが一番です!」

――窪塚さんとの撮影で特に印象深いシーンはありますか?

「2人がまだ付き合う前の美術室でのシーンです。確かクランクインのシーンで、2人が純粋にお互いのことを知ろうとしているのがすごく好きです」

――撮影はどんなふうに進められたんでしょうか。

「どのシーンもしっかり話し合って、みんなが納得するまで何回もやりました。美術室のシーンは、まだお互いキャラクターも定まっていない段階だったので、比較的苦戦はしていなくて、フレッシュなシーンになったと思います。大変だったのは一番最後のシーンで、カメラの位置から雪夫の心情まで、みんなですごくこだわって作りました」

――窪塚さんのどんなところに魅力を感じましたか。

「撮影では何回もテークを重ねるんですが、毎回全力で出し切っている姿が印象的でした。何回もやるとさっきの方が良かったなと考えてしまうこともあるのですが、愛流くんは何回やっても『さっきのテークよりもいいものを出そう』としている姿がすごく格好よかったです」

――蒔田さんから見て、由茉と雪夫の関係性でいいなと思うのはどういうところですか。

「由茉には強さがあって、雪夫には包容力があって、お互いに足りていない部分や欠けている部分を補い合っている2人で、すごくバランスがいいし、雰囲気が合うカップルなんです。だから見ていてつらいばかりでなく、ほほ笑ましい2人を描くことができたのではないかと思います」

――雪夫の包容力は高校生とは思えないですよね。

「初めて『余命があるんだ』と伝えた時は動揺するんですけど、そこから自分なりに向き合って、どうしたらみんなにとって一番いい結果になるのかを考えられるのが雪夫の格好いいところです」

――由茉の母(吉田羊)と父(山崎まさよし)も本当に強くて、2人によってさらにこの物語が泣ける作品になっている印象があります。由茉の両親を見て感じたことはありますか?

「私の親も、由茉のご両親みたいに自分の好きなことを好きなだけやりなさいって言ってくれる親なんです」

――すてきな環境ですね! 吉田さん、山崎さんとの共演はいかがでしたか。

「吉田羊さんは過去に何度もご一緒させていただいていたので、本当に心強くて。現場でお会いした時も、由茉を愛して仕方ない様子が伝わってきてうれしかったです。由茉がずっと明るく強く振る舞っているものが崩れてしまいそうになる、つい弱さを出してしまいそうになるのが毎回お母さんとのシーンだったので、一緒にお芝居ができて良かったです。山崎さんと一緒の撮影は短い間だったのですが、私がいない場所で由茉を思って涙を流すシーンや、由茉には見せない両親2人だけのシーンを完成した作品で見て、本当に感動しました。お二人がご両親だったのはすごくありがたかったです」

――この作品は、ご飯、洋服などありふれた日常の中の幸せを教えてくれる作品ですが、日常で幸せを感じるのはどんな時ですか?

「食べるのが大好きなので、ご飯の時です。特に好きなのは、仕事が終わって、家で好きな映画を見ながら1人で食べるご飯です。疲れている時はお母さんの作ったオムライスかシチューが食べたいです」

――オムライスにはケチャップで何か書きますか?

「たまに自分の似顔絵を描きます」

――かわいい…! ちょっと暗い質問ですが、由茉のように自分に残された時間が1週間しかなくなってしまったら、やりたいことはありますか。

「由茉と一緒で、自分の好きな人、会いたい人全員に好きなだけ会いに行きたいですね。でも、私だったら自分が死んじゃうことは内緒にすると思います」

――逆に、1週間しかないからこそ、思い切って挑戦してみたいことはありますか。

「バイクが好きなので、海外でバイクに乗りたいです。景色が奇麗で、都会的な国が理想です!」

――どんなバイクに乗っているんですか?

「アメリカンです」

――普段も乗られているんですか。

「寒くてちょっとしか乗っていなかったんですけど、最近暖かくなってきたので花粉と戦いながら乗っています」

――最後に、作品を楽しみにしている皆さまへのメッセージをお願いいたします!

「普段、自分や大切な人の命のことを考える機会はなかなかないと思いますが、この作品は、見終わった後に自分の大切な人に感謝を伝えたくなるような映画です。私は、演じている時も完成した作品を見た時も由茉に共感して、由茉の視点で見ていたんですが、大好きな人がいる方が見たら雪夫にも共感できるだろうし、子どもがいる方は由茉の両親に感情移入できると思っていて。見る人によって感じ方が違う作品になっています。いろんな方に見ていただいて、悲しいだけではなく、あったかい気持ちになっていただけたらうれしいです」

――ありがとうございました!

【プロフィール】

蒔田彩珠(まきた あじゅ)
2002年8月7日生まれ。神奈川県出身。ドラマ「ゴーイングマイホーム」(12年/フジテレビ系)に出演した際に、是枝裕和監督から演技を高く評価され、女優の道を志すように。映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(20年)では第45回報知映画賞助演女優賞などを受賞。主な出演作に、映画「万引き家族」「朝が来る」(20年)などがある。21年前期NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」では、ヒロインの妹・未知を演じ、23年に「わたしの一番最悪なともだち」(NHK総合)で主演を務めた。最近では、Netflix「忍びの家 House of Ninjas」にメイン出演している。

【作品情報】

映画「ハピネス」
5月17日(金)全国ロードショー
命が燃え尽きる瞬間まで、愛する人のぬくもりを感じ続けていたい──。
自分らしく生きるということがどれほど尊くて、ハッピーなことなのか。
そんな奇跡のような7日間の物語に、きっと誰もが“ハピネス”に包まれる──。

監督/篠原哲雄 脚本/川﨑いづみ 原作/嶽本野ばら
出演 窪塚愛流 蒔田彩珠 橋本愛 山崎まさよし 吉田羊
配給/バンダイナムコフィルムワークス

取材・文/Kizuka 撮影/蓮尾美智子 ヘアメーク/山口恵理子 スタイリスト/小蔵昌子

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