清原果耶「贅沢で挑戦的な時間だった」台湾ロケ撮影の裏側

清原果耶

女優の清原果耶が、映画『青春18×2 君へと続く道』(公開中)に出演。18年前に日本を旅立ち、ひと夏を台湾で過ごすことになったバックパッカーのアミを演じる。本作は、藤井道人監督初の国際プロジェクトとなる日台合作映画で、台湾の人気スター俳優シュー・グァンハン(許光漢/グレッグ・ハン)演じるジミーと期待の若手実力派女優の清原果耶が演じるアミが紡ぐ切ないラブストーリー。台湾で話題を呼んだ紀行エッセイ「青春18×2 日本慢車流浪記」を、俳優のチャン・チェンがエグゼクティブ・プロデューサーとして映画化。映画『余命10年』のスタッフが約2カ月かけて日本と台湾でオールロケを敢行。18年の時を超えて初恋の記憶をたどる物語となっている。インタビューではアミを演じるにあたり意識していたことや、台湾ロケでの思い出、この作品を通して発見したことについて話を聞いた。

台湾でのお気に入りのご飯はダンビン

――初号試写で本作を観られて、役がまだご自身の中に残っていて涙が止まらなかったと、3月に行われた本作のジャパンプレミアでお話しされていたのが印象的でした。アミという役にとても感情移入されていたんだなと感じたのですが、撮影に入られる前の準備はどんなことをされましたか。

準備はシンプルに脚本と、登場人物のことが書かれたキャラクターシートをしっかり読むことでした。他にできることがなくて不安でしたが、私ができる限りを尽くしました。私は日本のパートから撮影が始まったのですが、台湾での構築も何もない中で、そんなに考えられることもなかったのでどうしようかと思っていたのですが、藤井監督のアドバイスを聞きながら、とにかく頑張ろうという一心でした。台湾パートは現地に行ってから考えた方がいいなと思っていたので、あまり作り込まずに撮影に臨みました。

――そのキャラクターシートには、どのようなことが書かれているのでしょうか。

作品の中でよりアミという役を理解しやすくするための材料といいますか、アミはどういう音楽が好きなのか、なぜこの旅をしているのかなど、丁寧なプロフィールといった感じでした。

――そこからその人物像を膨らませることもありますか。

プロフィールシートから膨らませることはあまりないです。こういう物が好きなんだとか理解を深めるだけで十分かなと思っています。それは、事前に準備して考えていっても、経験上現場に入るとそうではなかったと感じることもあったからなんです。私は台湾パートがメインだったので、アミと同じように初めての旅で、台湾で感じるままに演じたものが、いい方向に繋がっていけばいいなと思っていました。

――日本での撮影から始まりましたが、台湾に行って気分など変わるものはありましたか。

土地の力をすごく感じました。台湾にはお仕事で過去に一度行ったことはあったので、懐かしい気持ちにもなりましたし、それこそアミを演じながら台湾の良さや深み、人の温かさを知れたことがとても良かったです。

――食や文化についてはいかがでしたか?

私はすごく肌に合いました。台湾も台北、台中、台南とあって、どこも気質が違うと台湾の方がおっしゃっていたのですが、私は特に台南の食事が好きで、それに助けられて頑張れたみたいなところもありました。観光地になっているところも多いので、現地の方が私たちに対して距離をとるみたいなことも全くなかったですし、すごく居心地よく過ごさせていただきました。

――お食事がお好きだったとのことですが、具体的なメニューを1つあげるなら何を選びますか。

ダンビンという台湾の朝食がお気に入りです。クレープみたいな薄い生地にたまごを焼いたものがベーシックにあって、そこに豚肉を入れたものがあるのですが、それを私は10 回以上食べました。とてもシンプルなお味なんですけど、撮影がない日もデリバリーして食べるぐらい、ダンビンにハマってしまいました。

――撮影は大変でした?

楽しかったです。夜遅くまで撮影する日もあったのですが、そういう日は夜食が出たので、食を楽しみに撮影を頑張るみたいな気持ちでやってました。

――ジミーとバイクに乗るシーンは夜でしたよね。

はい。ランタン飛ばし(天燈上げ)のシーンも夜だったので、明け方まで撮影をしていました。お腹が空いたねとか話すと、現地のスタッフさんがタピオカを買ってきてくださったりして、とても助けていただきました。

――ちなみに1人旅をするとしたらどこに行きたいですか。

台湾だったら、また台南に行きたいです。他の国だったら日本人が過ごしやすいと聞いたことがあるので、オーストラリアに行ってみたいです。

アミは憧れる生き方をしている女の子

――清原さんは藤井監督の作品に出演されるのは3作目。監督とのやりとりで印象的だったことはありますか。

撮影が始まってから毎日役について、監督といろいろお話をしました。ここはもうちょっとこういう感じかな?

みたいな話はどのシーンでもしていて細かな調整をシーン毎にしていました。毎日役のことについて考えたり、演じたりしていたので、その延長線のお話はたくさんしましたし、その中で台湾の楽しさを話したりもしてました。

――ところで、清原さんから見て、アミはどういう人物だと思いましたか。

アミは「頑張り屋さん」という一言に尽きるんですけど、素直で出会いに敏感でとても憧れる生き方をしている女の子だと私は思いました。強さも儚さも持ち合わせている彼女がより魅力的に映って、その表情や仕草は感性なんだなと思ったので、それを表現するためには、脚本をちゃんと余すことなく読まなければと思いました。

――演じるにあたり難しいなと思ったところはありましたか。

難しいなと思ったところはあまりなくて、感情もすごくスムーズに理解できました。ただそれを表現できるのかというプレッシャーはありましたが、なんとかなると自分に言い聞かせていました。安心感のある藤井組の現場でトライさせていただけたので、すごく贅沢で挑戦的な時間だったなと思います。

――アミは絵を描かれますが、清原さんも油絵が趣味というところで、重なる部分だと思うのですが、どう感じました?

私、藤井さんの作品で何かを描いている役が多いんです。今回で3作目の出演なのですが、1作目の『デイアンドナイト』が水彩画、2作目『宇宙でいちばんあかるい屋根』では水墨画と、藤井監督はよく私に何かを描かせるなという発見がありました(笑)。

――アミのアルバイト先のカラオケ店「神戸KTV」にある壁に絵を描くシーンがとても印象に残っています。

現場には、絵画指導の先生が来てくださっていたので、アミの絵に関しての詳細を先生からお聞きして、撮影に臨みました。絵を描くシーンは何回もスタッフさんが塗り直して、もう1回描くみたいなことを繰り返していたのが印象に残っていて、とても大変なシーンの一つでした。本当に素敵な絵を描いてくださったので、ぜひその全貌を静止画でも見ていただきたいぐらい、こだわりが詰まったシーンになっているので、注目していただけたら嬉しいです。

――アミの部屋にも小物がいっぱい置いてありますが、映像には映ってはいないけど、実はこだわっているみたいなところもありそうですね。

私が知らないところでもたくさんあると思います。ジミーの部屋が私はすごく好きで、10代の少年が雑多に何かを置いている雰囲気がすごくいいなって。また、カラオケ店の名前「神戸KTV」とデザインされた灰皿やコップもあって、私はそれをお土産としていただきました。美術もすごく丁寧に作り込んでいるので、いろいろなところに注目して観てもらえたら、もっと楽しくなる作品だと思います。

いろいろな想像力が重なってできた作品

――台湾のスタッフとお仕事されたのも挑戦になったのでは?

いい意味で変わらなかったです。台湾だからということは全く感じていなくて、みんながこの作品のために朝起きて、夜まで撮影して、「明日も頑張ろうね」と言って帰るといったいい現場でした。個人的に好きだったのが、撮影のスケジュールが出るのですが、その香盤に監督やプロデューサーさんたちがこれでOKという意味でサインをするんです。藤井さんは中国語で「明日も頑張ろう」みたいなことを書かれていて、幸せな現場だなと思いました。

――台湾パートと日本のパートが繋がったものをご覧になっての感想は?

私は台湾パートがメインだったので、台湾に行きたくなるような作品の撮り方だなと思いながら撮影をしていたのですが、実際に台湾と日本のシーンが繋がったものを観て、改めて日本も四季が豊でとても美しい国だと思いました。また、Mr.Childrenさんの主題歌「記憶の旅人」が、作品にすごく寄り添ってくださった歌詞になっていて、なんて美しい優しい作品ができたんだろうと思いました。

――最後にMr.Childrenさんの歌が流れることで、またどっぷりと本作の世界に浸れますよね。

脚本を読んで曲を書いてくださったみたいで、そんな段階で作られたのになぜこんなにも作品にぴったりなんだと本当にびっくりしました。また、エンドロールに歌詞が載っているのもすごくいいなと思いました。そういうのって意外とないと思っていて、答えは人それぞれだけど、しっかり終着点を用意してくれている感じがとても良かったです。いろいろな想像力が重なってできた作品だと思いました。

――清原さんは、『青春18×2 君へと続く道』に出演したことによって、何か新しい目標が生まれたりしましたか。

本当に楽しそうな船に乗らせていただけたと言いますか、すごくいい経験になりましたし、これからもいい出会いがあればいろいろな挑戦をしたいと思わせてくれるような作品になりました。ぜひ、劇場でご覧いただけると嬉しいです! (おわり)

作品情報

『青春18×2 君へと続く道』 劇場公開日 2024年5月3日 キャスト:シュー・グァンハン、清原果耶、ジョセフ・チャン、道枝駿佑、黒木華、松重豊、黒木瞳 主題歌:Mr.Children 「記憶の旅人」(TOY’S FACTORY) 監督:藤井道人

脚本:藤井道人、林田浩川

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