米国の関税引き上げで大量の中国製品が欧州に押し寄せる?―独メディア

15日、独ドイチェ・ヴェレは、米国が中国製電気自動車(EV)などの関税を引き上げることにより、中国製品が欧州に流れ込む可能性について報じた。写真はBYD。

2024年5月15日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、米国が中国製電気自動車(EV)などの関税を引き上げることにより、中国製品が欧州に流れ込む可能性について報じた。

記事は、キール世界経済研究所のモリッツ・シュラリック所長が独紙ハンデルスブラットに対し、米国による関税引き上げの影響により、ある分野では「中国の衝撃波」が間もなく到来し、ある分野ではすでに到来していると語り、ドイツ機械工業連盟(VDMA)のカール・ホイスゲン会長も「将来、エネルギーなどの主要分野で中国メーカーだけが存在し、欧州メーカーが消えるようなことになれば国家安全保障に関わる問題だ」と危機感を示したことを紹介した。

また、経済界だけでなくEUやドイツの政界からも憂慮の声が出ており、欧州議会の通商委員会委員長を務める社会民主党のベルント・ランゲ氏が「中国製EVが欧州にますます入ってくる可能性がある」と述べた上で、米国の保護主義的、対抗的政策を非難し、欧州は自主的な行動を取る必要があるとの認識を示したと紹介。欧州議会議員である緑の党のマイケル・ブロス氏もEVや太陽光電池、半導体といった欧州の気候保護技術が「中国のダンピング製品」による影響を受ける可能性があると指摘したことを伝えている。

記事はさらに、ドイツ国内では「EUは中国製品に対して保護主義的政策を取るべきでない」との意見が多く出ており、ドイツ卸売・貿易業連合会(BGA)のディルク・ヤンドゥラ会長が「もしEUが米国をまねれば、ドイツの自動車工業は深い苦しみを受けることになる。EUには中国の部品を使っていない自動車など1台も存在しない。われわれは競争を受け入れなければならない。そしてまた、公平な競争条件のためにも争わなければならない」と述べたことを紹介。ドイツの自動車工業はこの数十年で中国に多額の投資を行っており、米国に追従した場合に中国から報復措置を受ける可能性があることへの憂慮が背景にあるとした。

また、ドイツのフォルカー・ウィッシング運輸デジタル相もEUに対し「制裁関税による貿易戦の発動は誤った道だ。われわれの市場は閉ざすべきではなく、競争により強くなるべきだ。世界最高峰の製品を作れるドイツ企業は競争を恐れない。今後もそうだ」と米国に追従しないよう警告したと伝えている。(翻訳・編集/川尻)

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