南薩4市の広域ごみ処理施設が運転開始 調整・点検へて9月稼働へ 候補地選定から7年、賛否割れ住民の分断は今も…

稼働を9月に控えるなんさつECOの杜=15日、南さつま市金峰町高橋

 鹿児島県の南さつま、日置、南九州、枕崎の4市で構成する南薩地区衛生管理組合が建設を進める広域のごみ処理施設「なんさつECO(エコ)の杜(もり)」の運転開始式が15日、南さつま市金峰町高橋であった。8月末に完成し9月1日から稼働予定で、焼却炉の乾燥や機器の調整・点検を図るため初点火した。

 焼却施設3カ所(日置、南九州、枕崎)の老朽化に伴い2022年3月から本格着工した。余熱を活用するエネルギー回収型で5階建て延べ床面積約6430平方メートル。炉は2基あり1日計145トン処理できる。敷地は市有地約5ヘクタール。粗大ごみ処理施設(1日16トン)や災害ごみ仮置き場もある。

 公設民営型で総工費約178億円。運営は44年8月末までで、昨年9月設立の「なんさつ環境テクノロジー」が担う。委託費は20年約115億円。約40人の雇用を見込む。名称は昨年11月に公募で決まった。

 式典には、住民2人のほか前田祝成枕崎市長、永山由高日置市長、塗木弘幸南九州市長をはじめ建設、行政関係者ら約40人が出席。

 同組合管理者の本坊輝雄南さつま市長は「周辺環境に調和し配慮した素晴らしい施設が完成した。地元住民の絶大な理解と協力のたまもの。安定した運営を最優先に取り組みたい」と述べた。

 南薩地区衛生管理組合が南さつま市金峰町高橋で建設を進めるごみ処理施設「なんさつECOの杜」を巡っては2017年2月に候補地に選定されて以後、住民の意見が割れ100戸ほどの集落を今も二分する。

 住民有志の会が、ダイオキシン類など健康への影響や農作物への風評被害などを理由に、反対の請願書を組合管理者に提出したのは18年7月。一方、雇用や地域活性化を期待する別の住民らは同年8月、建設を求める陳情書を市議会に提出した。陳情書は同年の9月定例会で採択され10月の同組合協議会を経て建設地に決まった。

 今年3月末には、振興策として約5400万円かけ高橋公民館が移転新築され、防災行政無線も整備更新された。60代女性は「どこかに作らなければならない施設。過疎の進む地域の活性化も期待できる。できてよかったと思われる安全な運転を望みたい」と話す。

 反対派の活動は現在、表立ったものはないが、建設反対の看板は設置されたまま。70代男性は「地元説明会も2回しかなかった。反対の声は今も多く住民間の溝は埋まらない。収集車の往来など交通問題も今後懸念される。注視したい」と語った。

焼却炉のバーナーを着火する4市の首長ら=15日、南さつま市のなんさつECOの杜

© 株式会社南日本新聞社