円安・物価高で「100円均一」崩壊間近…業界は売り上げ好調も、価格維持いよいよ困難に

ワンコインで何でも揃う家計の味方(C)日刊ゲンダイ

なんでも100円で買えた時代は終わりつつある――。

物価高で高まる節約志向を背景に「100円ショップ」業界は順調に売り上げを伸ばしていることが、帝国データバンクが15日発表した調査でわかった。大手4社を中心とした国内100円ショップ市場(事業者売上高ベース)は、2023年度に初の1兆円を突破し(前年度比で約5%増の1兆200億円前後)、店舗数は10年で1.5倍へと成長を遂げているのだ。

ただ、調査によれば、業界はすこぶる好調な一方で、「100円均一」という価格の維持は難しくなっているようだ。100円ショップで扱う商品の多くは海外生産品であるため、急激に進む円安により輸入コストや原材料価格が高騰している。商品によっては採算が取れなくなり、サイズ、量など規格が見直されるケースもある。

日刊ゲンダイが15日、都内の100円ショップを訪れると、特にプラスチック製品の価格改定が気になった。ポケットファイルなどの事務用品や食品容器には、200円や300円の値札がチラホラ。従来は100円で買えた商品だけに、値上げの影響を実感する。

帝国データバンク情報統括部の飯島大介氏は、業界の現状をこう分析する。

「100円ショップが生まれた40年前と比べて、取り巻く環境が変化しています。かつて中国は人件費が安く、安価な商品を現地の工場で大量生産できた。それが今や、中国の人件費は上昇し、日本の賃金上昇率は伸び悩み、立場が変わった。原油価格も上昇し、以前より輸入コストがかかっています。ここまで状況が変わるとは、業界にとっては予想外のはずです」

■「300円ショップ」が拡大中

近年はよりデザイン性や品質に優れた「300円ショップ」の店舗網が拡大し、2023年度末には1000店舗を超えた。ある程度の値上げは、受け入れられつつあるようだが……。

「今まで100円均一という看板でやってきただけに、各社は難しい判断を迫られます。100円にこだわるか、それとも値上げに踏み切るか。少なくとも、100円の価格を維持するのは苦しい状況です」(飯島大介氏)

業界は曲がり角にきている。

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