森永卓郎氏が指摘 昨年は「増税クソメガネ」で今年は「減税ウソメガネ」

森永卓郎氏

岸田総理肝いりの定額減税がいよいよ6月から始まる。サラリーマンには会社から定額減税の申告書がすでに配られているはずだ。当初、納税者は手続き不要と言われたが、扶養親族の分も世帯主の給与から減税するために、減税対象の人数を確定のための申告書提出が必要になった。それだけではない。今回の定額減税の制度は、複雑怪奇な仕組みになっている。

まず、住民税非課税世帯に関しては、そもそも減税対象となる納税額がないために、世帯当たり7万円の給付がなされる。

一方、一般のサラリーマンの場合、所得税は、減税分を6月の納税額から減額するが、引ききれないときは、差額分を繰り越して7月以降も繰り返し差し引いていく。一方、住民税は6月分を徴収せずに、7月分から11か月間にわたって減税分を均等に天引きしていく。なお、減税額を引き切れない場合には、市区町村が差額を給付することになっている。

さらに、自営業者などの確定申告組は、そもそも来年3月の確定申告の際に減税が行われることになる。減税の実施時期も方法もバラバラなのだ。

そして私が一番驚いたのは、ふるさと納税の取り扱いだ。そもそもふるさと納税は、納税者が応援したい自治体に納税額の一部を振り向ける仕組みだ。だから、減税によって納税額が減れば、当然ふるさと納税の限度額は下がるはずだ。ところが、今回の定額減税で限度額に変更はないという。一円も税金を支払っていない納税者が、ふるさと納税をできるというのは、論理的におかしいだろう。

なぜこんなおかしなことが起きているのかと言えば、本来給付金で対応すべき対策に、無理をして「減税」という名を付けようとしたからだ。もちろんその理由は、昨年、岸田総理に「増税クソメガネ」というあだ名がつけられ、それを減税で払拭したいという総理の意向があったからだろう。

ただ、今回の定額減税の中身をみればみるほど、その内容は限りなく給付金に近いものだ。だから、国民に一律4万円という給付にすれば、制度は、すっきりしたものになったというのが、専門家の一致した見方だ。今回、岸田総理がやったことは、給付金に減税という名を付ける偽装だ。つまり、ウソをついていることになる。岸田総理がウソをついてまで増税という名を嫌っているのなら、もうあだ名から「増税」を外してもよいと私は思う。新しいあだ名は「減税ウソメガネ」だ。昨年、増税クソメガネは、流行語大賞のノミネートからも外れたが、今年は是非これを大賞に選んで欲しい。

© 株式会社東京スポーツ新聞社