ウクライナ軍、ハルキウ州の一部から撤退 ロシア軍の越境攻撃続く

ウクライナは、北東部ハルキウ州のロシアとの国境地帯にあるいくつかの村から部隊を撤退させた。ウクライナ軍が15日までに発表した。一帯ではロシア軍が攻撃を続けている。

ウクライナ軍の報道官は、兵士たちが激しい攻撃を受けたとし、「命を守り、損失を避ける」ため、ハルキウ州のルキャンツィ、ヴォヴチャンスクの2地域から「より有利な位置」に部隊を移動したと説明した。

ウクライナはこの2年間の戦争で、撤退を意味する場合にこうした表現を使っている。

ロシア軍の新たな越境侵攻で国境地帯の町や村が激しい攻撃にさらされるなか、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、予定されていた外国訪問をすべてキャンセルした。

ロシアは、新たにハルキウ州の2集落(ルキャンツィ、フリボケ)と、南部ザポリッジャ州のロボティネ村を掌握したと主張している。

これに対しニュースサイト「ウクライナ・プラウダ」は、ロボティネ村にいるウクライナ軍旅団の広報担当の話として、同村の大部分はまだウクライナ軍が保持していると伝えた。

ロボティネ村は、昨夏のウクライナ軍の反転攻勢で同軍が奪還した数少ない集落の一つ。

「依然として厳しい」とウクライナ軍

ウクライナ軍は15日午後1時半に出した声明で、ハルキウ州で軍事衝突が3回あったと説明。ロシア軍が、国境とハルキウ市のほぼ中間にあるリプツィ村に向けて攻撃していると述べた。

また、リプツィ村とマラ・ダニリフカ村が砲撃されたとし、ヴォヴチャンスクではウクライナ軍が敵の攻撃を「撃退」したとした。

ヴォヴチャンスクは軍事的な要衝とはされていないが、占拠されればウクライナ側の士気にとって打撃になるとみられる。

ウクライナ軍の報道官は、「依然として厳しい」状況だとしたが、同軍は「ロシアの占領者が、足がかりを得るのを許していない」と強調した。

ウクライナ軍の参謀本部はその後、ロシア軍からの激しい砲撃を理由に、ウクライナ軍部隊の一部をハルキウ市の南西約120キロメートルに位置するクピャンスクの方面に再配置したと発表。同時に、一帯で敵の攻撃20件を退けたとした。

ウクライナ国防省の情報部門のトップ、キリロ・ブダノフ情報総局長は、部隊の働きによって前線は落ち着いたと述べた。

ウクライナ第2の都市のハルキウにはここ数日、74キロ離れたヴォヴォチャンスクなどから数千人が避難している。

ヴォヴチャンスクの警察トップ、オレクシー・ハルキウスキー氏は、激戦が起きており、ロシア軍が町内で陣地を築いているとソーシャルメディアに投稿。「状況は極めて厳しい。敵はヴォヴチャンスク町の通りに陣地を構えている」とした。

ウクライナ政府は、ロシア軍の10日の越境攻撃を受け、ハルキウ州の広い範囲に増援部隊を送っている。ウクライナ大統領府は15日、「追加部隊を配備中で、予備役も控えている」とした。

ウクライナを訪問中のアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、ウクライナに20億ドルの追加軍事支援をすると発表。「砲弾と装甲車とミサイルと防空システムを届けるために急いでいる」、「私たちは共に困難な時期を乗り越えてきた。協力すればこの難局も乗り切れると確信している」と述べた。

これとは別に、ロシアは15日、同国南西部カザンにある二つの主要空港がウクライナのドローン(無人機)攻撃を受け、一時閉鎖したと発表した。ウクライナはこの攻撃についてコメントしていない。

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は同日、ロシア西部ベルゴロド州の国境地帯における攻撃は、ウクライナとそれを支援する西側諸国の「犯罪性」を示すものだと批判した。

ウクライナは、ロシア国内への攻撃に西側から供与されたミサイルを使わないことで、西側諸国としぶしぶながら合意している。ただ、ロシアが占領しているウクライナの領土での攻撃はこの限りではない。

(英語記事 Ukraine troops pull back in Kharkiv after Russia offensive

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