“5万ドル7I”はいまどこに? マイケル・ブロックが10年ぶりにアイアンを替えた理由

使い込まれたアイアン ※撮影はチャールズ・シュワブチャレンジ(GolfWRX)

ゴルフ界で最も有名で価値のある7番アイアンのうちの1本が、2024年「全米プロゴルフ選手権」で控えに回されようとしている。

2023年「全米プロ」の最終ラウンドで、マイケル・ブロックはゴルフ界を驚かせた。ロリー・マキロイ(北アイルランド)と同組でプレーした最終日に、15番(パー3)でホールインワンを達成した。

151ydのティショットで振った7Iは、鉛テープが貼られた2014年製テーラーメイド「ツアープリファードMC」。その後、このクラブには複数の購入オファーが届き、なかには5万ドルの値がついたもの、博物館での陳列オファーなどがあった。しかしブロックは、その翌週の「チャールズ・シュワブチャレンジ」で、アイアンを売りに出すつもりはないと明かした。

その10年物のアイアンが、ついに“交代”のときを迎えようとしている。

月曜日にブロックは、テーラーメイド“プロト”アイアンのフルセットをバッグに入れていた。フルセットをプロトタイプでそろえるのは珍しい。マキロイは今季「バレロテキサスオープン」でプロトタイプの4Iを投入し、「RBCヘリテージ」では、コリン・モリカワがプロトを使用していたが、ブロックは4Iだけでなくすべてをプロトに乗り換え、これにテーラーメイド「ステルスUDIドライビングアイアン」を組み合わせている。

ブロックはGolfWRX.comとの会話の中で、今回のクラブ変更の裏話を明かした。

謎に包まれたプロトタイプのセット(GolfWRX)

「2カ月ほど前にキングダム(南カリフォルニアにあるテーラーメイドのフィッティング施設)でいくつかプロトアイアンを試打したが、何もロゴの入っていない9Iを“これだ”と思った。それが何なのか見当もつかなかったが、当時、自分がそれまで使っていた古いMCにとても似ていた。特に上から見た感じがかなり似ていて、打ってみて断然気に入ったね。過去11~12年、アイアンを替えようなんて思いもしなかったことの方が、まともじゃない」とブロック。

「このセットを2週間ほど前に受け取って、慣らしているところ。フェースの弾きがよりソリッドで、ショットが前よりしっかり打てるようになった。弾道もはるかに高い。まだ自分には若干アップライト過ぎるので、1度ほどフラットに曲げて調整してもらうところだ」と、ブロックには少し弾道が高く、ドローが強く出るという。「それが出始めると番手を落とし、修正しようとし過ぎてしまうから、少しフラットに調整してもらうことにした。もう一度テストして、その上で木曜に実戦投入できればと思っている」と明かした。

「こっちの方が飛距離も高さも出る。残り204ydで4Iではなく、5Iを握れるのであれば、それに越したことはない。特にメジャーのピンポジションであれば尚更だ。あの高さが出せれば、降下角度がかなり大きな意味を持つことになるから」

ブロックのプロトアイアン(GolfWRX)

10年以上使い続けたクラブから、新しいものに乗り換えるとなれば通常は時間がかかる。しかしブロックは、即座に新しいプロトアイアンに手ごたえを感じた。

「これは(古いやつと)驚くほど良く似ている。上から見下ろすと、トップラインやオフセットなど、目に見えるものは何でも似ている。シャフトも、全く同じプロジェクトXライフル6.5。それ以外の部分だと、打感はこれまでのセットよりも良くなっている。これまでのセットはかなり使い込まれてきたが、溝を新しくしたり、リシャフトしたりすることは、一度としてなかった。新しいグリップに交換することも稀だったね」とブロック。「40歳になっても、高校生の頃から乗っている車を運転しているようなものだった。そろそろ替え時だと思ったんだ」

では、オファーが殺到した古いアイアンはどうなっているのだろう。5万ドルで売りに出したのか、あるいはどこかの博物館、はたまた彼の自宅に陳列されているのだろうか。

「僕のロッカーに入っているよ。今、僕らのいるとこから100ydほどの場所にあるロッカーにね」と、ブロックは笑いながら言った。

(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)

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