社説:防災気象情報 受け手目線で見直しを

 大雨や洪水などによる災害の危険度が的確に伝わり、住民が主体的に身を守る情報発信につなげねばならない。

 警報や注意報といった防災気象情報の見直しを進めている気象庁の有識者検討会が、大雨や河川の氾濫、土砂災害の危険を知らせる情報に、避難の目安を5段階で示す警戒レベルを併記して発信する案をまとめた。

 「レベル4土砂災害警報」のような表現で、警戒レベルと災害の種別、警報の段階の3要素を盛りこむ形式に整理するとしている。

 さらに表記の細部を詰めて来月に決定するという。乱立する情報をただ再編するだけでなく、いかに伝わりやすい呼びかけとするかが問われよう。

 法整備などの手続きで運用開始は2026年以降というが、検討会は議論を始めて2年が経過している。国民の安全向上へ早期導入に努めるべきではないか。

 防災気象情報は、この10年ほどで細分化し、複雑になった。予測技術の向上も背景にあるが、大規模災害の度に加えた仕組みが、情報の受け手の目線を欠いていたのは否めない。

 11年の紀伊半島豪雨の2年後、数十年に1度の大雨などで発する「特別警報」が設けられた。京都、滋賀でも死者が出た18年の西日本豪雨の翌年、取るべき避難行動を示す警戒レベルも加わった。

 具体的にリスクを伝えるはずが、例えば土砂災害はレベル5で「大雨特別警報(土砂災害)」、レベル4で「土砂災害警戒情報」と統一感のない表記になった。

 気象庁が防災気象情報について22年に実施したアンケートでも、55%の人が「種類が多すぎ分かりにくい」と回答している。情報の複雑さが、実際に対象となった住民の低い避難率を招いているとの指摘は多い。

 見直し案では、断続的に大雨が降る線状降水帯が発生した際に出す「顕著な大雨に関する気象情報」について、速報と解説に分けて発信する方針も示した。

 線状降水帯は全国11のブロック別に警戒を呼びかけてきたが、今月28日からは府県単位に絞り込まれる。予測の発表を始めて2年で、昨年の的中率は4割ほどだ。精度の向上とともに分かりやすい発信が求められよう。

 防災気象情報は市町村が避難指示を出す根拠となる。受け手が危険度を正しく捉えて安全確保に動けるよう、自治体は住民への周知や訓練での定着に注力したい。

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