損失が出たら入金、を繰り返していく行為。初心者トレーダーによくみられるものですが、これが非常に危険なトレードスタイルであることをご存じでしょうか? 今回は、事例とともに初心者トレーダーが陥りがちな資金管理能力に関する典型的なミスについて、株式会社ソーシャルインベストメントの清水一喜氏が解説していきます。
トレードに機会損失はつきもの
プロトレーダーからすると、「損失分を入金で補う流れ」は非常に危険なサインである可能性が高いです。
あるFX初心者は、日常のトレードでプラスの損益を出せないまま元手の資金を半分にしてしまいました。元手の半分では証拠金が足りず、最初のトレードと同様の取引ロットを組むことができません。そこで、損失を負った初心者トレーダーは、追加の入金をすることによって、最初と同じ取引量でトレードすることを考えました。
確かに、取引ロットを少なくすると得られる利益は小さくなります。そのため、一度減ってしまった元手分の利益を出すためには、損失を負った時以上に取引ロットを上げるか、一度の利益幅を大きくする必要があります。一見、入金することで解決できそうな問題ですが、トレードを上達させるうえで重要な本質的な解決策には至っていません。
元手を半分にしてしまった原因を追求せずに入金だけで解決すると、根本的な自分のトレードスキルを改善することができません。多くの初心者トレーダーは、自分のトレードを深く追求する前に入金によってあたかも問題を解決させたかのように振る舞ってしまいます。特に、少ない資金を細々とわけて入金しているトレーダーは、自分がトータルでどれだけの損失を負っているのかを理解せず、
損失→入金→損失
の負のループに陥っているのです。
初心者トレーダーが陥る負のループ
細かく入金していると、負のループに陥る可能性が高いという例を解説しました。負のループに陥ってしまう主な原因は、損失に対する心理的なハードルが低くなってしまうからです。プロトレーダーとしてFXを続けていくためには、トータルで見て利益より損失のほうが大きくなってしまっている状態を危険であると認識する必要があります。
ゆえに、損失のほうが大きくなっている理由を必死に探す必要があるでしょう。偶然がもたらす利益トレードは存在しますが、原因が見つからない損失は存在しません。FXの世界で活躍していくためには、自分のトレードのどこに損失を招く原因があるのかを徹底的に探すことが求められます。ひとつずつ自分の課題点を克服し、少しずつ利益につながるトレードを増やしていくのです。
対して、細かくわけた入金によって損失分を埋めようとするトレードは、自分自身の成長のきっかけを奪ってしまう可能性があります。トレーダーは、損失分をトレードで取り戻すためにさまざまな方法でトレードの勉強をします。授業料としては大きすぎる損失を被るトレーダーもいますが、トレーダーにとって成長するきっかけは損切りです。相場と向き合うためのメンタルや分析力は損切りによって成長し、トレードによって利益を出したときに自信に変わります。
細かく入金しながらトレードをしてしまうと、あたかも損失を出していないかのように錯覚してしまいます。損切りに対する心理的なハードルが下がった結果、自分の成長機会を自分自身で奪い、延々と利益が出ない状態に陥ってしまいます。
脱初心者トレーダーを目指すために必要なこと
初心者トレーダーからプロトレーダーになるためには、圧倒的な自己研鑽が必要です。変化の激しいFXの世界でプロトレーダーを目指すためには、トレード初心者が想像する以上の努力が必要です。
そのなかでも「損失に対する考え方」の違いは成長に大きく影響を与えます。損失を成長するためのプロセスだと考え、トレードの根本的な改善を試みる人と、損失をただ運が悪かったという考えで終わらせてしまう人では、その後のトレード成績に大きな差が出るでしょう。特に損失の大きさや頻度と関連性の高い資金管理能力は、トレーダーにとって重要なスキルです。
今回取り上げた入金に関して、「これまでいくら入金してきたか覚えていない」人は、いますぐに資金管理に対する姿勢を改めるべきでしょう。人間は本能的に楽なほうへと進みがちです。しかし、プロトレーダーになるためには、人間の本能に抗う必要があります。本能に抗いながら学習することは苦痛になることがありますが、プロトレーダーとして大成した暁に得られる報酬は日常生活を変えるほどのものになります。
脱初心者を目指すトレーダーは、いまが辛いのは未来のためという意欲を持って、日々の相場分析を行なっていきましょう。
清水 一喜
株式会社ソーシャルインベストメント
執行役員