大学生なので猶予されていた国民年金ですが、卒業したらすぐに払わなくてはならないのでしょうか? 新生活でお金がかかります。

学生納付特例制度とは?

学生納付特例制度とは、簡単に言えば国民年金保険料の納付を猶予してもらえる制度で、対象者は以下のとおりです。

__・学生納付特例を受ける前年度の所得が一定以下である(128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等)
・大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校および各種学校、一部の海外大学の日本分校に在学する学生__
※夜間・定時制課程や通信課程も含む
※各種学校は修業年限が1年以上の課程に在学する場合、私立の場合は都道府県知事の認可を受けた学校に限る
※海外大学の日本分校は、日本国内にある海外大学の日本分校等で文部科学大臣が個別指定した課程

日本に住む人は、原則として20歳から60歳までの間は国民年金保険料の納付義務があります。収入のない学生でも20歳になれば国民年金保険料の納付が必要です。そこで、学生であるうちは国民年金保険料の納付が難しい場合、申請手続きを行うことで支払いを猶予してもらえます。

ただし、学生納付特例制度では、国民年金保険料の納付が猶予されるのであって免除されるわけではありません。

猶予された期間の保険料は10年以内ならさかのぼって追納できる

学生納付特例制度によって猶予された期間の国民年金保険料は、最大で10年間ならさかのぼって追納できます。ただし、国民年金保険料の納付猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年目以降に追納した場合は、加算額が上乗せされるため注意が必要です。

追納しないと満額の場合と比べて受け取れる年金額が低額になる

学生納付特例の承認を受けた期間の国民年金保険料を追納しない場合、満額納付したときと比べて受け取れる年金額が低額になります。ただし、学生納付特例の承認を受けた期間は、年金の受給資格期間に含まれますが、将来の年金額には反映されません。

例えば、国民年金は満額81万6000円(令和6年度)ですが、未納期間が2年間あることで受け取れる年金額は満額のときと比べて、下記の計算から1年間で約4万円減ります。

・81万6000円×(480ヶ月-24ヶ月)÷480ヶ月=77万5200円

追納した保険料は全額が社会保険料控除の対象

追納した国民年金保険料の全額が、社会保険料控除の対象です。追納することで将来の年金額を増やせる以外に、もとの所得の金額によりますが所得税や住民税の負担軽減や還付を期待できます。

例えば、課税される所得金額が400万円で、40万円分の国民年金保険料を追納したとします。この場合に課せられる税率は、所得税が20%、住民税が10%です。国民年金保険料の追納で40万円分が控除されたら、所得税や住民税は約12万円(40万円×30%)軽減できます。

申告先は所轄税務署または勤務先

国民年金に係る社会保険料控除は、所轄税務署または勤務先に申請を行います。確定申告書や年末調整を行う際に提出が必要な「給与所得者の保険料控除申告書」を保険料または掛金の金額を証明できる書類に添付、または申告書提出の際に提示してください。

将来の年金額を減らさないために追納して保険料を納めよう

学生納付特例を受けることで、学生のうちは国民年金保険料の納付を猶予してもらえます。しかし、猶予の期間が終わったら、少しずつでも追納していかないと将来的に受け取れる年金が減額する点に注意が必要です。

また、10年以内に追納ができなかった場合は、追納そのものができなくなります。追納すると決めたら、計画的に国民年金保険料の納付を行って少しでも将来の年金額を増やせるようにしましょう。

出典

日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1130 社会保険料控除

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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