スタッフ全員“ひきこもり”経験者 オンライン仮想空間「メタ・バース」で会話や相談できる新たな取り組み

ひきこもりの人に向けて、札幌市が新たな支援を始めます。オンライン上の仮想空間で会話や相談ができる「メタ・バース」を使った取り組みを行うNPO法人を取材しました。

NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク 田中敦理事長:「入室するとアバターが出てくる。集合場所に来ていただいて」。

ひきこもりの人に対して札幌市が新たに始めるのは「メタバース」を活用した支援です。メタバースとはオンライン上で作られた仮想空間で、自宅のパソコンなどから顔を合わせることなく会話や相談ができます。市からこの事業の委託を受けるのは、ひきこもり支援を行う「NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク」。理事長の田中敦さんがメタバースに着目しました。

田中理事長:「メタバースは、まず顔を出さなくてもいい。それからニックネームでやることもできますし、声を出さなくてもチャットでもコミュニケーションできるというところがありますので、入りやすいんじゃないかなと思います」。

市によりますと、札幌市内でひきこもり状態にあると推計されているのはおよそ2万人。実は、田中さん自身も小学生の時から不登校をきっかけに、12年間自宅にひきこもった経験を持っています。

田中理事長:「やっぱり見知らぬところに行くだとか、自分の知ってる人に会うんじゃないかとか、そういう恐怖心というのはものすごくありましたので」。

親に勧められたフリースクールで同じ境遇の仲間に出会い、外に出られるようになったという田中さん。田中さんは、自身が経験したことを生かしたいと、現在月に4回ひきこもりの当事者とその家族に向けて交流の場を設けています。参加するスタッフは、全員ひきこもり経験を持つ人たちです。

NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク 尾澤基さん:「寄り添う、寄り添うとはあまり考えていなくて、たまたま(境遇が)重なった時に一言二言声をかけて、気が楽になる経験が僕にはあったので」。

NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク 大橋伸和さん:「無理に普通に適用して、過剰に適用しちゃって、余計にひどい状態になるっていうのが、私のこれまでの人生だったんですよ。あなたは、あなたでいいんだっていうことを、一緒に同じ空間で過ごす中で伝えたい」。

決して1人じゃない。オンラインを通じた、新たな居場所を作るための取り組みが始まります。

NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク 田中敦理事長:「自分を変えようとか、変化させようというようなことをするような場所ではなくて、自分が本当に安心して参加して自由に過ごせる場所なんですよっていうのを、伝えていくってことが大事」。

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