追い越し車線に止まった故障車を救助して事故死 ネットで議論、識者は「最善尽くしたと思う」

神奈川県川崎市内の首都高速・湾岸線で3人が死傷した事故で、追い越し車線に止まった故障車を助けようとしたドライバー男性(28)は、トラックに追突されて亡くなる悲惨な状況だった。

ドライバーの死を悼む声が出ると当時に、その救助が正しかったのかについて、ネット上で議論になっている。危険だったとはいえ、追い越し車線に止まらざるを得ない事情もあったのだろうか。

車の上には、非常信号灯とみられるものが置かれる

故障していた白いワゴン車は、ハザートランプを点けたまま横転している。そこからさらに数メートル離れて、亡くなったドライバーの赤いSUV車が見える。同様にハザートランプを点けたまま、後部を大破して止まっていた。

追突した白いトラックも、ワゴン車の近くで斜めに止まっており、事故の凄まじさが分かる光景だった。

各社の報道によると、片側3車線の直線道路で2024年5月14日夕、24歳の男女が乗ったワゴン車のタイヤがパンクして、追い越し車線上に止まった。SUV車のドライバーがその後ろに車を止め、車外に出て、男女と一緒に中央分離帯付近の路上にいたところ、後ろから来たトラックに追突された。

この事故で、男女も足の骨を折るなどの重傷を負い、ドライバーは病院に運ばれたものの、死亡が確認された。トラック運転手の男(28)は、自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで神奈川県警高速隊に現行犯逮捕され、同隊が過失致死傷に切り替えて調べている。

運転手は、「車線の先にある発炎筒が見えたので、左に進もうとしたら、目の前に赤い車があって、とっさにハンドルを右に切ってしまった」などと供述しているという。

この事故について、直前の様子を別の車内から撮った動画が、X上に一時投稿された。

それを見ると、ワゴン車と後ろのSUV車が中央分離帯まで寄せられ、ワゴン車の男女がその付近に立っていた。SUV車のドライバーがスマホで連絡を取りながらトランクを開け、何かを取り出す様子が映っていた。SUV車のルーフには、非常信号灯とみられるものが置かれてあった。

神奈川県警「対処方法についてはケースバイケース」

報道によると、ドライバーは、自動車整備士をしており、緊急時の知識もあるようだった。

とはいえ、2台が高速の追い越し車線に止まっていたため、事故の危険があるのではないかとの指摘がX上で相次いだ。ドライバーの救助についても、別の方法があったのではないかとの声が出た。

一方で、車を路肩に寄せられない状況もあったのではないかとして、ドライバーを擁護する声もX上で上がっていた。

消防救助隊員に技術を教えているという「ジミー」さん(@0816Jimmy)は5月16日、追い越し車線に止まったことについて、「非常に高いリスクがあるので推奨されませんが、止まらざるを得ないケースや、 止まってしまってから多くの車両が通過するため再発進(路肩への移動)できないケースがあります」とJ-CASTニュースの取材に述べた。そのうえで、「助け方が正しかったかどうかは全容が見えないため断言できませんが、発炎筒と非常信号灯を使用していたことから最善を尽くされたと思います」との見方を示した。

その救助に議論が出ている状況に対し、ドライバーの親友だというXユーザーが15日、事故について投稿で思いを明かした。ドライバーは優しい人柄で、助ける方法が違ったかもしれないが、今回の救助は勇気のある行動であり親友を誇りに思っていると強調していた。

神奈川県警の高速隊は同日、ワゴン車がなぜ追い越し車線に止まったかについては、「運転者が重傷を負い入院中であり、事情聴取ができないため不明です」と取材に答えた。また、SUV車についても、「運転者が死亡しているため不明です」とし、ドライバーの救助については、「対処方法についてはケースバイケースのため、本件対処が適切であったかは回答を控えさせていただきます」とコメントした。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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