【早出し】遠隔の診察でも安心 酒田・八幡地域で県内初の「医療MaaS」開始

自宅で遠隔診療を受ける患者(右)。奥に見えるのが医療MaaS事業の専用車両=酒田市

 県・酒田市病院機構(島貫隆夫理事長)は16日、医療機器を搭載した専用車両で酒田市八幡地域の患者宅に出向き、オンライン診療する県内初の「医療MaaS(マース)事業」を開始した。この日は同地域の日本海八幡クリニックと患者宅をビデオ通話などでつなぎ、医師が患者の顔を見ながら遠隔診療した。今後、オンライン診療は月、木の週2回、一日4件を上限に行われる。

 同地域周辺在住で同クリニックに定期通院している慢性疾患の患者向けの事業で、運転免許がなかったり、送迎してくれる家族などがいなかったりする患者が対象となる。同機構は昨年から仮の車両を用いて通信環境を確認したり、必要な医療機器の選別をしたりしてきた。

 専用車両は軽のキャンピングカーを活用し、電子カルテやタブレット端末、体温計、血圧計、体重計などの機器を備えている。患者が横になって診察が受けられるよう、ベッドもある。オンライン診療に当たる同クリニックでは画面越しに医師が患者の顔色を詳しく観察できるよう、より鮮明に映る有機ELタイプのモニターを整備した。車両とモニターの整備費は計約500万円。

 同機構では既に、診療所に常勤医がいない本県唯一の有人離島・飛島(同市)でオンライン診療と医師が島に渡って診察する「週末派遣診療」を併用している。島では診療所に住民が出向くが、今回は同クリニックの看護師が専用車両で患者宅を訪問する「医療が出向く」形を採る。自力通院が困難な患者や、通院に付き添う家族の負担軽減が期待できる。

 この日は同地域の日向地区などで5件の診療を行った。自宅で同クリニックの土井和博診療所長のオンライン診療を受けた女性(88)は「クリニックに出向いて受ける診察と変わらなかった」と安心した表情を見せた。これまで十数年間、通院のため送迎していた同居家族の女性(70)は「これまでは通院に半日かかった。自宅だと本人も疲れずに受けられる」と語った。

 同機構は今後、患者宅に加えて専用車両内でもオンライン診療ができる態勢づくりを目指す。

医療MaaS事業の専用車両に乗り込む日本海八幡クリニックの看護師=酒田市

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