自動化がテーマのリアルタイムストラテジー「Oddsparks: An Automation Adventure」をレビュー!

2024年4月24日よりアーリーアクセス版が配信されているPC(Steam)用ソフト「Oddsparks: An Automation Adventure」のレビューをお届けする。

本作は、“スパーク”と呼ばれる不思議な生物を使ってさまざまな設備を動かし、資源の採取や製品の生産を自動化させていくリアルタイムストラテジーだ。本稿では、本作のアーリーアクセス版を遊んだうえでのレビューをお届けしよう。

■古代の謎を解き明かしながら、スパークたちを使って設備を建設・稼働させていく

主人公が村のベンチで休んでいると、ある日突然、物置きに謎の金属が降ってくる。それに触れた途端、頭の中に知識が次々と流れ込み、古い石板などに書かれた昔の文字が読めるように。村にいるディバイン研究者の助言で、主人公は村や森など、さまざまな場所にある古代の施設を利用しながら、村の人々の依頼をこなしつつ古代の謎を解いていく……というのが、本作のあらすじとなる。

依頼をこなしたり施設を作ったりしながら古代の謎を追うという目的こそあるが、少なくとも本作のアーリーアクセス版には、明確なストーリーはあまりないというのが個人的な印象だ。アイテムや資材の生産・加工、備蓄といった行為そのものが目的といっていい。

村人たちからの依頼も、どこかに向かう、誰かに会うといったものよりも、木を切ったり加工したりするといった特定の施設を作る、樹皮や石英をはじめとする資材を納品するといった目標が大半を占めている。

とはいえ、本作はタイトルに“Automation”という単語があるようにさまざまな作業の“自動化”が重要で、後述の“スパーク”という労働力を使って製造ラインなどを整えるにも、それなりの知識や慣れがいる。そのため、システムを理解するためのクエストが多数用意されているのは、むしろ本作ではありがたく感じた。

資源の採取に加工、備蓄など、本作には目的に応じて多くの施設が出てくるが、どれを稼働するにも欠かせないのがスパークだ。施設で生産された直後は角形の板とも言える無機質な見た目をしているが、スロットに装備すると生き物として動き出し、プレイヤーの近くで待機する。

スパークは指定した場所へ投げつけることもできる。投げられたスパークは近くにあるものに反応し、敵がいれば攻撃し、施設があれば利用し、整備された道があればそれに沿って歩き出す。この3つの動きさえ知っていれば、設備の建設から稼働、物流の維持に周囲の探索までこなせる。スパークの思考はシンプルなので、本作に触れて少しすれば慣れるだろう。

木を切れるばっさいスパーク、一度に運べる資材の量が多いはいたつスパークなど、スパークにもさまざまな種類がある

■面倒くさい作業を自動化する快感

本作の一番の魅力は、いかにプレイヤーが怠けるかにある。プレイヤーが小さな採集ポイントを駆けずり回ってアイテムを集めたり、スパークを引き連れてわざわざ遠くまで出向いたりといったような、時間だけかかるような作業はできるだけそぎ落として自動化させていく。

スパークの一種であるばっさいスパークを使えば、大小関係なく木を切り落とし、丸太を確保できる。とはいえ、ばっさいスパークを引き連れて1本1本の木に投げつけているのでは効率が悪い。

そこで、無限に木を採取できる特別なスポットを利用し、伐採のための設備を作り、さらにスパークたちが丸太を運ぶための道、備蓄のための樽もあつらえる。すると、木の伐採、丸太の運搬・備蓄という一連の流れが自動化され、プレイヤーが放っておいても丸太がどんどん増えていく。

「スパークは必ず道の右側を歩く」という法則があるのだが、これを利用すれば運搬されている資源を複数の施設に、しかも特定の順番で配達させることも可能だ。

まず、駅にあるロータリーのように円形や四角形に道路を敷設し、その外縁に施設を配置していく。あとはどこか一か所に丸太を生み出す設備へとつながる道を作れば、スパークたちは生産された丸太を逆時計回りに運搬していき、通りがかった施設に配達。丸太が満タンの施設は無視してくれるので、必要なところに適宜分配してくれる。

ほかにも、道の上に設置することでスパークの動きを指定できるパネルや、高台から下に向けて荷物を運搬できるジップラインなど、さまざまな機能を持った設備が依頼をこなすとともに順次解放されていく。複雑になるラインを交差点にして整理したり、特定のアイテムを持っているスパークだけが通れるパネルを配置し、運搬されている複数の資材を自動で仕分けしたりと、とにかくできることが多い。

アイデア次第でさまざまな案を実現できるため、ひとつ施設が解禁されると、ほかの施設との相性について考えるようになる。それは既存の設備にそのまま加えられるのか、あるいは大なり小なり構造を変える必要があるのか。今の案がダメなら、今度はこのふたつの相性はどうだろうか。こうした試みは、いわば条件同士を組み合わせるパズルのようなもので、構想が形になったときの達成感はクセになる。

■スパークとともに探索や戦闘をこなすアドベンチャー要素も

自動化が本作の核ではあるが、スパークを連れて未開の地を探索するのもおもしろい。ゲームが始まってすぐは森くらいしか行くところがないものの、遠くまで出向けば高低差の激しい岩石地帯のようなフィールドもある。

徒歩で進めるところならだいたい行けるので、行けるところまで行ってしまいたい衝動に駆られる。場所によって見られる風景や出てくる敵も違うので、マップ上で黒塗りになった場所を探索するだけでも楽しい。

敵はデザインも印象的。クモとウサギを融合させたような見た目のクモウサギをはじめ、虫と動物を組み合わせたような独特の姿が多く、本作のアニメ調のグラフィックと相まって、かわいらしさと不気味さが醸し出されている。

“エーテルの塊”などをはじめとする一部の素材は敵から取れるため、設備やアイテムを拡充しようとすれば、自ずと敵と戦うことになる。とはいえ、プレイヤーは倒したい敵に向かってスパークを投げればいいだけで、あとは彼らが勝手に戦ってくれる。例に挙げたクモウサギなどは一撃で倒せるので、序盤の素材集めはスムーズに進められるだろう。

重要なのは一撃で倒せない敵と戦うときで、スパークたちの動きを統率し、いつ攻めていつ退かせるかの判断が求められる。スパークたちは基本的に一撃でもダメージを受けると死んでしまうため、例えばスパークが集まっているところに広範囲の攻撃を受けた場合、群れはまず全滅する。

攻撃しては離れてをくり返す、要は一撃離脱をくり返していればしぶとい敵にも対処はできるものの、スパークたちは一撃で死ぬという前提があってか、バトルは相手を問わず緊張感がある。

スパークは戦闘要員である前に設備や物流を支える労働力でもあるので、素材さえあれば生み出せるとはいえ、いたずらに彼らを死なせていると少なからず拠点の運営に支障が出てしまう。誰を探索に加えるのか考えるのもプレイヤーの役目なので責任も大きいが、素材を取って無事に拠点へ帰ってこられたときの達成感も同様に大きい。

無限に木や岩を採取できる場所があったり、スパークたちは黙々と働くので体調や要求などを考慮しなくてよかったりと、本作は遊びやすいような計らいが多いので拠点の自動化に集中しやすい。だがゆったりとした雰囲気がある反面、戦闘ではスパークたちを危険に晒すことで緊張感やリスクと隣り合わせになるため、遊んでいてメリハリもしっかりしていると感じた。

本作では、プレイヤーの手足となって働くスパークたちとさまざまな機能や条件が備わった設備を組み合わせれば、交通や物流の整理、資材の生産・加工といった多くの作業を自動化することができる。特定の期限や制約がないおかげで、じっくりとアイデアを練る時間を捻出できる点もうれしい。

一方、スパークたちは基本的に一撃でやられてしまうため、敵との戦闘では常に緊張感がある。プレイヤーのペースで進められる拠点の開発パートと、スリルのある探索・戦闘パートによってプレイにもメリハリが生まれ、遊んでいて飽きが来にくい。

自動化をテーマにしたストラテジー系が好きな人はもちろん、ストラテジーとアクションが得意な人や、ストラテジー自体が初めてな人にもオススメできる一作だ。

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