銃撃された兄、故意にはねられた息子… 犯罪被害者遺族の心情一冊に 5人が手記「同じ方向を向き支えて」

犯罪被害者遺族の手記を掲載している冊子「あおぞら」

 公益社団法人「千葉犯罪被害者支援センター」(千葉市中央区)が、犯罪で家族を失った人たちの手記を紹介する冊子「あおぞら」を発行した。県内の犯罪被害者遺族でつくる自助グループのメンバーが「突然事件に遭遇することは誰にでもあり得る。被害者らと同じ方向を向いて支えてあげてほしい。それが当たり前の世の中になることを願っている」と呼びかけている。

 メッセージを寄せたのは、支援センターが活動をサポートしている犯罪被害者遺族の自助グループ「あおぞら」。グループは2012年に設立されたが、参加者が集まらず休会状態が続いていた。昨年4月から活動を再開し、月1回のペースで集会を開き、遺族同士が苦しい胸の内などを打ち明ける場所になっている。

 活動の一環として、冊子を作成することになり、事件や事故で家族を亡くしたメンバー8人のうち5人が寄稿。今年3月に3千部を発行した。

 弁護士の伊東秀彦さんの兄、拓磨さん=当時(19)=は1994年、留学先の米国で2人組に銃撃され亡くなった。2005年に弁護士になった伊東さんは、自身の経験を生かしながら犯罪被害者支援に取り組んでおり「自分にしかできない活動をして、犯罪被害者の方々が少しでも希望が持てるよう、引き続き尽力していきます」としている。

 沢田美代子さんは支援センターの理事を務めており、自助グループの活動再開の原動力になった一人。香取市で08年、次男の智章さん=当時(24)=が19歳だった少年に故意に車ではねられ殺害された。

 少年には知的障害があり、動機は「父親への恨みを晴らそうと、誰でもいいから人を殺して、父親に迷惑をかけてやる」だった。沢田さんは「何の関わりもないわが子の命、将来が奪われてしまった無念は一生抱えていかなければならない」と明かし、事件を風化させないためにも「犯罪被害者遺族として、一人の母親として、これまでの経験を伝えて、被害者が減っていくことにつながればと願っています」とつづった。

 支援センターの小菅広計事務局長(67)は「冊子を読んでもらい、犯罪被害に遭った人や家族に対して、何ができるのかを考えるきっかけにしてほしい」と話している。

 冊子に関する問い合わせは支援センター(電話)043(225)5451。

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