「1時間後に水没する」ヴェネツィアの老舗レストランでの衝撃的な体験に大きな反響。前向きに営業を続ける姿に「心を打たれた」と投稿者

イタリアで「水の都ヴェネツィア」を旅行中、レストランの会計時に「ビニールのブーツ」を渡されたという日本人観光客の投稿がX(旧Twitter)で話題になっています。

ヴェネツィアの現実と、そこに住む人々のたくましさに感動したというエピソードを紹介します。

ヴェネツィアの風景(PhotoACより)

「水の都」ヴェネツィアを訪れた投稿者さん

イタリア北部、ヴェネト州の州都「ヴェネツィア」は100を超える小さな島々からなる都市。水路が張り巡らされ、島と島の間の移動は水上バスや渡し船で行うなど、“水の都”として有名です。

シェイクスピアの『ヴェニスの商人』をはじめ、日本の創作物では天野こずえさんのマンガ『ARIA 』、尾田栄一郎さんのマンガ『 ONE PIECE 』の「ウォーターセブン編」など、多くの創作物の舞台・モデルとなっており、毎年約3000万人の観光客が世界中から訪れるといいます。

5月7日、ヴェネツィアで「衝撃的なこと」に遭遇したのは、日本から観光に訪れていたginjakeさん(@sirojake )です。

“世界で最も美しい広場”ともいわれる、ヴェネツィアの「サン・マルコ広場」に訪れたginjakeさんは、17世紀創業の歴史あるレストラン「グラン・カフェ・クアドリ (Gran Caffe Quadri)」を訪れました。

ginjakeさんXより / Via Twitter: @sirojake

するとお店に入る前に店員さんから「1時間したら水没するけどいいか」と声をかけられたそうです。

内容に驚いたものの、30分ほどでおいしい料理や美しい内装を楽しんだ投稿者さんは、会計時に「ビニールでできたブーツ」を渡され、さらに驚きました。

お店の出入り口はすでに20センチほど浸水しており、投稿者さんは店員さんの助けを借りてブーツを装着。濡れずに店を出ることができましたが、周辺の別のお店では、裸足で逃げていく人もいたんだそうです。

ginjakeさんXより / Via Twitter: @sirojake
ginjakeさんXより / Via Twitter: @sirojake

実は、水没の危機に悩まされているヴェネツィア

美しい街として知られるヴェネツィアですが、地下水のくみ上げによる地盤沈下や地球温暖化による海面上昇の影響により、水没の危機が叫ばれている 都市でもあります。

この高潮で街が水没する現象は「アクア・アルタ(イタリア語で満潮)」と呼ばれており、イタリア政府などが解決に取り組んでいます

ginjakeさんは、現地でしかわからない災害のすさまじさを目の当たりにし、非常に衝撃的に感じるとともに、そんな状況でも観光客をギリギリまで楽しませようとするヴェネツィアの人々のサービス精神や商魂たくましさに感激したとつづりました。

投稿には、

💬「日本では地震があるあるネタやけど、ヴェネツィアは水没なのか。潮の満干でこうなるんかー」

💬「ヴェネツィア、確か水の都って言われてたような。ほんとに水の都だった。すごい光景だ」

💬「『ARIA』そのままの景色だ。すごい」

💬「100年後にはベネツィアは水没しているかもしれないとツアーコンダクターさんに言われたこと思い出します🥺温暖化で進行しているのかな……こんな美しい建造物が悲しい……」

など、日本では見ることのない景色に多くのコメントが寄せられ、さまざまな反応が寄せられていました。

投稿者さんに話を聞きました

――カフェで長靴が配られたときはどのような心境でしたか?

会計を済ませた後に長靴が配られたのですが、本当に必要なのだろうかと疑問でした。

前日にもサンマルコ広場を訪れていたのですが、浸水はしているものの避けて通れば問題ないレベルでしたので。夜ですし、万が一足を突っ込んでしまった時に使うのかなと。

靴の上から被せるように履く形だったのですが、お店の方が手伝ってくれました。なんてサービスの良いお店なんだろうと思いましたね

――浸水してきた時のまわりの様子はどうでしたか?

店員さん達に特に慌てた様子はなく、長靴が配られるまで浸水については全く気付きませんでした。

自分達の席からは見えなかったこともあり、まさか浸水しているとは思わず、流れている音楽がオシャレだなぁと思いながらパスタを食べていました。

ginjakeさんXより / Via x.com

――レストランを出た後、浸水後のサンマルコ広場ではどのように過ごしましたか?

浸水したサンマルコ広場は明かりが反射してとてもキレイでした。

「せっかくもらったんだから」と浸水の深さを確かめたり、無駄に水を渡ってみたり。自分たち以外にも数十人の観光客が、浸水の外から写真を撮っていましたね。

長靴を持っているのは自分達と、観光客相手に長靴を売りさばいてる方だけでした。うらやましそうな顔をして、自分達を撮っている方もいらっしゃいましたね。

私の家もかつて洪水により床下まで浸水した事があり、さまざまな苦労については十分理解しています。

その状況でも前向きに営業を続け、生き続けようとする人々の姿には心を打たれました。

ginjakeさんXより / Via x.com

――最後に、ヴェネツィアの旅行はいかがでしたか?

とても素晴らしい旅行でした。

水上バスは風がとても気持ち良く、水を掻き分ける音も相まって最高でした。

水路は本当に美しく、どこを撮っても絵になる素敵な空間でした。

ヴェネチアと言えば水路ですが、それだけではありません。

車道が一切ないため道が非常に細かく、迷路のように入り組んでいます。少し歩けば広場や水路が登場し、じゃあ次はあっちに行ってみようと。

両側には多くのレストランがあるのでピザやパスタのおいしそうな香りにも溢れていましたね。もちろん信号も車の音もなく、別の世界に来てしまったような印象を受けました。

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現地の人の温かさやたくましさを大いに感じた旅行となったとginjakeさんは振り返っていました。

取材協力:ginjakeさん(@sirojake )、 グラン・カフェ・クアドリ

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