街裏ぴんく、芸人として苦節20年…R-1を制した唯一無二“虚無漫談”の裏側に迫る【特別インタビュー前編】

街裏ぴんく(C)日刊ゲンダイ

3月に行われた「R-1グランプリ2024」で優勝。唯一無二の“虚構漫談”が、苦節20年にしてようやく日の目を見た。一般には理解されなかった芸で、どのようにしてチャンピオンになったのか、虚構の世界の裏側に迫る。

──まずは、優勝おめでとうございます。日刊ゲンダイにご登場いただくのは初めてですね。

取材してもらうのは初めてなんですけど日刊ゲンダイさん、いや、ゲンさんのことは前から一方的に大好きなんですよ。付き合って下さいよ! ゲンさんって「ゲンダイまるみサワー」っていうオリジナルのぶどう酎ハイ出してはるじゃないですか。毎日飲んでますよ。でも、特定のセスナの機内でしか買えないなんてひどいですよ! あんなにおいしいのに!

──挨拶代わりのハードな虚構、ありがとうございます。“嘘”メディアだと思われてしまったら大変なので、架空はここまででお願いします(笑)。

嘘仲間やったらうれしかったのに(笑)。でも、何かを伝えることってホンマに難しいですよね。昔、ライブのアンケートに「信じていたのに!」と書かれて最低点を付けられたことがあって。純粋に笑ってほしいという気持ちすら伝わらなかったんですよ。

ウケるために理想の芸を封印

──R-1グランプリで過去3年間設けられていた芸歴制限が、今回撤廃。参加資格が奪われていたぴんくさんにとっては、追い風であると同時にプレッシャーでもあったと思います。

もう絶対に優勝しなければと思ってましたね。年下の子らが日々ライブに誘ってくれて。でも、毎回1番に近いウケ方をしないとインディーズライブにはもういづらいんですよ。新しい才能が出続ける環境で“地下の帝王”で居続けるのは大変ですが、それを錦鯉さんはやっていた。あの2人が、「爆笑取り続けるんならここにおってもいいよ」って背中で表してくれて、ほんまに勇気になりました。錦鯉さんを間近で見ていたから、僕ももう今回しかないという気持ちでしたね。

──普段は10~15分、最長では驚異の1時間45分ノンストップで1本のネタをされたことがあります。対してR-1の制限時間は4分。舞台も客層もすべての環境が普段と違いました。

理想の笑いは封印しましたね。「着替えてきたルシファー吉岡です」っていうネタの入り方も、しゃべりの語気の荒らげ方も、初見の人に伝えるために取り入れました。フォームなんか気にせずに、その日にウケていたいんですよ。僕は人と違う芸をしているから、“天才”とか“芸術”とか言われて特別視されることがあるんですが、そこには逃げたくなくて。とにかくウケたいだけで、そのためには何でもします。R-1の勝ち方があるなら、とにかくウケたいという気持ちを忘れないことじゃないですかね。精神論ですが(笑)。 =つづく

(聞き手=橋爪健太/日刊ゲンダイ)

▽まちうら・ぴんく 1985年2月6日生まれ、大阪府出身の39歳。トゥインクル・コーポレーション所属。主な受賞は「Be-1グランプリ2022」優勝。「R-1グランプリ2024」優勝。7月23日に大阪、7月24日に名古屋、8月5日に東京で、澤部渡(スカート)×街裏ぴんく異種混合ツーマンライブ「VALETUDO QUATRO 2024」を開催。チケットは各プレイガイドで好評販売中。

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