[カーオーディオ 逸品探究]18年の歴史に幕、「アークオーディオ」の定番上級アンプ『SE』の魅力を振り返る!

アークオーディオ・2150SE-TRAD

カーオーディオ市場にて特別な光を放つ“逸品”を毎回1つずつ取り上げ、それらならではの魅力を紐解いている当シリーズ。今回は、北米の老舗ブランド「アークオーディオ」の旗艦パワーアンプ『SEシリーズ』にスポットを当て、その実力を解き明かす。

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◆2008年に登場した名機『SEシリーズ』。輸入元に在庫するのはあと数台に…

2006年に初代モデルが発売され、以後長きにわたって「アークオーディオ」の看板を張リ続けてきた名パワーアンプ『SEシリーズ』が、遂にその歴史に幕を下ろそうとしている。この記事を書いている2024年5月14日現在で正規輸入代理店の「ジャンライン&パートナーズ」には、『4100SE-TRAD』と『4100SE-ADVANCED』がそれぞれ1台ずつ残るのみとなっているとのことだ。

販売が終わろうとしているこのタイミングで、当シリーズの名機たるゆえんを振り返る。なお生産は完了されているが、アフターサービスは継続されるとのことなので、愛用者はその点においてはご心配のなきように。

さて、「アークオーディオ」は北米を代表するカーオーディオブランドの1つだ。なお同社は現在、単体DSP、パワーアンプ内蔵DSP、スピーカー、そして外部パワーアンプに至るまでを擁する総合カーオーディオブランドだが、パワーアンプに強みを発揮するメーカーというイメージが色濃い。なぜならば、北米カーオーディオ愛好家の間で絶大な知名度を誇るパワーアンプ設計者、ロバート・ゼフ氏がブランドの設立に関わり、そして同社のパワーアンプの設計・監修を広く手掛けているからだ。

そしてその中の象徴的なラインが、この『SEシリーズ』だ。当ラインの各機には氏の経験とノウハウとがあらゆる部分に注入されて仕上げられている。結果、ハイエンドカーオーディオ愛好から一目置かれる名機として、ロングセラーを継続してきた。

◆最終ラインナップは5機種。1つの2chモデルと4つの4chモデルとが存在

では当ラインがどのようなものだったのかを詳しく見ていこう。まず、最終的なラインナップは以下の5機種にて構成されていた。

○『2150SE-TRAD』(2ch×150W<4Ω>、税抜価格:42万円)
○『4200SE-TRAD』(4ch×110W<4Ω>、税抜価格:54万円)
○『4100SE-TRAD』(4ch×65W<4Ω>、税抜価格:42万円)
○『4100SE-ADVANCED』(4ch×65W<4Ω>、税抜価格:25万円)
○『4100SE』(4ch×65W<4Ω>、税抜価格:25万円)

というように、2chモデルの『2150SE-TRAD』をトップエンド機として擁し、それに続いて4chモデルが4機種用意されていた。なお、シリーズ名の“SE”は、“シグネチャー・エディション”を意味している。つまりは“署名入りのモデル”であり、誰の署名なのかといえばもちろん、巨匠ロバート・ゼフ氏のものだ。氏による渾身の傑作外部パワーアンプ、というわけだ。

ちなみに、機種名に“TRAD”と付けられているモデルは実は、日本専売モデルだ。「ジャンライン&パートナーズ」の求めに応じて、日本国内のハイエンドカーオーディオ愛好家のために作られていたスペシャルモデルだった、というわけだ。

◆日本専売モデルでは動作回路の改良&使用パーツの見直しが実行され、高性能化を実現!

なお、“TRAD”という単語が付けられた3モデルは、心臓部の動作方式から見直されている。つまり別モノと呼ぶべきほどの改良モデルとなっていた。通常モデルでは「ハイスピードクラスAB回路」にて動作するが、“TRAD”と付くモデルでは「ハイブリッドクラスA回路」にて出力が生み出される。

で、当回路はその名称からも分かるように、音質性能的にアドバンテージを発揮するとされている「クラスA回路」に近づけて設計されている。要は、「クラスA回路」の良いところが伸ばされネガティブな部分が可能な限り排除され仕上げられていた。

そしてその上で、使用パーツの見直しも図られていた。変更箇所の数は実に「53」にもおよんでいたとのことだ。結果、性能的にも一層向上されている。これら3モデルでは、高域特性が人間の可聴帯域の3倍以上に広げられていて、400Hz以上の周波数の音の透明度もさらに高められていた。

当シリーズの各機は、最近のサウンドコンテスト会場でも使用されているのをよく見かけた。この歴史的名機の新品はもう手に入らない。もしも所有していたら、ぜひとも末長く愛用を。

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