「デザインも不気味すぎ!」 そのドラマに思わず涙…人気RPGの「元は人間だった」モンスターたち

スーパーファミコン『ファイナルファンタジーVI』(編集部撮影)

RPGに欠かせない敵モンスターたち。かわいらしいものから凶暴なものまで、さまざまな見た目のキャラが登場してきたが、中には「もともとは人間だった」という悲しい物語を背負ったモンスターもいる。

今回は人気シリーズである『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』『ポケットモンスター』から、「元は人間だった」という意外な背景や深い哀愁を持つキャラたちを振り返ってみたい。

■ラスボス「ミルドラース」も…『ドラゴンクエスト』シリーズ

1986年にファミコン用ソフトとして第1作が発売されて以来、現在まで世界中で愛される『ドラゴンクエスト』シリーズ。

短いセリフひとつで勇者たちが暮らす世界への想像を膨らませてくれるのが同シリーズの魅力のひとつだが、敵モンスターにも意外な背景があり、モンスターの「元は人間だった」という事実が語られるセリフがある。

たとえば、『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』のラスボスである「ミルドラース」。主人公の母・マーサを誘拐し、魔界と人間界を繋げる門を開く陰謀を企み、部下たちを人間界に侵入させ、支配しようと画策していた。そんなミルドラースは、リメイク版で「元は人間」という設定が追加。

見はらしの塔の兵隊に話しかけると、「かつて究極の進化をもとめおのれ自身を魔物に変えてしまった者がいたという」「そのあまりの邪悪さゆえ神のいかりをかって魔界に封じられたというが……。」と断片的にミルドラースの過去が語られる。また、魔界の街・ジャハンナにいるアンクルホーンからも同様の話が聞け、「かつて神になりたがった人間がいた……。しかしその者は心の邪悪さゆえ魔物になってしまったのだ」と、“元人間”になった経緯が分かる仕組みだ。

その他にも『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』では、「元人間のモンスター」という設定のモンスターがちらほら。ストーリーで最初に訪れる村・ウッドパルナを支配するナイトリッチ・マチルダは元人間だったが、兄を見捨てた人間に失望し魔物化。物語中盤に訪れるマーディラス国では、国王・ゼッペルが力を欲するあまり魔物化。悲しい展開が多い『ドラクエ7』には、元人間のモンスターという設定がよく見られる。

■「ユンゲラー」「ルージュラ」…『ポケットモンスター』

1996年に任天堂から発売された『ポケットモンスター 赤・緑』。『ポケモン』シリーズの初代にして、今なお続く『ポケモン』の人気を打ち立てた作品だ。

『ポケットモンスター』といえば、そのポップなキャラクターデザインで世界中で愛され続けるゲームだが、そんな同シリーズにも、「元人間」という意外な背景を持つモンスターがいる。

たとえば、ねんりきポケモンの「ユンゲラー」はもともと人間だったとされている。ユンゲラーは、エスパータイプの攻撃を得意とし、その能力で知られている。人間だったという設定は、『ポケモン赤・緑』のポケモン図鑑に記載されている、「あるあさのこと。ちょうのうりょくしょうねんが ベッドから めざめると ユンゲラーに へんしん していた。」という記述から分かる。

また、ゲームボーイアドバンス『ポケットモンスター エメラルド』のポケモン図鑑にも、「ちょうのうりょくの けんきゅうを てつだっていた エスパーしょうねんが あるとき とつぜん ユンゲラーに なったと うわさ されているのだ。」と記述され、ニンテンドー3DS『ポケットモンスター サン』のポケモン図鑑では「エスパーしょうねんが じぶんの なかの サイコパワーを おさえきれなくなり へんしんして しまったとの せつも。」と書かれている。また、後のシリーズでもユンゲラーについてのポケモン図鑑は謎の深まる説明ばかり。背景にあるいろいろなストーリーを想像させる珍しいポケモンだ。

金髪センター分けでタコのような口の人型をした「ルージュラ」も、「元人間なのでは……」という説があるポケモンだ。『ポケモン赤・緑』のポケモン図鑑には「にんげんのような ことばを はなすが まだ なにをいっているか ふめいで げんざい けんきゅうされている。」とある。そのため、ファンの間では元人間あるいは、人間とポケモンとの間に生まれた存在なのではないかという考察が広がっている。

■「カオス」「皇帝」「ベイガン」「エブラーナ王、王妃」…『ファイナルファンタジー』シリーズ

『ファイナルファンタジー』シリーズには、「元人間だったモンスター」が多く登場する。驚くべきことに、1作目の『ファイナルファンタジー』で、すでにその存在が見られる。

同作品のラスボスである「カオス」は、過去の世界から4体のカオスを送り込み、世界を恐怖に陥れた存在。その正体は意外なことに、主人公たち光の4戦士に最初に倒されたボス「ガーランド」だった。ガーランドはかつてコーネリアの騎士だったが、セーラ姫を誘拐し、光の4戦士に討たれた。その後、黒水晶の力で2000年前の世界へとタイムスリップし、魔王として生まれ変わった元人間なのである。

第2作目『ファイナルファンタジーII』の「こうてい」も同じくもともとは人間。「こうてい」は、パラメキア帝国の支配者として登場し、主人公たちの住むフィン王国を襲撃。序盤から悪の支配者として明確に描かれている。冒険の終盤で主人公たちに倒されるも、悪魔に魂を売り地獄の力を得て復活。骸骨のような姿で再びラスボスとして立ちはだかる。

『ファイナルファンタジーIV』にも、元人間のモンスターがいる。主人公・セシルの故郷バロン王国の近衛兵長「ベイガン」も魔物化した人間だ。仲間のパロムとポロムに正体を見破られ、「こんなに すてきなちからをねッ!」と、両手はヘビ、顔はトカゲのような魔物と化してセシルたちに襲い掛かる。

セシルの仲間・エッジの両親である「エブラーナ王」と「王妃」も魔物化してしまう。エッジの故郷であるエブラーナはゴルベーザの配下であるルビカンテによって滅ぼされる。

エブラーナ王と王妃はルビカンテの部下であるルゲイエによって、人間のパーツを残されたモンスターに改造されてしまうが、戦闘中に自我を取り戻し、エッジに希望を託して自害する。このシーンは『FF4』屈指のトラウマシーンとして語り継がれている。

人間だったモンスターという設定は、キャラクターに深い共感や興味を持たせてくれる。そして、その悲しいドラマが、プレイヤーに物語の奥深さを感じさせてくれるのだ。

© 株式会社双葉社