〈高配当株〉長期投資が前提だったとしても「こんなときは迷わず売却する」タイミングとは?【2万人を指導した投資研究家が助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

長期的な視点で高配当株式投資を行う場合、原則として売却はしないのが基本です。しかし、だからといって売却について全く考えずに保有し続けていいのでしょうか。『高配当10倍株投資 「高利回り×高成長」で資産を4倍速で増やす!』(KADOKAWA)の著者である児玉一希氏は、「迷わず売却を考えるべきときもある」といいます。そこで、本記事では高配当株投資初心者に向けて「売り時」の考え方を具体例を用いながら解説します。

短絡的な売却は避けるべきだが、売買基準は明確にすべし

私の株式売却の基準についてお話ししましょう。まず、大前提として、私は長期投資のつもりで買った株をそうそう売却することはありません。

長期で株価上昇とともに資産額を伸ばすには時間が必要であり、短期的な売買では大きな利益を逃します。目先の確定損益を気にするのではなく、長期間にわたって資産額を増やす視点が重要です。

重要なのは売却したいと思わないような銘柄を選ぶことです。長い歴史を紐解けば、株価は長期間上昇してきました。その背景には人口増加・経済成長・インフレがあり、その傾向は現在も続いています。

そのため、一時的な利益確定に走るのではなく、時間をかけて資産を増やしていく意識が必要です。

実際、買い値からプラス50%、プラス100%と株価が上がって利益を確定してしまった場合、株価が再び元の買い値に戻ることは滅多にありません。

保有する全株数を一度に売却し、銘柄コードすら忘れられるという確信度でない限り、含み益がしっかり乗ったお宝ポジションの株を簡単に売却しないことをお勧めします。NISA口座でなければ、利益確定すると税金も発生します。

とはいえ、まったく株を売らないということではありません。明確な売買基準があります。それは、もともと自分が投資した際の前提や理由が大きく変わった場合です。

その時は当初の投資シナリオでは想定していなかった出来事が起こっています。予測不可能なリスクを冒してまでお金を投じ続けることは危険だと考えます。このような事例について具体的に取り上げていきます。

売却を検討するタイミングの具体例

売却はどのような時に検討すべきなのか、3つの具体例を見ていきましょう。

事例① 投資先のビジネス環境が激変

政府の規制で暴落した中国株数年前まで、私は中国株に投資していました。中国の本土や香港の証券取引所を通じて、今でも日本から中国の市場への投資が可能です。

特に中国は米国に次ぐハイテク立国であり、BATH(バイドゥ、アリババ、ファーウェイ、テンセント)などのハイテク4社は米国の巨大プラットフォーム企業GAFAに匹敵する成長を遂げていました。

私が投資していたのはテンセントで、中国で広く利用されている通話アプリの「WeChat」を運営し、その他にもITオンラインエンターテイメント事業など、消費者に根付いた巨大プラットフォーマーです。

しかし、2021年の8月、中国当局が突如としてオンラインゲームなどの規制に乗り出し、ビジネス環境が大きく変わりました。特に驚くべきは、教育サービスへの規制で、学歴競争が激しく、教育費が家計に負担をかけていた中国において、教育産業の営利活動自体を禁止する措置が取られたことです。

こうした政府の規制により、ビジネス環境が激変し、テンセントの株価は大きく急落しました。私はこのニュースを受けて、ビジネス環境が大きく変わったことを理由に全株を売却しました。

その取引では損失を出しましたが、仮に含み益であっても、私は売却の判断を下していたと思います。

事例② 事業の安定性・成長性が損なわれた

新型コロナでの事業環境の激変2020年、新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出制限や移動制約が広がり、対面や移動を前提としたビジネスは環境が激変しました。

これまでならあり得なかった移動需要の消滅に伴って、JRや航空会社などの売上は9割以上も減少し、ビジネス活動が維持できない状況が生じました。

同様に、エネルギー業界でも需要が急減し、原油価格が史上初めてマイナスを記録するなど、異常な事態が発生しました。

現在、多くの産業はV字回復していますので、ある意味最悪の状況に直面した株の買い時と言えるでしょう。

しかし一方で、これ以前に高値で株を保有していた場合、大きな含み損を抱え、いつ元に戻るか不透明な状態になります。

さらに、鉄道や航空会社などは本来需要が安定したインフラ企業であるという前提があるのに、ウイルスの影響でその事業環境がまったく変わってしてしまったため、事業の安定性・成長性を投資理由にしている場合は、売却となります。

事例③ 減配(無配)が発生した

無配当に転落した時高配当を前提として投資しているのに業績の悪化、それにともなう減配(無配)が発生した場合も、株を手放す理由となり得ます。

この記事を読んでくださる方々には、配当金だけでなく、会社の成長性や安全性などを考慮して株を選んでいただきたいと思っています。が、やはり配当金の高さは大事で十分投資理由になります。

これらの前提が変わった場合、いったん売却を検討することも妥当です。

損が出ている銘柄との相殺利益確定もNG

売却の際に注意したいのは、含み損の銘柄と含み益の銘柄を相殺しようとする行為です。

個人投資家にありがちな話なのですが、含み損になっている銘柄を損切り、含み益のある銘柄を一緒に利益確定して、トータルで資金が減るのを回避しようとします。これはお勧めしません。

なぜなら、含み益の銘柄はあなたの予測が当たり、将来にわたり利益をもたらしてくれる銘柄である可能性が高いからです。逆に、含み損の銘柄は予測が外れ、将来の成長性に懸念があります。

会社に例えれば、含み益がある銘柄=利益をもたらす優秀な社員、含み損がある銘柄=利益を生まない社員ということになります。

もし、あなたが経営者であれば、冷静に利益追求を考えた時に、利益を生む社員を残し、利益を出さない社員を解雇するでしょう。これまで払った給料など投資コストが回収できなかったとしてもです。

同様に、株式投資でも、含み益を持つ銘柄を残し、投資した理由が変わってしまった含み損の銘柄を売却することが重要です。

そのため、ポートフォリオは全て含み益の銘柄で揃っているのが望ましいと思います。確定損益にこだわりすぎず、成長が期待される銘柄と一緒に、資産額を伸ばすことにフォーカスする考え方が成功への近道です。

児玉一希

株式会社RES 代表取締役

※本記事は『高配当10倍株投資 「高利回り×高成長」で資産を4倍速で増やす!』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。また、投資による結果に編集部は一切責任を負いません。投資に関する決定は、自らの判断と責任により行っていただきますようお願いいたします。

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