新NISAと同じノリで始めると「やらなきゃよかった」と後悔する可能性も…「iDeCoはやめておいたほうがいい」3つの家計タイプとは【FPが助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

新NISAが始まり、いよいよ「貯蓄から投資へ」が本格化してきた今、iDeCo(個人型確定拠出年金)についても関心が高まっています。「新NISAは簡単に始めれられたから、次はiDeCoも」と考えている人もいるのではないでしょうか。しかしiDeCoは制度の特性を理解したうえで始めないと、「こんなはずじゃなかった…」となる家計も少なくありません。今回はiDeCoをやらない方がいい家計タイプとその理由について、FPの金子舞氏がお伝えします。

新NISAを始めたら次はiDeCo?

今年始まった「新NISA」は、旧NISAに比べ投資できる金額が大幅に増え、非課税期間も無期限となりました。そのため新NISAを主軸とした資産形成をしている方も多いのではないでしょうか。新NISAが使いやすくなった今、同じく非課税メリットがある「iDeCo」にも注目が集まっています。

iDeCoは、公的年金とは別に自分で老後資金を準備できる制度で、①拠出時(掛金が全額所得控除)②運用時(運用益も非課税)③受取時(一定額まで税制優遇)と、各種メリットがあります。

しかし、①原則60歳まで引き出せない(死亡や高度障害など例外あり)②各種手数料がかかる(加入時、運用時、給付時、還付時、移管時など)③加入に手間と時間がかかるといったデメリットもあるため、すべての人がやったほうがいい制度、というわけではありません。

そこで今回は、iDeCoをやらない方がいい家計タイプを3つに分類して解説していきます。

iDeCoをやらない方がいい家計3タイプとその理由

1. 現役時代にお金が足りない家計(教育費・住宅費など)

最も注意が必要なのは、「老後は退職金などで比較的余裕があるが、直近10~15年でお金が足りなくなる家計」です。理由は、教育費や住宅費などが挙げられます。

まず教育費に関しては、「聖域」と言われるように、わが子のためなら……といくらでもお金をかけてしまう事が多い支出です。子供の私立進学などで想定以上の支出となったり、兄弟がいる場合、下の子も私立に……と当初予定していた進路を変更したりと、急遽貯蓄から切り崩す家庭も多いです。

少子化が進む一方で共働き夫婦が増えたことにより、早期教育に力を入れる家庭が年々増加していることも背景として挙げられます。文部科学省のデータによると、公立私立ともに教育費は年々増加しており、今後教育費は多めに準備しておく必要があります。

また住宅費に関しても、理想の住まいを追求して予算以上の物件を購入してしまうことが多い支出です。購入時に借りられる上限額で住宅ローンを組んだのちに、想定外の収入減少や支出増加により、急遽貯蓄から切り崩すご家庭も少なくありません。ローン滞納は信用情報に残ってしまいますので、余裕を持って資金を準備しておく必要があります。

このように現役時代にお金が足りない家計の場合、教育費や住宅費に使う家計の金額を明確にした上で、いつでも現金化できる新NISAで資産運用することをおすすめします。

iDeCoは月5,000円から始めることができますが、掛金に関わらず手数料は一定でかかるため、運用益より手数料が上回る可能性があります。また60歳まで解約できないデメリットを考慮すると、ある程度教育費などの目途が立ってから、iDeCoを検討するのが良いでしょう。

2. 収入に大きな変動がある家計(育休・転職・起業など)

次に注意が必要なのは、「今後のライフイベントで、大きな収入減少が起こる可能性がある家計」です。理由は、育休・転職・起業などが挙げられます。

育休に関しては、期間中の支給額が休業開始前の賃金の約50~70%と大幅に減るので、家計に与える影響が大きくなります。また育休期間を終えても、保育園が見つからず職場復帰できないといった場合もあります。

転職に関しては、未経験分野への転職や役職が下がることにより、想定以上に収入が減る可能性もあります。

起業に関しても、毎月収入がある会社員とは違い、自営業者は売上予測が立てづらいため、収入が途絶えたり貯蓄を切り崩したりする可能性があります。また公的保障が少ないため、働けなくなることでの売上減少も大きな痛手となります。

このように大きなライフイベントを控えている場合、固定費削減など家計をコンパクトにした上で、新NISAで資産運用することをおすすめします。そしてある程度働き方や収入・売上が安定してきた段階で、iDeCoを検討しましょう。

特に自営業者は公的年金が少ないので、自分で老後に向けて備えていきましょう。

3. 収入が少ない家計(所得税・住民税払っていないなど)

最後に注意が必要なのは、「収入が少ない家計」です。iDeCoの最大のメリットは、所得税や住民税の節税効果ですが、そもそもそれらの税金の負担が少ない場合は、節税の恩恵があまりありません。むしろ、60歳以降まで引き出せないということが負担となる場合もあります。

また専業主婦(夫)など収入がない場合、そもそも税金を払っていないので、節税の恩恵はありません。

このように収入が少ない場合、まず万が一に備えた生活費の確保を最優先にしましょう。目安としては会社員であれば生活費の3か月~半年分、自営業者であれば1~2年分を預貯金で準備しておきましょう。

その上で、可能な範囲で新NISAで資産運用することをおすすめします。比較的リスクの少ない債券が含まれたタイプ(バランス型)などを中心に、少額から始めてみましょう。

家計タイプに合わせた資産形成で備えよう

今回紹介した3タイプとも、60歳まで資金が引き出せないiDeCoのデメリットが大きく影響する家計タイプでした。しかし何も対策しなくて良いわけではなく、その家計タイプに合わせた適切な家計管理、新NISAの活用が必須となります。

まずはご自身の家計タイプを知り、どの期間にお金が足りなくなるのかを把握しましょう。そしてその期間に合わせて、新NISAがいいのかiDeCoがいいのかを見極めながら資産形成を進めてみてください。

金子 舞

ファイナンシャル・プランナー

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