東京Vはなぜ負けないのか クラブ史上2位11戦連続無敗…証言から紐解いた「3つの理由」とは【コラム】

東京Vはクラブ史上2位11戦連続無敗【写真:徳原隆元】

守備の意識、ボール保持、城福監督ピッチ内外のマネジメントを監督&選手が列挙

東京ヴェルディは5月15日に行われたJ1リーグ第14節のガンバ大阪戦に0-0で引き分けた。このスコアレスドローで、東京Vは第4節のアルビレックス新潟戦(2-2)から続く連続無敗試合数を11試合まで伸ばしている。

東京Vは昨シーズンのJ2で3位になり、プレーオフを勝ち上がって16年ぶりのJ1昇格を果たした。20番目に今シーズンのJ1入りを決めた東京Vだが、14節を消化して3勝9分2敗という数字で11位と健闘を見せている。

5月12日の鹿島アントラーズ戦(3-3)の前にはOBのラモス瑠偉氏が「今季のヴェルディは強いチームというわけではないが、簡単に負けないチーム」と評し「(今季は)降格しなければいいという気持ちではない。プライドを持って『我々は二度と落ちない』ではなく、今年は8位以内に入って、近い将来、優勝争いをするチームを作ってほしい」とエールを送ったが、十分に中位を狙える戦いぶりを見せている。

G大阪戦で連続無敗試合数を「11」としたが、チームに満足感はない。試合後、ここまでの無敗記録の要因を訪ねると、城福浩監督は少し苦い顔をして「引き分けが多いので、まったく胸を張れるような11試合負けなしではない。1勝と3分は同じなので、勝ちたかったなという思いの方が強いです。振り返っても何試合かは『勝てたな』という試合があるので、『甘さ』と言うと選手にはかわいそうだが、ここを勝ち切れるチームにしていかないといけない」と、11試合無敗の内訳が3勝8分ということに釘を刺した。

それを前提としたうえでJ1最年長日本人監督は、2つの要因を挙げた。

「守備においては、我々は誰かがサボったら、このチームはJ1では戦えない。ピッチに立っている全員が守備を免除されず、前線からのハードワークをして、できるだけ相手陣でサッカーをする。その目指しているところが、結果として自分たちのゴール前に張り付く時間が長くなくなるので、結果として負けていないのかもしれません。我々が対戦する相手は、最後の最後に実績的にはエクセレントな選手を投入してきます。例えば、今日の(G大阪イッサム・)ジェバリなんかも、ペナ(ルティエリア)の中でプレーさせたら点を取られますよ。我々はボックスアウトして、ペナの中に入らせない。できれば相手陣内でサッカーをすることを全員が強い意識を持ってやっているのが一つ」

「もう一つは、リードされても、しっかりボールを大事にしながら、人数をかけて相手のペナに入っていけば何かが起こると、今全員がいい信じ方をできている。最後まであきらめないメンタリティーになっていると思います」

東京Vの守備に関しては、G大阪のGK一森純も「ヴェルディが抜け目なかった。守備のやるべきことが徹底されていて、なかなかボールを前に運ぶことが難しかった」と言えば、DF中谷進之介も「(東京Vの守備は)しっかりしているなという印象ですね。城福さんのチームらしいというか、あれだけ若い選手が多いなかで、本当にしっかりしている」と同調した。さらに、チームの修正力にも着目した。「鹿島戦を見たら、結構厳しい戦いをしているなと思っていましたけど、今日はもう前半に懸けているようなものがある、しっかりした戦いをしていたので素晴らしいなと思いました」と、前節からの変貌を称えた。

東京VのMF綱島悠斗は、具体的なチームの変化を口にした。「前節の反省を生かして、前半の立ち上がりは戦うところで負けないことを意識して入れたと思います。セカンドボールのところはすごく意識していましたし、立ち上がりは相手の背後を選択することが多くなるので、そこでセカンドボールを拾って2次攻撃というのはイメージができていました。そこはアントラーズ戦の反省を生かしてポジショニングを変えられたと思います」と修正ができたとする一方で、「ただ、やっぱりゴールに向かうところで、もっともっと(相手にとって)怖い選択ができたなというのは、個人的な反省です」と、改善点を挙げることも忘れなかった。

この日はコンディション的には東京Vが不利だった。というのも、前の試合をG大阪が土曜に消化して中3日あったのに対し、東京Vは日曜に消化していたため、中2日しかなかったからだ。それでも走行距離では115.734㎞で、G大阪の112.479㎞を上回り、スプリント回数でも136回と、相手の110回を上回っている。このハードワークができる点や、回復の早い若さもチームの土台となっているのは間違いないだろう。

また、東京Vはレンタル移籍で加入している選手が多いのも特徴だ。それゆえ、京都戦では、MF山田楓喜、MF木村勇大が出場できず、鹿島戦ではFW染野唯月、DF林尚輝を欠き、G大阪戦もFW山見大登がベンチ入りできなかった。先発を固定できない状況だが、同時に控え選手は必ずチャンスが来ると思える。染野が不在だった鹿島戦の後には、木村が「前半だけで3人、2トップを組む人が代わり、途中で誰とやっているのかわからなくなった」と笑ったが、チームが機能していないと見るや指揮官がためらいなく、配置や人を変えることも、チームの一体感を高め、ベンチの選手たちをアラートにしておく効果につながっていそうだ。

城福流マネジメントが生む選手との信頼関係

優勝したU-23アジアカップに出場して、チームを外から見る時間もあった山田楓は「前半から最後まで、あきらめない姿勢が(11戦無敗の)一番の要因。全選手、メンバー外の選手も練習ですごく、ここ(味の素スタジアム)で試合をするために戦っている。試合に出ている人から出ていない選手まで、熱量が一緒だというのが、このヴェルディの強みだと思います」と、負けないチームの理由を語った。

鹿島戦後にはMF森田晃樹も「人がいない時もありますが、そういうなかでチームのベースがしっかりしていることで、戦い方がブレないチームになっています。そういうなかで、今日のように相手選手が自分の特徴を生かしながら、ゲームの流れを変えられているので、チームとしては良い方向に向かっていると思います。うまくいかない時にいろんなものを変えていく勇気がチームにありますし、それに対して準備をしている選手もいるので、そういうのを上手く使いながらできている。チームとして『バトンをつなぐ』というか、出し切って次の選手が入ってくるというのは、監督からも強く言われているので、そういうところを強く意識してできている」と、全員で戦っていることを強調した。

やはり浮かんでくるのは、城福監督のマネジメントの巧みさだ。先発の外国人選手はGKマテウスのみ、他クラブからレンタル移籍の若手を中心に据えながら、負けないチームを作っているのだ。GKマテウスは「内容は、シーズン最初に比べれば内容は良くなっていると思います。鳥栖戦も、磐田戦に勝てましたし、今日のゲーム(G大阪戦)も欲を言えば勝てたゲームだったとは思います。シーズン序盤は負けていて追いつく展開が多くなったなかで、最近はゲームを支配して進められることが増えてきているので、良くなっていると思います」とチームの成長を口にし、「城福さんが就任してから、城福さんがしっかり自分のスタイルやアイデアをチームに落とし込んでくれました。それが変わっていないからこそ、交代した選手やスタメン起用された選手のやることが明確で相手にとってやりづらいことができていると思います。それが今の11試合負けなしという結果につながっていると思います。チーム全体も若いですし、シーズンを通してしっかり成長できていることも要因の一つだと思います」と、指揮官とチームの関係性を語った。

東京Vという歴史あるクラブにとっても、11戦無敗というのはクラブ史上2位タイの記録だという。だが、この数字にも満足をしていない緑の若き集団は、情熱的な指揮官の元、まだまだ16年ぶりのJ1を盛り上げてくれるはずだ。(河合 拓 / Taku Kawai)

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