トップに聞く「地域一体、持続可能のモデルを」江ノ島電鉄黒田社長 藤沢市

くろだ・さとし/1986年小田急電鉄(株)入社。交通企画部長、開発企画部長、まちづくり事業本部長などを歴任。学生時代から続ける古式泳法水府流は免許皆伝の腕前

江ノ島電鉄(本社・片瀬海岸)の社長に先月1日付で前小田急電鉄(株)取締役常務執行役員の黒田聡氏(61)が就任した。地域密着を掲げ、藤沢・鎌倉エリアの公共交通として欠かせない同社の今について聞いた。

江ノ島電鉄(株)社長黒田聡氏

――小田急電鉄では開発企画やまちづくり事業などに携わってこられました。江ノ電沿線の印象は。

「交通とまちはコインのように表裏一体だというのが持論です。まちの活力がなければ交通事業は成立せず、逆も然りでしょう。江ノ電は藤沢と鎌倉をつなぐわずか10Kmの路線ですが、沿線に生活の営みがありながら、風光明媚で歴史がある。土地本来が持つポテンシャルが高く、コンパクトなエリアにそのことが具現化されていると感じます」

――新型コロナ禍で人々の行動様式が変容しました。

「コロナ下では江ノ電に限らず、全国の鉄道で利用客が激減しました。一方で抱えていた課題が浮き彫りになったとも捉えています。在宅勤務は今後も続くでしょうし、パンデミックの再来もゼロではありません。地元地域と切っても切り離せない関係にある我々が持続可能に発展する鍵は、いかに地域の人々と今ある課題に対して一緒に向き合えるかだと考えています」

「例えばオーバーツーリズムは我々だけで解決できる問題ではありません。行政や住民、観光客の皆様のご理解が不可欠です。逆にこの地域で社会課題を解決することは、全国に先駆けたモデルにもなるはずです」

――混雑緩和に向けて今年の大型連休中、国が徒歩での周遊を促す実証実験を行いました。

「私も実際に30分ほど歩いてみました。鉄道の大きな混乱や規制はなく、一定の成果がある取り組みだったと思います。オーバーツーリズムは切実な問題です。供給が増やせない中でどう需要をマネジメントしていくか。観光客の方の理解を得ながら、地域にとって良いあり方を模索していきたい」

――多様な交通手段を提供する「湘南MaaSプロジェクト」やキャッシュレス化などにも注力しています。

「先頃は江の島サムエル・コッキング苑につながる江の島エスカーでキャッシュレス対応の自動改札を導入しました。DX化は時代の要請です。限られたエリアで持続可能な発展を目指すには効率的な事業運営は必要条件になる」

――地域へのメッセージを。

「地域の皆様、お客様、社員それぞれにとってエリアナンバーワンの光る企業を目指したい。江ノ電は魅力あふれる地域のコンテンツの一つ。一緒になって地域を盛り上げていきたいと思います」

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