「生活の心配なんていらん」と離れて暮らす父は言います。でも本当にやっていけるか心配です。年金はどれくらい受給しているのでしょうか? 仕送りも考えていますが……

老齢年金の仕組みと年金額

1.老齢年金の仕組み

公的年金の仕組みは下図のとおり、原則として、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建て構造になっています(※1)。

図表1

自営業者など第1号被保険者が受給できる老齢年金は、老齢基礎年金のみとなります。加えて、付加保険料を納付していた方には付加年金が、国民年金基金に加入して掛け金を納付していた方には国民年金基金の年金が加算されます。

会社員などの第2号被保険者は、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受給することができます。また、勤務先の企業に年金制度があれば、企業年金を受給することもできます。

なお、第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者の老齢年金は、会社員として勤務した期間がなければ、第1号被保険者同様、老齢基礎年金のみとなります。

2.老齢基礎年金の額

老齢基礎年金の額は、20歳から60歳までの40年間(480月)に、第1号被保険者として国民年金保険料を納付した月数や、厚生年金に加入していた期間または第3号被保険者であった期間に応じて、下式により計算されます(※2)。

図表2

国民年金保険料の免除を受けた期間については、免除された割合に応じて、月数に8分の7~2分の1をかけた月数が加算されます。

3.老齢厚生年金の額

老齢厚生年金は本来65歳から支給されますが、生年月日などに応じた年齢からは、特別支給の老齢年金が支給されることもあります(※3、4)。

図表3

特別支給の老齢厚生年金は、生年月日などによりますが、下表の「支給開始年齢」から支給されます(※4)。なお、公務員の女性は、男性と同じ生年月日で支給開始年齢が決定されます。

図表4

老齢厚生年金の額は、会社員として厚生年金に加入していたときの報酬額や加入期間などに応じて、下式により計算されます(※3)。

老齢厚生年金額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額

報酬比例部分は、厚生年金に加入していたときの報酬額と加入期間などにより計算される額で、老齢厚生年金の主要な金額となります。報酬比例部分の額は、在職中の平均年収と在職年数により、下式から概算することができます。

報酬比例部分≒平均年収×在職年数×0.005481

経過的加算とは、年金制度改正に伴う差額を補うもので、その額はわずかであることがほとんどです。

加給年金とは、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あるなど一定の要件を満たす方が65歳に到達した時点で、その方に生計を維持されている配偶者または18歳到達年度の末日までの子(または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子)がいるときに加算されます(※5)。

__配偶者:40万8100円(受給権者の生年月日が昭和18年4月1日以降の方)
1人目・2人目の子:各23万4800円
3人目以降:各7万8300円__

なお、特別支給の老齢厚生年金額は、報酬比例部分のみとなります。

親の職業に応じた推定年金額

ここからは、単身の親の職業などに応じた老齢年金の推定額を解説します。

1.自営業者の場合

親が自営業者だった場合、20歳から60歳までの全期間、第1号被保険者として国民年金保険料を払い込んでいたのであれば、年額81万6000円の老齢基礎年金を受給することができます。

過去に、国民年金の未納期間や保険料の免除を受けていた期間がある場合は、老齢基礎年金が少なくなりますので、注意する必要があります。

2.会社員の場合

親が会社員であった場合は、親が在職していた期間の平均年収と在職年数から、老齢厚生年金のおよその額を、下表のとおり見積もることができます。

図表5

加えて、20歳以降60歳までの間に会社員として勤務していた場合、もし勤務していない期間があっても国民年金保険料を支払っていた場合は、満額の老齢基礎年金を受給することができます。

なお、転職が多い方は、通常は通算の在職年数が少なくなるため、老齢厚生年金額が少なくなります。また、無職期間の国民年金保険料が未納となっている場合は、老齢基礎年金を満額受給できませんので、注意する必要があります。

まとめ

離れて暮らす父親の年金額は、父親の経歴から推定することができます。

父親が会社員で40年間勤務し、平均年収が400万円だったと仮定すると、老齢厚生年金が約88万円、老齢基礎年金が81万6000円と推定されますので、月額の年金額は約14万円になります。また、会社の企業年金を受給することができる場合は、その額が上乗せされますので、より安心することができます。

一方、父親が自営業であったとすると、20歳から60歳まで国民年金保険料を完納していたとしても、受給できるのは老齢基礎年金の81万6000円のみとなります。月額換算で6万8000円の年金を受給できる計算となるため、仕送りが必要になるかもしれません。

なお、実際に生活に充てることができる「手取り額」は、年金額から税金と社会保険料を差し引いた額となりますので、「手取り額」に応じた対策の要否を検討する必要があります。

出典

(※1)厚生労働省 年金制度基礎資料集
(※2)日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※3)日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※4)日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金
(※5)日本年金機構 加給年金額と振替加算

執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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