【官民学の連携】地域の枠超え成果示せ(5月17日)

 全国の信用金庫でつくる「よい仕事おこしフェア実行委員会」と自治体、教育機関などとの連携協定の締結は16日までに、本県を含めて126件に上る。経済活性化を目指す連携先の団体は地域の枠を超えて横のつながりを強め、加速する人口減少や少子化など多岐にわたる共通課題の解決に取り組む連合体として飛躍するよう期待したい。

 250を超える信金が加盟する実行委は2019年から、都道府県、市町村、大学、マスコミ、経済関連団体などと連携協定を順次結んできた。県内は自治体10団体、マスコミ2社、大学1校の計13者に達する。協定に基づき、自治体が全国規模の商談会に参加する道が開け、特産品を活用したビール造りなどが進められてきた。東日本大震災や熊本地震をはじめとする被災地の復興支援も粘り強く続けられている。

 連携先の首長が集い、行政のデジタル活用を考える「サミット」が先月26日、東京都内で開かれた。電子版広報・回覧板の導入(三春町)、有害鳥獣対策や子どもの見守り(山形県長井市)、公共交通ネットワークの構築(新潟県柏崎市)、健康づくりのアプリ活用(川崎市)、カキ養殖のシステム化(香川県東かがわ市)など、さまざまな取り組みが発表された。

 新たな情報技術の活用によって、地域特有の課題解決を目指す意欲的な姿勢は頼もしかった。一方で、住民サービスをより一層向上させるには、自治体同士が成功例やデジタル活用の問題点を共有し、それぞれの事業改善の方策を共に考える連携の輪が欠かせないとも感じた。地方では地域コミュニティーや商圏の維持など人口減少に起因する課題が次々と浮上している。より多くの知恵を持ち寄り、対策を講じる必要がある。

 サミットでは、デジタル田園都市国家構想交付金制度の来年度以降の継続を政府に求める声が相次いだ。県境をまたいだ自治体の共同提言は、知事会や市長会、町村会の活動への強力な追い風ともなる。今後も時宜を捉えたテーマの下で、サミットを継続開催してほしい。市町村と地域経済を担う信金、教育機関やマスコミによる連携組織は、古里の展望を開くシンクタンク(研究機関)として機能するだろう。(菅野龍太)

© 株式会社福島民報社