「父さんの遺産、すべて俺にくれ!」土下座で必死にお願いした〈40代の長男〉…ふせられた真実に〈2人の妹〉が大激怒

金持ちは大変だね……他人事と思っていた「相続トラブル」。しかし、裁判沙汰にまで発展するのは「遺産総額1,000万円以下」が最も多く、実は一般人のほうが相続トラブルに巻き込まれやすいというのが実情です。残された3人の子のもと起きたトラブルについてみていきましょう。

2人の妹に土下座までして…兄が「亡父の遺産のすべて」を主張した理由

――まさか、土下座されるなんて思ってもみなかった

40代女性の投稿。土下座したのは2つ上の兄。女性とさらに3つ年下の妹に対して、必死に頭を下げたといいます。なぜ兄が妹に土下座をしたのか……それは「亡くなった父の遺産をすべて自分に渡してほしい」というものでした。

亡くなった父親は遺言らしい遺言を残しておらず、ひと通り葬儀が終わった後に、相続人である子供(兄、女性、妹)3人で遺産分割について話し合いの場を設けたといいます。その冒頭、突然、兄が土下座をするものだから、ただただ呆気にとられた女性。

父親は自宅を売却し、売却金と貯蓄をもって老人ホームに入所。残された遺産は貯蓄1,200万円ほどと投資信託。売ったら(今なら)1,500万円くらいになるので、単純に分ければ、1人500万円といったところ。特に話し合うこともないのでは、と女性は思っていたといいます。

――頼む、俺に父さんの遺産のすべてをくれ!

必死の形相に「とりあえず、落ち着いて。顔をあげて」と言うしかなかった、女性とその妹。

――なんで父さんの遺産、全部必要なの?

まずは理由を問いただす女性。しかし兄は「すまん、理由は聞かないでくれ」と言うばかりで、埒があかなかったといいます。

仕方なく「ちょっと考えさせて。でもできるだけ早く結論は出すから」と言うのが精一杯。話し合いはとりあえず終了したといいます。

そのような状況に対して周囲からは「お兄さんは絶対、良くないことを隠している」「理由が分からないまま遺産を放棄するのは、お兄さんのためにもよくない」などの声が。「確かに、そうですよね」と女性。また女性には、あのようなことを兄が言い出したことに、少し心当たりがあったといいます。そこで後日、妹とともに兄を問い詰めたところ白状したといいます。

――浪費癖のヒドイ兄嫁に借金がありました! それで兄は「遺産を全部くれ」と言ったようです

兄の家にに遊びに行ったとき、ブランドもののバッグや靴が不釣り合いなほどあったことを覚えていた女性。

――やっぱり……

勘は的中。借金はいつの間にか800万円近くになっていたとか。兄がその事実を把握したのは、つい最近のこと。そこで父の遺産で返済しようと考えた、ということだったのです。

株式会社Clamppy/「STEP債務整理」が行ったアンケート調査によると、主婦が夫に内緒に借金をした理由、第1位は「生活費・養育費」。続いて第2位が「ブランド物などの買い物」、第3位が「医療費」。またその額は「10万~50万円」が最多で42.9%。さらに1/4が「200万円以上」の借金を抱えています。

父親の遺産の全取りを主張していた兄。その理由が、妻が作った借金の返済だったとは……。

――OO(兄の嫁)さんの借金なんて、私たちに関係ないじゃない!

と激怒したという女性とその妹。

――だいたい、借金が800万円なら、その分だけ主張すればいいだけなのに。なぜ「遺産のすべてを俺に」なんでしょう。兄は兄で、内緒の借金なんかがあるに違いありません

理由が理由だけに、女性もその妹も、1円たりとも譲る気はないといいます。

家庭裁判所にもちこまれる「相続争い」…その1/3は「遺産総額1,000万円以下」

遺言書がない遺産分割では、相続人全員で遺産分割協議を行い、全員の合意が必要になります。

遺産分割において基準になるのが「法定相続分」。民法が定める相続分で、「①子と配偶者が相続人」なら、相続分はそれぞれ1/2。子が複数人いるときは、1/2をさらに人数分で等分します。「②配偶者と直系尊属(父母、祖父母等)が相続人」なら、配偶者が2/3、直系尊属が1/3。直系尊属が複数人いるときは、1/3を人数で等分します。「③配偶者と兄弟姉妹が相続人」の場合、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4。兄弟姉妹が複数人いるときは、1/4を人数分で等分します。

前出の女性のケースでは、子の数で遺産を等分すれば良い、という単純な話。ただお金は人を変えるもの。「1円でも多く遺産がほしい」と、仲の良かった家族でも揉めることは珍しくありません。そこで遺産分割協議がまとまらないと、家庭裁判所に遺産分割の調停、または審判の申し立てをすることになります。

裁判所『令和4年 司法統計』によると、家庭裁判所が取り扱った遺産分割事件は、2022年の1年間で1万2,981件。そのうち調整が成立したのが6,857件。そして遺産総額1,000万円以下が2,296件。1/3を占めています。相続争いというと、お金持ちの家庭で起こることと考えがちですが、実際は一般の家庭でも多く発生しています。

[参考資料]

株式会社Clamppy/「STEP債務整理」『夫に内緒で借金をしたことがある主婦へのアンケート』

法テラス『法定相続分とは何ですか』

法テラス『遺産分割協議がまとまらない場合には、どうすればよいですか。』

裁判所『令和4年 司法統計』

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