除染土の県外最終処分、高校生の認知進まず 伝承館と東大調査

 東京電力福島第1原発事故の除染で発生した除去土壌などについて、国が2045年3月までに県外で最終処分すると法律に定めていることを知っている県内の高校生の割合が、県外の高校生と同程度の28.5%にとどまることが東日本大震災・原子力災害伝承館と東京大の共同調査で分かった。環境省が県内外の20歳以上を対象に昨年度実施した調査では、県内の認知度は50%を超えており、開沼博東京大大学院准教授らの研究チームは震災の実体験の記憶の有無による世代間の「認識の断絶」が起きているとし、知識や関心を高める努力が必要と分析した。

 県内5校と首都圏8校の1~3年生計913人を対象に調査した。研究チームによると、震災と原発事故から13年が経過する中、実体験の記憶がない世代に特化した大規模な調査は初めて。

 研究チームと環境省の調査で明らかになった県外最終処分に関する認知度は【グラフ】の通り。研究チームの調査では最終処分について「内容をよく知っていた」「聞いたことがあり、内容は少し知っていた」と回答した高校生は県内が28.5%、首都圏31.4%であったのに対し、20~74歳を対象とした環境省の調査では県内54.8%、県外24.6%と県内での認知度に大きな開きがあった。

 また、除染方法に関する設問では「時間がたつのを待つ」や「放射性物質定着効果のある土砂を盛り土する」などの誤った回答が約7割に及んだ。

 調査結果を受け、伝承館上級研究員も務める開沼氏は、県内では20歳以上と高校生世代との間に震災に関する認識についての差があるとし、「県内に住んでいるからといって震災や原発事故、その後の復興のプロセスを理解している、詳しいという前提ではもはやいられない時期にある」と指摘した。

 研究チームは、調査結果が特異な値ではないかを検討するため、福島医大の1年生145人に追加調査を実施、本調査との大差は生じなかった。その後、誤答の多さを示しながら学生向けに正確な知識を講義し、2週間後に抜き打ちで同じ内容を再調査した結果、正答率が向上し、認知の改善がみられたという。

 開沼氏は、学校での震災・原発事故に関する学習や現地訪問が一定程度進む一方で、教育や現地プログラムの内容に不足があると分析。除去土壌や処理水、廃炉など本県の復興の過程には長期的な議論が求められるだけに「表面的に伝承が大事、忘却してはならないということだけではなく、どこまでが危険でどこからが安全かを判断できる力を養う課題解決型の情報発信が問われる」と提言した。

 除染廃棄物の最終処分 除染で出た土壌と廃棄物は中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)に一時保管され、搬入量は4月末時点で1379万立方メートル(東京ドーム11杯分)。国は2045年3月までの県外最終処分を法制化し、本年度中に処分場の構造や面積に関する複数の選択肢を示す方針。処分量を減らすために放射能濃度が比較的低い土壌を再生利用する方針だが、小規模の実証事業さえ難航している。

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