日本保守党初陣の裏方日記|広沢一郎 日本保守党事務局次長の広沢一郎氏が日本保守党の初陣となった選挙戦の舞台裏をはじめて綴る。〈あれこれ探している時間がなかったので今回は私が2011年の県議選用に買った自転車を名古屋から運びました〉

日本保守党「2つの」選挙

日本保守党(以下、保守党)は今年4月に初陣となる2つの選挙に臨みました。一つは地方選挙で愛知県碧南市議会議員選挙、もう一つは国政選挙で衆議院東京15区(江東区)補欠選挙です。結果は碧南市議選では保守党公認の森下としやさんが22人の当選者中真ん中の11番で当選されましたが、衆院補選の飯山あかりさんは4位で落選という結果となりました。

今回はこの2つの選挙の振り返りと今後の保守党について記したいと思います。

まず碧南市議選ですが、碧南市というのは愛知県の中南部に位置する人口7万2千人程の比較的小さい市です。平成の大合併で多くの市町が合併するなか、碧南火力発電所やトヨタ自動車衣浦工場を抱え財政力豊かな同市は単独で生き残ることができたと言われています。この規模の人口で22人の議員数というのは、隣接する半田市が人口11.5万で碧南の1.6倍なのに議員数は同じ22人であることからもわかるように少し多い感もあります。

少し話が逸れますが、世界中の多くの国で行政府は国、広域自治体、基礎自治体の三段構成を採っていますが、広域自治体と基礎自治体の有り様は国によって様々です。

日本では広域自治体が都道府県、基礎自治体が市町村ですが、市の人口は377万人の横浜市から北海道歌志内市の2700人まで幅広く、横浜市の人口は47都道府県中10位の静岡県363万人を上回る規模で、東京23区上位の世田谷区94万人や練馬区や大田区の75万人は鳥取県55万人や島根県67万人を上回っています。このように大規模市の人口が都道府県レベルになっているのが日本の特徴です。

一方、基礎自治体は20万人前後が最適という学説があり、実際にそうなっている国もあります。例えばオーストラリア最大の都市であるシドニーは人口531万人と言われていますが、これはあくまで統計上の「シドニー圏」の合計人口であり、実際にはシドニー市(City of Sydney 人口21万人)のような小規模の基礎自治体に分かれています。市はゴミ収集や公園管理など限られた分野のみ行い、それ以外の教育、消防、警察、観光など幅広い業務は全て州が担っています。こういう国では日本のような基礎自治体と広域自治体との人口逆転は起こりません。

一方アメリカの大都市では市の権限が強く、例えば日本では警察といえば全国一律に都道府県警ですが、ロセンゼルス市(382万人)にはロス市警があり、セレブが集まるビバリーヒルズ市は人口3万人ですがビバリーヒルズ・コップで有名なビバリーヒルズ市警があります。

どの体制が最適かという定説はありませんが、私としては基礎自治体が広域化して多くの事業を担うのは理にかなっていると思います。もしくは基礎自治体を細分化して多くの権限をオーストラリアのように広域自治体が担うのも合理性からしたら有りかと思います。逆に東京23区のように同じ都市圏を細かく分けて区に教育も福祉も担わせるというのは疑問です。都市というのはどうしても地域差が生じやすく、それは税収の差にも繋がります。これが一つの自治体であれば内部で再分配が容易に可能ですが、別の自治体に分かれていると必ず調整機能が必要です。東京23区もそれぞれ財政力に差があり、それを都が再分配する形で調整していますが、これにより都の権限が強くなったり再分配にかかる無駄が生じたりしています。

日本保守党10人目の地方議員が誕生

話を選挙に戻しますと、今回の碧南市議選で森下さんは1090票、最下位当選者は739票でしたが、地方選挙というのは国政選挙とは様相が異なり確実に投票してくれる人を何人作れるかが勝負です。粗く言えば友達1000人作ったら勝ち、みたいなものです。そのため活動も選挙前の期間も含めどれだけ支援者をFace to Faceで作れるかが鍵となります。その点森下さんは小中高大とも地元で地縁もあり、長年地元活動をされ、勤務先も近隣のアイシンAWという大手企業だったため顔の広さは申し分ありませんでした。

そこに今回保守党の支持者が加わり、さらに河村市長が連日応援に駆けつけ、減税日本や保守党東三河支部の全面バックアップもあったことから初挑戦にして中位当選という満足のいく結果となりました。

こうして保守党として10人目の地方議員が誕生しました。

なお、地方議員に議員報酬の一定割合を党費として収めさせている政党もありますが、保守党は所属議員に特段の負担を求めていません。年間費2万円の特別党員であることが唯一の条件です。これは、保守党の議員は理念の共有でつながった集団でありたいからです。

地方議員を党の資金源にしたり、地方議員が地元を牛耳り国会議員に裏金を要求するような悪しき慣習と決別したいためでもあります。

まずはホームセンターに行った

次は東京15区の衆院補欠選挙ですが、補欠選挙といえどもなにせ国政選挙ですので大掛かりになります。東京23区で区が一つの衆議院選挙区になっているのは江東区と葛飾区だけですが、一つの区といってもそれなりに広いですので街宣も計画的に行う必要があります。

選挙で何より大事なのは地元事情に詳しい人の知識ですが、その点では何かと応援して下さったKさん(イケオジ)と経済安全保障アナリストの平井宏治さんには地元情報をたくさん頂きました。

なお今回私は選挙中は主に街宣チームには加わらず本部業務となりましたが、事務所探しからポスター、ビラまでメインはほとんど有本さんが手配してくれましたので、私は周辺機材を担当しました。選挙事務所は最初何も無い状態ですので、まずはホームセンターに行き、事務机、椅子、ラック、コートハンガー、パテーション、カーテンを購入しました。また候補や代表が街宣の合間に休めるように簡易ベッドをネットで買い、敷ふとんと掛ふとん、枕代わりのクッションはニトリで買いました。こんなときブルーサンダー号は大活躍です。基本的にロングタイプのハイエースなのでガンガン積めました。

ネット回線と複合機

次にIT系のインフラとしてネット回線と複合機を導入することにしました。まずネット回線としてドコモの5Gホームルーターを買ってきたのですが、なんと事務所内は4Gしか入らない上にかなり電波状況が悪く、結局は特急で有線を引いてもらいwifiルーターにつなぎました。百田代表が事務所内でライブを行った際、壁に貼ってあったwifiのパスワードが映ってしまい、慌てて変更したこともありました。

複合機は私の古巣ブラザーのインクジェットA3プリンターにしました。A3要るの?と思われるかもしれませんが、日程一覧表を作る場合はA3の方が圧倒的に見やすいですし、A4もA3もさほどマシンの値段は変わりませんのでお勧めです。

名古屋から愛用の自転車を運ぶ

これでなんとか形が整いましたので、次は自転車街宣の準備をしました。これは保守党共同代表でもある河村たかし名古屋市長が40年程前に編み出した選挙手法で、自転車にノボリを立てて走るのですが、一箇所にとどまるよりも多くの方に見てもらえるというメリットがあります。河村市長は若い頃はほぼずっと自転車に乗って選挙活動していたそうです。

さて、まずは自転車を用意しなければなりません。これが案外難しくて、乗り降りがしやすいママチャリタイプである必要があり、かつノボリをうまく立てられることが必要です。あれこれ探している時間がなかったので今回は私が2011年の県議選用に買った自転車を名古屋から運びました。ただ私の車は小型のワゴン車なのでそのままでは積めず、六角レンチでハンドルステム上部をゆるめてハンドルを90度回転させて横幅をスリムにして積みました。

ノボリをどう取り付けるか

次にノボリですが、毎回ヒモでノボリを縛るやり方では面倒で忙しい選挙の最中はやっていられません。よくやるのは鉄パイプを自転車本体に溶接してとりつけたり、塩ビのパイプをどうにかして取り付ける方法ですが、今回は自転車が小径タイプのためシートポストと後輪の間に空間があり、そこにノボリを差し込むベースを取り付けることにしました。シートポストにダブルスーパークランプを取り付け、その先にベースとして太めの突っ張り棒の片側を取り付けました。なお道路交通法では自転車の積載物は高さ2m以内と定められているため、ノボリは途中を織り込んで対応しました。

選挙活動に答えはない

選挙活動というのはどうにも、何が効果があって何が無いのか見えにくいものです。なので人によって意見がまちまちで、ミニ集会が鍵だという人もいれば自転車に乗らにゃあ、という人もいて私も未だに何が最適かわかりません。選挙が始まった時にはほぼ結果は決まっている、という意見もあります。

ミニ集会が効果があるのは以下のような経路だと思われます。候補または陣営が顔の広そうな支援者に喫茶店でのミニ集会の開催を依頼する。依頼された人は私の顔を立てて、といって近所の人を呼び込む。呼ばれた人はめんどくさいなあ、と思いつつも参加して直接候補の話を聞くと情が湧いてまあ入れてあげようか、となる。

肌感覚としても、ポスティングされたビラを比較して投票行動を決める人は多くはなく、テレビの報道で決めたり、あの人はよく駅前でしゃべって頑張っているからとか、直接候補者を見たり聞いたりすると投票につながりやすいと思います。

「本気で勝てるかも」陣営一同盛り上がった瞬間

こうして準備万端整って始まった選挙戦、まずは初日の富岡八幡宮で1000人を超える大観衆を迎えて始まりました。よくマスコミから手応えはどうですか、と度々聞かれましたが、本音で手応えは日々十分過ぎるほどありました。どこへ行っても大勢の方が聞いて下さり、突発的に行った街宣でも徐々に人が集まってきて最後の方はかなりの数になることが多かったです。

期日前投票が始まってからはマスコミによる出口調査の情報も入り始め、3位から2位に上がったと聞いたときは陣営一同盛り上がりました。このまま行けば勝てる、と。

しかし結果は14%を得票しながらも残念ながら4位でした。

まずまずだという評価もありますが、本気で勝てるかも、と思っていた我々としては落胆は隠せませんでした。

国政政党になって全国に日本保守党の主張を伝える

ただ今回、国政政党である参政党には大差で勝ったこと、都民ファと国民民主が推す候補にも勝ったこと、5年間捲土重来で頑張って来た維新候補にも肉薄できたこと、そして何より縁の無い状態の選挙区で14%を獲得したということは今後に期待が持てる結果となりました。

今回、全国3つの衆院補欠選挙は全て立憲民主党が取りました。これは立憲の政策に支持が集まったというより、不祥事続きの自民党から逃げた票が主に立憲に流れたのが主な理由だと思います。前回の鳩山・管時代から10年以上経ち、メンバーも変わったからともう一度政権を取らせてみようと考えている方もいるかもしれません。

しかし政党の本質というものは簡単には変わりません。恐らく立憲民主が政権を担ったら、移民推進、外国人参政権推進、父母は親1親2となり、謝罪外交再開、防衛費削減、女系天皇容認、そして間違いなく増税が行われるなど、日本を貧しく、弱くする政策を鋭意進めるでしょう。そうなった暁には日本は失われた50年を迎えることになり、物心ついてから定年までずっと節約、節約の日々だったという国民が多くなってしまいます。

こうした反日政策から日本を守り、再び豊かで強い国にする責任が保守党にはあります。

来年(2025年)末までには参議院と衆議院の総選挙があります。ここで保守党はまずは国政政党にならねばなりません。やはり国政政党になるとマスコミの扱いも変わり、NHK日曜討論にも呼ばれますので全国に保守党の主張を伝えることができるようになります。

ぜひ皆様方には引き続き日本保守党の今後にご期待頂き、ご支援頂きたいと思います。

広沢一郎

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