0.5インチの差を知る必要はあるのか 一周回って考えるクラブの長さ/ギアを愉しむ。

自分に合う長さは、実は無段階!

数値ではなくクラブごとに見た目で「長さ」をジャッジする

43.5、44、44.5、45インチ…。ドライバーの長さ(レングス)は大抵、半インチの単位で推移している。アイアンの番手間も半インチが基本。半インチ(1.27cm)の差を大きいと取るか、微差ととらえるかはプレーヤーにもよるが、工房に行った際に数字を細かく「44.25インチで」「43.75インチで」と指定すると、一発でマニア認定を受けてしまう。そのうえ0.25インチの違いなんて分かるの? と首をかしげられることも避けられない(笑)。

だが、いろいろ試していくと、0.25インチだろうが0.5インチだろうが、数字にとらわれていることに代わりはなく、所詮大ざっぱだという結論にたどり着く。

その根拠は、たとえ精密に同じ長さでドライバーを組み上げたとしても、同じように構えやすく、振りやすいものにはならないから。ヘッドの体積はもちろん、アドレスしたときに見えるクラウン(投影面積)やヘッド形状、シャフトの付き方(オフセット具合)によっても見え方は微妙に異なる。

大切なことは、いつもと同じ長さにすることではなく、短く見えるのか、長く見えるのか、ヘッドのすわりがしっくりきているのか、フェースの向きが気持ち悪くないか――自分なりのセンサーで違和感がないかをチェックすること。短く持ったり、長く持って試すことで、その違和感が解消されるかを確かめておくことが重要だ。「なんとなくしっくりくる」という、構えたときに感じる適度な長さ。自分の感覚で決めた“見た目レングス”を大事にしてほしい。

人は同じ長さでも、ヘッドが大きければ短く、小さければ長く感じる。「短いなぁ」「長いなぁ」とモジモジしながら打つよりも、しっくりくる長さに設定して、目標へボールを運ぶことに集中するほうがいいに決まっている。

構えたときにしっくりくる長さが何インチかは、実は知らなくてもいいことなのではないだろうか。気になるならば測ってもらえばよいが、こればかりはキリのよい数字になるとも限らない。44.38インチなどと市販にはない微妙な数字になってしまったり、その長さが他のモデルでも当てはまるわけではない。ヘッドそれぞれにしっくりくる長さがあるので、実は知らなくてもいい数字なのである。

アドレスでの手の収まりを一定にする

両腕をダラリと垂らし 両手を合わせて握る習慣をつける

クラブが長い、短いは構えてみればすぐに分かるものだが、もうひとつ念頭に置くべきことはアドレスでの手の位置(高さ)。ゴルファーは見た目の違和感を感じた際、ハンドアップやハンドダウンをして、無意識に調整している。無理やりよい感じに見える構えをつくってしまう。これも道具に慣れる、あるいは使いこなすために必要な工夫ではあるが、せっかくならモジモジしなくても構えやすいクラブを選びたい。

そのためには、アドレスでの手の収まりを一定にすることが重要だ。肩口から両腕をダラ~ンと垂らし、自然に手のひらを合わせた位置でクラブを握る。そうすることで、長く見えるのか短く見えるのかという自身のセンサーを働かせ、適正な長さに気づく。新しいモデルを打つ際は、手の位置を変えずにグリップ位置を変えて試すことがポイントだ。

その結果、短く握ったほうがしっくりくるという場合は、しばらくそのままで使用することをお勧めしたい。結果が良ければそれでよし。短く切ったほうがいいと思えば、何インチ切るかを工房さんと相談しながら決めてほしい。握りたい長さに対し、どのくらいグリップエンドを余らしたいかはゴルファーによって異なる。余す長さを考慮せずバッサリ切ってしまうと、後悔する羽目になるので慎重にお願いしたい。

クラブを試打する際は、しっくりくる長さ(構え)を見極めたうえで、試打結果を精査する。同じ長さでシャフトの銘柄を次々に替えても、見た目の違和感が変わるわけではない。そもそもシャフトのフィッティングは、合わないものを合うように持っていくためではなく、構えやすいクラブをさらに安定させるために使うべきだからだ。(高梨祥明)

数字に惑わされていないか一度疑ってみる

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