土砂災害情報、精度アップ 県と山形地方気象台、23日から新基準

 県と山形地方気象台は16日、大雨時の土砂災害警戒情報に関し、より実情に即した新たな発表基準を23日から運用すると明らかにした。判定するエリアの網目を細かくするほか、平地や人家などがない範囲は判定対象から除く。発表頻度は従来と比較して最大8割減となるが、避難指示が出たのに災害は起きなかったなどの“空振り”は減り、精度向上が見込まれる。県などは「これまで以上に情報には敏感になってほしい」と呼びかけている。

 県と同気象台が発表する土砂災害警戒情報は住民の自主避難や市町村が出す避難指示の目安となる。本県では2006年9月から運用し、見直しは16年に続き2回目。本県では警戒情報の発表中に土石流や同時多発的な崖崩れが発生する確率は全国平均と比べて低い傾向があるという。「空振り」の多さに起因して問題意識がまひする「避難控え」を防ぐ意味でも、情報の信用度向上が課題となっていた。

 雨量と土中の水分量で発表を判定するエリアの網目を、現行の5キロ四方から1キロ四方に細分化する。また運用開始から22年までの降雨や災害の事例を踏まえ、発生例がないエリアは判定基準を引き上げる。さらに平地のほか、人家や事業所などがないエリアは、判定の対象から除外する。

 新たな基準を適用すると、情報の発表頻度(1年当たりの平均回数)は村山が0.73から0.40に、置賜が1.08から0.25に、庄内が1.13から0.28に、最上が1.01から0.40に減少する見込み。

 県砂防・災害対策課は「身の安全を守るために情報収集に努め、速やかな避難につなげてほしい」と話している。

「判断に役立つ」「安心はせずに」

 より実情に即した新たな発表基準が始まることを受け、2022年8月豪雨被害で甚大な被害を受けた飯豊町の後藤幸平町長は「『空振り』に住民から苦情が寄せられることもあり、22年8月豪雨の際にも頭を悩ませた」と振り返る。避難指示などの判断が高齢者や寝たきりの人にも苦労を強いることから、新基準の導入を「より精度の高い情報が得られれば的確な判断に役立ち、大変ありがたい」と歓迎する。

 一方で「判断材料をどう生かせるかが、今まで以上に重要になる。地形の違いや河川の状況などと情報を照らし合わせ、より的確な情報発信ができるよう関係者と検討、訓練を重ねたい」と述べた。

 同じく8月豪雨の被害に遭った川西町。茂木晶町長は「自然現象は、全てが想定通りにはならないので、情報に安心することなく、現場の判断も大切にしていきたい」と語った。

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