イスラエル軍、誤爆で兵士5人が死亡と発表 ガザ地区北部と南部で戦闘激化

イスラエル軍は16日、パレスチナ自治区ガザ地区北部で、自軍の戦車の砲撃によって兵士5人が殺されたと発表した。昨年10月にイスラム組織ハマスへの攻撃を始めて以来、こうした事案での死者としては最多だという。

初動調査の結果、戦車2台が、兵士が集まっていたジャバリア難民キャンプの建物に向かって攻撃したことが明らかになった。

イスラエル兵らはこの地域から撤退していたものの、ハマスが再集結しているとして今週から戻っていたという。

イスラエル軍とハマスの軍事部門は共に、15日の段階で、ジャバリア難民キャンプと近郊のジャバリア市街地で戦闘が激化しているとしていた。

戦闘は南部ラファでも激化している。ラファにはガザ地区の各地から逃れた100万人以上のパレスチナ人が避難していたが、10日前にイスラエル軍がラファでの作戦を開始して以降、60万人近くがラファから逃れているという。

「自軍の攻撃の結果」

イスラエル軍は、第202空挺(くうてい)大隊の兵士5人が15日夜、「自軍の攻撃の結果」亡くなったと発表した。

声明によると、この地域に配備された戦車2台が、同大隊の副司令官が使用していた建物に向かって砲弾2発を撃ち込んだという。

「初動調査によると(中略)超正統派空挺中隊ヘッツの戦車兵たちが、建物の窓の一つから出ている銃身を確認し、お互いにその建物を撃つように指示したようだ」

また、兵士7人がこの攻撃で負傷し、うち3人が重傷だという。

昨年10月27日にガザ地区への地上作戦を開始して以降、イスラエル兵の犠牲者は278人に上っている。

これとは別に、10月7日のハマスによる襲撃で殺された約1200人のうち、378人がイスラエル兵。ハマスはさらに、200人以上を人質として連れ去った。

ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、襲撃を受けて始まったイスラエル軍の軍事作戦により、これまでに3万5270人が殺されている。

イスラエル軍のウェブサイトによると、今月15日までに殺されたイスラエル兵のうち、15%にあたる44人の死因が「作戦上の事故」だとされている。

このうち22人が「味方からの誤射」、5人が「不規則な発砲」、17人が武器などの「事故」で亡くなっている。

北部で戦闘激化、飢饉の危険も

パレスチナ自治政府の通信社WAFAは16日午後、ジャバリア難民キャンプのアルファルージャ地区で、妊娠中の女性を含む4人がイスラエルの空爆によって殺されたと報じた。

これより先には、アルホジャ通り周辺で空襲が激化し、「完全に破壊された」と伝えていた。

ハマスの軍事部門はこの日、ジャバリア難民キャンプの第2ブロックにいたイスラエルの兵員輸送車に対戦車ミサイルを発射したと発表。ジャバリア東郊では、装甲ブルドーザーを爆発装置で攻撃したと明らかにした。

IDFのヘルツィ・ハレヴィ参謀総長は14日、ガザ地区の兵士らに対し、イスラエル軍はジャバリアで「広範囲を強力に攻撃している」と説明した。

「(ハマスが)粘り、再建しようとしているため、我々はこれに再び対処し、何度でも戻ってくると証明しなくてはならない」

WAFAはまた、医療関係筋の話として、イスラエルが北部ガザ市でも住宅を空爆し、子ども10人を含む民間人30人以上が殺されたと報じた。これには、パレスチナ・ポストのフォトジャーナリスト、マフムード・ジャフジョウ氏とその家族も含まれているという。

ジャバリアやガザ市をはじめとするガザ北部をめぐっては、イスラエル軍が1月にハマスの大隊を「解体」したと宣言。軍事行動を縮小した。その結果、権力の空白が生じ、ハマスの再建が可能になっていた。

国連の世界食糧計画(WFP)によると、この地域に取り残されている推定30万人は、支援物資の供給不足から「深刻な飢饉(ききん)」に見舞われているという。

アメリカは16日、人道支援のレベルを高める活動の一環として、ガザ地区に浮桟橋を停泊させることに成功したと発表した。

しかし米国務省は、ガザの状況は悪化の一途をたどっているとし、イスラエルに対し、ガザ南部と北部の双方に持続的な援助アクセスを提供するため、いっそうの努力をするよう求めた。

国務省のヴェダント・パテル報道官は、エジプトから南部ラファ検問所を通過する燃料の流れが「完全に止まってしまっている」と指摘した。

国連のマーティン・グリフィス事務次長(人道問題担当)もこれに同調している。グリフィス氏はロイター通信に対し、人道支援活動が「行き詰っている」と述べ、「すでにガザ地区南部にあった食糧備蓄がなくなりつつある。ほとんど何も残っていないと思う」と語った。

南部ラファでも戦闘継続

ガザ地区南部ラファでは16日、イスラエル軍の空爆で少なくとも5人が亡くなったと、WAFAは報じた。

イスラエル軍は5月6日以降、「ラファ東郊とラファ検問所のガザ側の特定地域」でハマスに対する「精密な作戦」を行うとして、住民らに避難を命じている。

イスラエルは、ハマスの最後の大隊がラファを拠点としているため、市内に派兵する必要があるとしている。しかし国連や西側諸国は、ラファへの全面攻撃は、民間人の多大な犠牲と人道的大惨事につながりかねないと述べている。

イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は16日、ラファ作戦を継続し、「追加の兵士も市内に入る」と語った。

こうしたなか、南アフリカは16日、国際司法裁判所(ICJ)に対し、イスラエルのラファ攻撃を阻止するよう請求した。

南アフリカは今年1月にも、イスラエルがガザ地区でジェノサイド(集団虐殺)を行っているとして、ICJで訴訟を起こしている。イスラエルは、南アフリカの主張には「全く根拠がない」と、訴えを否定している。

(英語記事 Gaza war: Israeli tank fire kills five soldiers in north Gaza, military says

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