苦労して開いた同窓会が “大修羅場”に…すべての負担を押し付けられた幹事女性の「怒りと後悔」

<前編のあらすじ>

コロナ禍の2021年秋、中学時代の同級生から30年ぶりに連絡があってクラス会の幹事を依頼され、正直面倒くさいと思いましたが、うまく乗せられて引き受けてしまいました。

幹事の仕事は思っていた以上に大変でした。連絡がつかない同級生が多く、実家に電話をかけても高齢の親が出て来て話がつながらなかったり、既に引っ越した後だったり……。

会場選びを地元に住む同級生の香織に相談したら、行き違いで双方がお店を予約してしまい、慌てて自分が予約した方のお店を取り消したりもしました。それでもようやくすべての手はずを整えて後は当日を待つだけとなり、ほっと胸をなでおろしていたのです。

●前編:【「私ははめられたんです」しぶしぶ引き受けた同窓会幹事で、マウント女性との間に起きた“大波乱”】

前日キャンセルが多発するも、予定通り開催することに

しかし、本当の修羅場はそれからでした。

同窓会は土曜日でしたが、私は実家の母から頼まれごとがあり休暇を取って前々日の夜に帰省しました。するとその深夜、関東地方にかなり大きな地震があったのです。幸い、地元はそれほど揺れが強くなく、被害もほとんどありませんでした。

翌朝、都内の同級生数人から「鉄道が運休になってしまって明日は行けそうにない」という連絡が入りました。連絡がない人も含め首都圏在住の同級生が10人ほど参加する予定になっていたので仕切り直した方がいいかもと思い、香織に連絡しました。

香織は不機嫌そうな声で電話に出て、「前日キャンセルでも半額払うことになるし、来られる人だけでやるしかないんじゃないの」と言います。梓にも連絡し、地元組は地震の影響もなさそうだったので、そのまま開催することにしました。

キャンセル代と追加費用をめぐり大修羅場に

ということで、当日会場にやって来たのは、私以外は香織や梓ら地元組ばかりの8人。地元組は卒業後もそれなりに交流があったらしく、最初こそ「本当に久しぶりだね」「今何してるの」と声をかけてくれましたが、その後は子供の学校や市役所の新庁舎などローカルな話題ばかりで私一人が蚊帳の外でした。

「こんなことなら来るんじゃなかった、幹事なんか引き受けるんじゃなかった」と後悔しました。香織は中学時代から仲が良かったグループで固まり、ワインのボトルを2本開けていました。

参加者が少ないこともあって会自体がそれほど盛り上がらず、2時間もしないうちにお開きになりました。トラブルが起きたのは、その会計の時でした。

店側は運休で半数が出席できない事情をくんで、20万円という当初の請求額を14万5000円(20人分の料理代と9人分の飲み放題料金)まで下げてくれましたが、一方で追加のワイン代4万円が上乗せされていました。香織たちが頼んだワインは、飲み放題の対象外だったのです。

驚いたのは、同級生の誰一人として欠席者の分を補塡(ほてん)しようとはせず、当然のように1万円札を差し出してきたことです。香織に至っては「飲み放題だと聞いていたから頼んだだけ」とシラを切り、自分たちが飲んだワイン代さえ払おうとしません。

さすがにこれは黙っていられず、「それはないんじゃない? 自分が飲んだ分くらいは払ってよ」と迫ると、香織は「幹事のあんたの情報管理が徹底されてなかったせいじゃない。あたしに責任押し付けないでよ」と開き直りました。

すべての負担を押し付けられてしまった友里さん

同級生たちはそんな私たちを見て見ぬふりで、「ごめん、この後用があって」とか「今日はお疲れさま」とそそくさと店を後にしました。頼みの綱の梓も、私と目を合わせないようにしながら店を出ていきました。何だか、裏切られたような気分でした。

香織は頑としてワイン代を出そうとせず、結局、私が精算する形になりました。キャッシュカードが使えないと聞いていたので現金は多めに用意していましたが、それでも足りず、とりあえず15万円を払って残りは翌日持参することにしました。

翌日曜日、キャッシングで4万円を引き出してランチ営業が始まる前にくだんのイタリアンレストランに届けた際、店主が出て来て申し訳なさそうに言いました。

「嫌な思いさせちゃって悪かったね。香織ちゃんとこの会社がうまくいってないみたいで、最近はうちでもツケが結構たまってるんだよ」

そういうことか、と思いました。店主は、香織が次々と知り合いを連れてきては飲み代をたかるようなまねをしていることを暗に匂わせました。会の中止を渋ったのも、あのワインの追加注文も、“確信犯”だったに違いありません。

とはいえ、地元で暮らしていく上で香織は無視できない存在ですから、クラス会に呼ばないわけにはいきません。だからこそ、地元の同級生たちは事情を知らない私に幹事役を押し付けたのでしょう。梓の甘言に乗せられ、まんまと利用されたお人よしの自分に腹が立ちました。

欠席した同級生のうち2人は、当日のキャンセルをわびてその後、会費の半額の5000円を送金してくれました。それでも、私は香織たちのワイン代を含めて8万5000円分自腹を切らされたことになります。

後で自称「幹事の達人」の甥に愚痴ったら、慰められるどころか逆に「今どきそんな昭和の幹事みたいなことやってるの友里ちゃんくらいだよ」とあきれられました。甥は日程調整や出欠席はアプリで管理し、支払いもオンライン徴収で取りっぱぐれのないようにしていると自慢げに教えてくれました。

もっと早く聞いておけばよかったと後悔した一方で、香織をはじめ、地元の同級生たちへの怒りはそう簡単に消えるものではありません。3年近くたった今も、顔も見たくない気持ちです。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。

森田 聡子/金融ライター/編集者

日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

© 株式会社想研