“NewJeansの母のクビ”がかかる議決権行使可否裁判、HYBEとADORがそれぞれ主張したこと

ADORミン・ヒジン代表と親会社HYBEが、経営権奪取疑惑を巡って激しい攻防を繰り広げた。

ミン・ヒジン代表側が背任行為は全くなかったと主張した一方、HYBE側はミン・ヒジン代表の“シャーマン経営”、NewJeansへの精神的虐待疑惑などを再度強調した。

ソウル中央地裁では本日(5月17日)10時45分より、ADORミン・ヒジン代表の議決権行使禁止仮処分訴訟の審問期日が行われている。31日に開かれるADOR臨時株主総会を控え、HYBEがミン・ヒジン代表の解任案に対して議決権を行使できないようにするという内容が骨子だ。

裁判所の判断が31日に行われる臨時株主総会の結果に大きな影響を与えかねないだけに、双方の激しい攻防が続いた。ミン・ヒジン代表は法務法人のセジョンを、HYBEは法務法人のキム&チャンを法律代理人に選任。両者は30分にわたってプレゼンを行い、それぞれの主張を展開した。

ADOR、NewJeansの不当な扱いを主張

(写真提供=OSEN)ADORミン・ヒジン代表

まず、ADOR側は、株主間の契約上に明示された5年の任期保障を根拠に、HYBEの議決権行使に反対した。また、HYBE傘下のレーベルのうち、ADORが同時期にできたSOURCE MUSIC、BELIFT LABよりも圧倒的な営業利益をあげており(2023年に355億ウォン=約40億円)、このようなNewJeansの成功はミン・ヒジン代表とメンバーの深い関係があったからこそ可能だったと主張した。

また、HYBEのNewJeansに対する差別待遇についても再度言及。NewJeansを広報するにあたって、SOURCEのLE SSERAFIMと差別したことを強調するとともに、メンバーから送られたパン・シヒョク議長がNewJeansを無視したという内容のメッセージも公開した。

3月27日に締結した株主間契約に対しても、「債務者(HYBE)でも株主間契約問題を認識し、修正交渉を進行中であり、Eメールで疎通してきた」として、「持分、経営権簒奪議論はなかった。NewJeansの専属契約解約権限を(ミン・ヒジン代表が)持たなければならないという内容もない」と話した。

NewJeansは今後、24日に韓国でカムバックし、6月には日本デビューを控えている状況。セジョンが法廷で公開した内容によると、NewJeansは今年下半期にアルバム発売予定であり、来年にはワールドツアーを計画しているという。

(写真提供=OSEN)NewJeans

これらに関してADORは、「NewJeans本人たちもミン・ヒジンと共にしなければならないと話している。ミン・ヒジンの役割がそれだけ大きいという意味だ。これはNewJeansのファンも認めている」と強調した。

そのほかにも、HYBEが最近、NewJeansのメンバーたちに「長い休暇」と言及し、「メンバーたちと法律代理人は恐怖を感じざるをえない」と話した。それとともに、「(HYBEは)でたらめな告発状とケチなカカオトーク以外に証拠資料がない。債権者(ミン・ヒジン代表)側は選管主義の義務を果たしており、定款法令に違反したことはない」とも付け加えている。

最後に、ミン・ヒジンの解任はADORとミン・ヒジン本人に回復不可能な被害をもたらすため、仮処分申請を引用してほしいと主張した。

HYBEはミン・ヒジンの“虐待”などを強調

一方、HYBEはミン・ヒジン代表とADOR経営陣に関する監査資料を法廷で公開。ミン・ヒジン代表がNewJeansメンバーをガスライティング(精神的虐待)し、シャーマンのお告げに頼る経営を持続するなど、解任の正当性を主張した。

先立って4月22日、HYBEは“経営権奪取疑惑”を名分にADOR経営陣の監査を実施し、ミン・ヒジン代表らを業務上背任疑惑で告発した。

そして今回、HYBEの法律代理人はミン・ヒジン代表が本質を“あやふや”にしようとメディアを利用しているとし、「HYBEがNewJeansのデビューを無理に遅らせ、ILLITがNewJeansを盗作したということは全て事実ではない。また、シャーマンのコーチングを受けてデビュー時期を決め、“主人公のように最後に登場する”と話した。(ミン・ヒジン代表は)内部告発よりも私益の追求だけに関心がある」と主張した。

(写真=HYBE)HYBE社屋

続いて、ミン・ヒジン代表が言及した“奴隷契約”に対しても事実ではないと反論したHYBE。「ADORの成功のために債権者の要求事項を最大限受け入れた。ADORにただの一銭も投資しないミン・ヒジンに経営権を付与するなど、前例のない破格的な対応をし、紛争前から1000億ウォン(約115億円)以上の補償を受けた」と話した。

また、HYBEはミン・ヒジン代表が“NewJeansママ”と自称してメンバーをガスライティングしているとも主張。「ミン代表は“母親のような心情”だと言うが、NewJeansが稼いでくるお金にだけ関心がある」として、「側近には、NewJeansのことを“アーティストとしてNewJeansを待遇するのが難しく、世話をすることがぞっとする”、“気持ち悪いが我慢している”など、メンバーを卑下した」と述べた。

続けて、「NewJeansメンバーたちが自身に精神的に従属することを願う気持ちを表わしてきた。台本から外れた発言をさせないようにし、個性を表に出さないようにするなど、アーティストに受動的な役割だけを指示した」とし、「ガスライティングを母娘関係で美化している」と声を高めるとともに、「真の母親なら盾にならなければならないが、NewJeansを盾にして自身を保護している」と付け加えた。

HYBEはミン・ヒジン代表のこのような行為が公益ではなく、私益追求のためのものだと強調。「(ミン・ヒジン代表は)業界でも異例の高水準のストックオプションを受けた。HYBEはNewJeansがトリプルタイトル曲でデビューできるよう、160億ウォン(約170億円)を投資したが、成功的にデビューすると債権者は自身の補償に不満を提起し、追加持分を要求した」とし、「債権者に解任理由が存在する限り、債務者は債権者の代表理事職位を維持するようにする契約上義務がない」と話した。

このほかにも、「NewJeansの両親をHYBE役員たちと遮断して仲違いさせるなど、紛争の道具として使った」「シャーマンとADOR経営権奪取を議論し、会社の膨大な営業秘密を流出した。職員採用もシャーマンに頼った」「あるADOR役員の職員セクハラ事件を受け付けたあと、(ミン・ヒジン代表は)通報人を保護するどころか女性卑下発言を持続するなど、一つの会社の代表理事として資格不足」とも主張している。

HYBEは最後に、「ミン代表の組織的な背任行為により、ADORとHYBEの損害は莫大」として裁判所に仮処分棄却を要請した。また、パン・シヒョク議長の嘆願書を引用して「ミン代表の事件でマルチレーベル体制の問題点が明らかになったというが、いくらよく整えられたシステムだとしても、一人の悪意による行動を防ぐことはできない。ある産業のリーダーとして事態の矯正に努めている。ご心配をおかけして申し訳ない」と述べた。

結果はいつまでに?

(写真提供=OSEN)HYBEパン・シヒョク議長

双方の主張をもとに、裁判所は臨時株主総会が開かれる前の2週間以内に仮処分不可、もしくは棄却の判断を下すものと展望される。

裁判所は、「5月24日までに(双方の)追加資料の提出を受けたあと、31日の前に決定を下すよう努力する」と明らかにした。

裁判所が不可の決定を下した場合、ADOR株80%を保有するHYBEが議決権を行使ができなくなり、ミン・ヒジン代表の解任は不可能となる。代わりに、仮処分結果を不服として抗告審を開く可能性がある。反対に議決権行使の阻止申請が棄却された場合、ミン・ヒジン代表の解任は決定的となる見通しだ。

HYBEは現時点で新たなADOR経営陣をすでに選定しており、NewJeansの今後の活動に関する計画もまとめているという。

数千億ウォン(数百億円)がかかった戦いであるだけに、今回の仮処分結論が出たあとも、両者の損害賠償請求など法的紛争が続く可能性もある。

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