円安が長引いているにも関わらず、日本から韓国を訪れる人が増え、地方の空港で日韓線が増便し続けている。
今回は、日本人が行きやすく、話題性があり、安くて美味しいソウルの食堂を韓国育ちの女性ライターに教えてもらった。
市庁(シチョン)駅から地下鉄2号線で2駅の阿峴(アヒョン)駅で下車
阿峴駅と言われてもピンと来ないかもしれないが、ソウル中心部の市庁駅から地下鉄2号線で2駅。人気の弘大(ホンデ)エリアのちょっと手前だ。
阿峴駅4番出入口の西側に広がる阿峴市場はブッチンゲ・コルモク(チジミ横丁)が有名だ。
ここでは店先の屋台でチジミをつまみにマッコリをあおる中高年の姿が見られたが、数年前、周辺のタルトンネ(傾斜地に建てられた庶民の住宅街)の再開発に伴い、市場が整理縮小され、アジア的な猥雑さが失われてしまった。
しかし、2020年に米国アカデミー賞に輝いた『パラサイト 半地下の家族』の劇中、主人公(ソン・ガンホ)一家が住んでいたのがこのエリアなので、かつての雰囲気は映画で確認できる。
半地下なのに、明るく清潔感のある「ヘドゥン韓食ブッペ」
こぎれいになった市場を西方向にアーケードが切れるまで400メートルほど歩き、視界が広がったところを左折。
すぐ左手に見えるカフェ「ピピ・コーヒーラウンド」を左折すると、目当ての食堂「ヘドゥン韓食ブッペ」が右手に見つかる。
建物は飾り気がなく、背が低い。引き戸を開けるとホールまで階段を二段降りる造りになっている。ここで気づいた。
この店は半地下にあるのだ。しかし、普通の半地下より少し浅く、広くて採光性がよいので、店内はとても明るい。
主菜は鶏肉や豚肉。野菜不足を解消できるおかずがいっぱい
店名の一部のブッペとはビュッフェのこと。つまり食べ放題のバイキング形式のことだ。
『パラサイト 半地下の家族』で、生活水準が少し上がった主人公一家が技士食堂(タクシー運転手さんの利用が多いビュッフェ食堂)で嬉々として食事するシーンがあったのをご記憶だろう。
あれと同じタイプの店だ。
ホール中央には十数種類の惣菜とごはん、スープが並んでいる。この日は前菜類が、白菜キムチ、大豆モヤシのナムル、刻み唐辛子の醤油漬け、ホウレンソウのナムル、切り干しダイコンとキュウリのキムチ、キノコやパプリカのナムル、キャベツやニンジンのサラダ、タクワンなど。
汁物はワカメスープ、みそ汁、ごはんのおこげスープなど。
主菜は、豚肉のコチュジャン煮と鶏のから揚げと麻婆豆腐。カレーもあった。ごはんは白飯と豆ごはんの二種類。これで9,000ウォンは大変なお得感がある。
ランチのピークを過ぎてから行ったが、近くの席ではガテン系らしき男性が山盛りごはんをかきこんでいたり、70代くらいの女性がひとりで静かにナムルをつついていたりした。
この種の店は味付けが濃いのでは? そう思いながらおかずに箸をつけると、塩分は適度で家庭料理を思わせる味だった。
野菜が高騰しているので、最近のソウルの食堂ではつきだしのキムチやナムルが貧弱になっているが、ここなら野菜がたっぷり摂れる。主菜の豚肉や鶏肉の味付けもよく、ごはんが進む。
夢中で食べていてふと顔を上げると、冷蔵庫が目に入った。なんと、この店はソジュ(韓国焼酎)やビールも提供しているのだ。9,000ウォンのつまみを肴に一杯飲むのもよさそう。
豚肉のコチュジャン煮にはソジュが、鶏のから揚げにはビールが合うだろう。
この店の営業時間は6時~9時、10時30分~18時30分なので、夕方早めの入店をおすすめする。
『パラサイト 半地下の家族』の撮影地見学と生活市場散歩も楽しめる阿峴エリア。
ぜひ一度足を運んでみてほしい。
住所:麻浦区アヒョン洞クルレバン路7ギル59
(うまいめし/ チョン・ウンスク)