【長谷部誠】旧知のスポーツライター・ミムラユウスケに聞く、「心を整える。」の原点

By ミムラユウスケ,シンクロナス編集部

4月17日、40歳の長谷部誠選手が今季限りでの現役引退を表明した(写真:ゲッティ)

5月18日、元サッカー日本代表キャプテンの長谷部誠の現役ラストマッチが行なわれる。

現役最後のクラブとなるフランクフルトでは今季クラブの最年長出場記録を更新するなど、外国人選手ながら「レジェンド」としてスパイクを脱ぐことになる。

これまで三浦和良、中田英寿、高原直泰など数々の日本人選手が世界を渡ってプレーしてきたが、長谷部ほど長く海外の第一線で活躍してきた選手はいない。

長谷部の海外挑戦は2008年1月。浦和レッズからドイツのヴォルフスブルクに移籍したのが出発点だが、その1年後、ドイツを拠点に海外での活動をスタートさせたのがスポーツライターのミムラユウスケ氏だ。

大きな喪失感を感じさせる、長谷部誠の引退

長谷部はドイツで17シーズン過ごした。その挑戦を間近で見続けてきたミムラ氏は、シンクロナス「ミムラユウスケの日本代表ニュース解説」の連載コンテンツ内で、長谷部誠の引退についてこう語る。

「去年、長谷部選手は2023-24シーズンで99.9パーセント引退すると話していた。今回引退することを聞いて、覚悟していたから驚きはなかった。やはり彼が残してきたキャリアを考えると、とても大きな喪失感がある」

ミムラユウスケの日本代表ニュース解説#1「【ニュース解説】サプライズではないが喪失感を感じる40歳・長谷部誠選手の引退。「キャリアが5年伸びた」ニコ・コヴァチ監督との出会い」

長谷部といえば、2011年3月18日に自己啓発本『心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習慣』を出版したことでも有名だ(アスリートの著作として初のミリオンセラーを記録)。

ミムラユウスケ「震災翌日の長谷部選手の言動が今でも忘れられない」

出版の1週間前、日本では東日本大震災が起きた。当時、長谷部選手は日本代表のキャプテン。ミムラ氏は震災翌日に取材。「そのときの長谷部選手の言動が今でも忘れられない」という。

「震災が起きたその日、長谷部選手は試合を控えていたが、『自分は何ができるのか』と寝ないで真剣に考えていた。海外組、選手協会、サッカー協会と連絡をとり続けていた」(ミムラ氏)

震災の2ヶ月後、長谷部選手が音頭をとり、ドイツでチャリティーマッチを開催した

被災地を支援するため、個人として『心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習慣』の印税を全額寄付。5月17日にはドイツを中心に欧州で活躍する日本人選手を集め、ドイツのデュイスブルクでチャリティーマッチを開催(欧州日本人選手選抜はブンデスリーガで優勝した香川真司のドルトムントと対戦)。100万ユーロ(約1億1000万円)以上の義援金を集めた。

「心を整える。は震災があって売れたといわれているが、長谷部選手は被災地のことを考えて行動していた。 口では『日本のために』と言っている人は多い。彼の発言は、本当に日本のために考えているものと伝わったのでないか」(ミムラ氏)

動画内にて解説するミムラユウスケ氏。写真をクリックで「ミムラユウスケの日本代表ニュース解説」動画のページに飛びます

長谷部選手は、2010年5月30日のイングランド戦に岡田武史監督から日本代表のキャプテンマークを任された。その後、アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレ、ヴァイッド・ハリルホジッチ、西野朗と4人の指揮官からキャプテンに指名されている。その期間は歴代史上最長の8年間だ。

ザッケローニからは「いろんなクラブで監督をしてきたが、本物のキャプテンは(元イタリア代表)のマルディーニとお前(長谷部)だけだ」と称賛された。なぜ長谷部選手はどの監督からも信頼を寄せられるのか。

「長谷部選手は中学校までしかキャプテンをやっていない。キャプテンシーという才能があるのは遠藤航や吉田麻也のほうが上だろう。 しかし、長谷部選手はキャプテンとしての役割を期待されて、それにしっかり応えて続けてきた。その結果、日本代表で最も長くキャプテンマークを巻いてプレーした選手になった。 『立場が人を作る』といわれるが、キャプテンという立場になってキャプテンになった」(ミムラ氏)

長谷部誠とは何者かーー。その定義としてミムラ氏は「期待に応えられる人」と答える。

「ドイツでも日本代表でもいろんな監督のもとで信頼されて使われてきた。監督の求めているものをしっかりやってくれる。 移籍しようとして干された時期を除けば、使われなかったことがない。そういう意味でも期待に応えられる人。 『心を整える。』が出版されたとき以上に、今の長谷部選手は心が整っているはず。それはキャプテンとしての期待や責任に応えてきたからだろう」(ミムラ氏)

日本でも海外でもキャプテンとして認められ、心が整ったレジェンド。5月18日、現役ラストマッチでどんなプレーを見せるのか。

ミムラ氏はその試合をドイツで現地取材。シンクロナス「ミムラユウスケの日本代表ニュース解説」では、長谷部選手のラストメッセージをお届けするほか、シント=トロイデン岡崎慎司選手・現役ラストマッチも速報レポート。5月20日には日本代表の田中 碧選手を直撃。デュッセルドルフ1部昇格へのシナリオを解説する。

「ミムラユウスケの日本代表ニュース解説」今後の配信予定👇
5月18日(土)岡崎慎司・ラストマッチ深掘り解説「最後のダイビングヘッド」
5月19日(日)長谷部誠・ラストマッチ深掘り解説「名将のラストメッセージ」
5月20日(月)田中 碧・最終戦レポート「1部昇格へのシナリオ。日本代表×”立ち位置”の関係」

ミムラユウスケの日本代表ニュース解説 過去回はこちら👇
【ニュース解説】28年ぶりに出場権を獲得したアトランタ五輪と同等の価値…ミムラユウスケが語る「パリ五輪出場権獲得の功績」
【ニュース解説】サプライズではないが喪失感を感じる40歳・長谷部誠選手の引退。「キャリアが5年伸びた」ニコ・コヴァチ監督との出会い
【名言解説】森保監督「キャプテンはすごく大切ですか笑」と逆質問した真相とは?

© 株式会社日本ビジネスプレス