つばさの党代表が公選法違反で逮捕 温和だった黒川敦彦容疑者はなぜ“キャラ変”したのか

何があった…(右が黒川容疑者)(C)共同通信社

「いったい何があったのか」「ああいう人物ではなかったはずだが……」

新聞、テレビの社会、政治部記者の間からは疑問の声が少なくない。衆院東京15区補欠選挙(4月28日投開票)を巡り、他陣営の演説を妨害したなどとして、17日、警視庁に公選法違反(選挙の自由妨害)容疑で逮捕された、政治団体「つばさの党」代表の黒川敦彦容疑者(45)のことだ。

他に逮捕されたのは、同党幹事長で同補選に立候補していた根本良輔(29)、同党運動員の杉田勇人(39)両容疑者。選挙の自由妨害を巡る政治団体代表や立候補者の逮捕は異例で、同庁は捜査本部を設置して全容解明を進める方針。

他陣営の選挙カーを執拗に追い回したり、電話ボックスに上って拡声器で怒声を上げたり……。選挙期間中に見せた黒川容疑者の様子はかつて、市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」の共同代表として、疑惑解明に奔走する姿とは“別人”だったと言っていい。

大阪大学工学部を卒業し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の研究員となり、大阪大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーの研究員にも就任するなど、研究員として注目、将来を期待された人物だった黒川容疑者。

■地道に資料を入手し、分析している姿が印象的だった

その後、故郷の今治市に戻り、国会で激しい論争となった岡山理科大学(加計学園)獣医学部の新設を巡る問題では、県内外の住民らと一緒に市に対して情報公開を迫ったり、野党の勉強会で講師を務めたりして疑惑解明に取り組んだ。

「話は理路整然として分かりやすい。終始笑顔で性格は穏やか。今のように怒りの感情を激しく表すこともなかった。こつこつと地道に資料を入手し、分析している姿が印象的で、当時、新聞、テレビなど多くのメディア記者が取材で話を聞きに来ていた」(週刊誌記者)

温和な雰囲気が徐々に変わり始めたのが2017年の衆院選で、故・安倍晋三元首相の選挙区である「山口県第4区」から無所属で立候補した頃からだろう。メディア記者からは、その後、NHK党(当時)と関りを持ったことが「キャラ変のきっかけになったのでは」と指摘する声もある。

「『NHKをぶっ壊~す』というフレーズで世間の注目を集め、票を得る。悪目立ち戦法というのか、悪名は無名に勝る戦法というのか。地道に静かに政策を訴える手法では世論は動いてくれないと考えたのかもしれません」(週刊誌記者=前出)

警視庁の車両で同庁本部に入る際、後部座席からテレビカメラに向かって不敵な笑みを浮かべ、両手でピースサインをしていた黒川容疑者。「逮捕」という最悪の展開を受け、今、何を思うのか。

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