『62』の要因は「天候が大きい」 “おもしろい”リーダボードに松山英樹が加わる条件は?【全米プロ・タケ小山の目】

連覇狙うケプカらLIV勢がおもしろい(撮影:GettyImages)

<全米プロゴルフ選手権 初日◇16日◇バルハラGC(ケンタッキー州)◇7609ヤード・パー71>

今年の海外メジャー第2戦は初日の競技が終了した。最初の18ホールでアドバンテージをとったのが、メジャー最少ストローク記録タイの「62」をマークしたザンダー・シャウフェレ(米国)で、2位に3打差をつけて9アンダーの首位発進を決めた。また、日本勢はやや苦戦。初日の戦いを、大会を中継するBS松竹東急(全国無料放送・BS260ch)で解説を務めたタケ小山に聞いた。

■出ると思わなかった『62』 その要因は?

「まずザンダーが去年の全米オープン初日に続いて62を出しました。2回目というのは記録ですね」。4大メジャーではこれまでブランデン・グレイス(南アフリカ)、リッキー・ファウラー(米国)そしてシャウフェレと3度しか達成されていない偉大な記録。スタートダッシュに成功したシャウフェレのプレーには脱帽するしかない。距離も長く、ラフも深い。大会前には多くの選手が苦戦を予想していたが、フタを開けてみればこのビッグスコア。「こんなスコアは出ないと思っていたけど、ショットもパットもよかったし、なによりグリーンがしっとりしていたのも要因です」と好スコアの原因を分析する。

朝は霧のためにスタート時間が遅れた。今週に入ってからの雨の影響もあって、コースは思ったほどスピードが出ていなかった。「芝を張り替えて、フェアウェイはもっと転がる予定でしたが、フェアウェイに対してボールをプレースしやすかった」。つまり、“ムダに”ランを計算する必要がなく、とにかくフェアウェイに置きやすかったという。

加えて、湿って止まりやすいグリーンがチャンス量産につながった。「ショット力のある人が上位に来ました。飛距離も出て、正確性もある人は軒並み上位に来ていますね」。リーダーボードを見れば、今季好調な選手が上位にズラリ。シャウフェレも敗れはしたものの、先週はローリー・マキロイ(北アイルランド)との一騎打ちを演じた。「そのまま好調の状態で入ってきたと言っていましたし、このスコアはこのあとのことを考えると、大きなボーナスです」とシャウフェレがまずは初メジャー制覇に有利に立っている。

イーブンパーに終わった中島啓太が17番パー4で放ったセカンドショットはピンまで161ヤード。これがピン真横に落ちて、わずか60センチほど先でピタリと止まった。「あの止まり方は相当湿っていた証拠。普通なら、あんな止まり方はしません」と、アグレッシブなゴルフがコースの至る所で見られた1日だった。

■ガマンのゴルフで1アンダー発進の松山英樹

「松山選手も悪くないんです。パットがもっと入っていれば、5アンダーくらいまではいっていた内容でした」。背中痛により体調が万全でないなか、水曜日はコースにも顔を見せなかった。心配されたスタートだったが、いきなりバーディチャンスにつける。その2.5メートルを決めれば波に乗っていたに違いない。「本当に問題はグリーン上だけではないでしょうか」と小山氏。このあとも再三のチャンスがカップに嫌われた。

そんな中でも前半は2バーディで上位を伺う位置でプレーを続けた。唯一の落とし穴は後半の5番。ティショットをバンカーに入れると、2打目がアゴに当たり、少し先のラフへ。3打目もグリーンをオーバーと、ラフからはやはり難易度が高く、ダブルボギーを喫した。

そんな場面もありながらアンダーパーにまとめるのが松山の強さ。「体の調子は本人しか分かりませんが、あとはそこだけですね」と体調面を気遣う。「冬場から夏場にかけて芝が変わる時期。決してグリーン上がキレイというわけではない」という今のコース状態も不安点のひとつだが、それでも「2月のジェネシス招待で勝ったリビエラはポアナ芝ですし」と、不規則な芝での勝利も今年は経験済み。2日目はきっと対応してくるはずだ。「フィジカル面さえクリアすれば」上位を脅かす存在となってくる可能性は高い。

小山氏が松山以外の日本勢で期待を寄せるのが久常涼。途中2アンダーまで伸ばしながら後半に落としてイーブンパー発進としたが、「久常選手は頑張ると思います。大会前に芝のことを分かっていました。コーライに似ているとすぐに言えるのは、いろんなところで戦っているからこそ。それをいち早く感じ取ったのは素晴らしい」。張り替えられた芝の特徴を察知し、準備をしてきたことを評価する。

練習日には、『芝が少し日本に似ている』と話していた久常。「芝質への感覚、そういう点が素晴らしいと思います」と2日目の浮上を予測。予選通過に向けてはそんな感覚を研ぎ澄ませ、スコアを伸ばしにかかってほしい。

「バックナインは難しいです。10番のパー5、13番のアイランドグリーンの短いパー4、そして18番パー5、バーディが計算できるのはその3ホールだけ」。9ホール中、この3ホール以外は難易度が一桁と難関が続く。「14から17番は難しいアーメンコーナー。そこをうまく切り抜けるのがポイントになります」と、2日目以降はここに注目するのもおもしろそうだ。

また、3打差2位タイにつけるトニー・フィナウ、サヒス・ティーガラ(ともに米国)、4打差5位タイのマキロイ、12位につける世界ナンバー1のスコッティ・シェフラー(米国)ら大物にはもちろん注目。2日目も雨予報のなか、「コース全体がソフトになるとロングキャリーが出て、正確性がある選手は、しっかりティショットをプレースメントしてこられるので、そういう選手が上に来ます」。つまり、今の上位勢がそのまま走る可能性は高いと見る。

さらにもう一つの楽しみは「LIV軍団とPGAツアー勢の対決の構図。これはおもしろいですよ」と、早速初日からその“対決”の様相が見られている。「普段から予選カットのない54ホールのLIV組が72ホールのメジャーでは…といった声が出ていましたが、昨年ケプカは勝つことによって周囲を黙らせた。今年もそのケプカが上にいます」。トップ20内にはそのほかにもマルティン・カイマー(ドイツ)、ブライソン・デシャンボー(米国)、キャメロン・スミス(オーストラリア)といったメジャーチャンピオンがズラリと控える。

「LIV勢とPGAツアーのメンバーがガチンコ勝負するのが楽しいですよね。その構図が大会を盛り上げることになります」と見どころのひとつを解説。「そもそも本来なら同じフィールドにいないといけない人たち」と世界を代表するトップが久しぶりに集まった今大会。真っ向勝負にも目を向けてほしいとした。

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